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欧州医薬品庁、ACT EU作業計画を公表──2030年までに多国籍臨床試験500件増を目指す

[更新]2026年1月25日

欧州委員会、欧州医薬品庁(EMA)、欧州医薬品庁長官会議(HMA)は2022年1月、EU臨床試験加速化(ACT EU)イニシアチブを開始した。ACT EUは、欧州連合を革新的な臨床研究の競争力ある中心地として発展させることを目指し、臨床試験の開始、設計、実施方法を変革する。

このイニシアチブは2022年1月31日に開始された臨床試験規則(CTR)と臨床試験情報システム(CTIS)を基盤とし、欧州医薬品庁ネットワーク戦略と欧州委員会の欧州医薬品戦略における推奨事項を実現する。

2025年1月、EMA、欧州委員会、HMAは2025年と2026年の活動をカバーするACT EU作業計画の改訂版を公表した。作業計画は臨床試験規則の運用、臨床試験の影響の最大化、公衆衛生上の緊急事態における臨床試験の3つの重点分野を強調している。

From: 文献リンクAccelerating Clinical Trials in the EU (ACT EU)

【編集部解説】

欧州委員会、欧州医薬品庁(EMA)、欧州医薬品庁長官会議(HMA)は2024年12月、EU臨床試験加速化(ACT EU)イニシアチブの2025-2026年作業計画を採択し、2025年1月に公表しました。この改訂版は、臨床試験規則の運用、臨床試験の影響最大化、公衆衛生上の緊急事態における臨床試験という3つの重点分野に焦点を当てています。

ACT EUは、欧州連合を革新的な臨床研究の中心地として発展させることを目指すイニシアチブで、2022年1月に開始されました。臨床試験の開始、設計、実施方法を変革し、高品質で安全かつ効果的な医薬品の開発を促進することを目的としています。

この作業計画は、マルチステークホルダープラットフォーム諮問グループからのフィードバックを反映しており、臨床試験分析、トレーニング、コミュニケーションも含まれています。ACT EUは、2022年1月31日に開始された臨床試験規則(CTR)と臨床試験情報システム(CTIS)を基盤としています。

2025年1月31日、CTRがEU内のすべての臨床試験に完全適用されました。これにより、3年間の移行期間が終了し、旧制度である臨床試験指令(CTD)下で承認されたすべての継続中の試験は、CTISに移行する必要があります。移行していない試験は、EU加盟国による是正措置の対象となる可能性があります。この移行期間中、5,000以上の臨床試験がCTISに移行されました。

CTISの使用が義務化されて以降、月平均200件の新規臨床試験が提出されており、そのうち約80件が多国籍臨床試験です。これらの数字は、スポンサーや利害関係者が新しい法的・手続き要件に適応していた移行期間を反映しています。

欧州の臨床試験環境の変革は、患者と医療提供者双方にとって重要な意味を持ちます。2025年3月にはCTIS trial mapが開始されました。この地図により、患者や医療専門家が地域で実施されている臨床試験を簡単に検索できるようになりました。地理的エリアや医療条件で検索が可能で、治験責任者の連絡先情報も提供されます。当初は英語のみでしたが、現在はEUおよびEEA諸国の公用語で検索が可能になっており、患者の臨床試験へのアクセスが大幅に向上しています。

さらに、ACT EUは2030年までに野心的な目標を掲げています。現在年間平均900件承認されている多国籍臨床試験を、年間100件ずつ増やし、5年間で500件追加することを目指しています。また、臨床試験の申請から患者募集開始までの期間を200日以内とする試験の割合を、現在の50%から66%に引き上げることも目標としています。これらの目標の進捗状況は、2026年2月初旬からACT EUウェブサイトで月次報告される予定です。

これらの取り組みは、欧州を臨床研究のより魅力的な拠点とし、患者が革新的な治療法により迅速にアクセスできるようにすることを目的としています。規制の調和、技術革新、プロセスの最適化を通じて、より優れた、より速い臨床試験の実現を目指しています。

【用語解説】

臨床試験規則(CTR: Clinical Trials Regulation)
2022年1月31日に施行された欧州連合の医薬品臨床試験を規制する法規制。従来の臨床試験指令(CTD)に代わり、EU全域で臨床試験の評価と監督プロセスを調和させることを目的としている。2025年1月31日に完全適用された。

臨床試験情報システム(CTIS: Clinical Trials Information System)
CTRを実施するために欧州医薬品庁が維持する情報システム。臨床試験のスポンサーと規制当局間の情報の流れをサポートし、2022年1月31日に稼働開始。スポンサーは単一のオンライン申請で最大30のEEA諸国で臨床試験を実施できる。

マルチステークホルダープラットフォーム
患者、学術・商業スポンサー、規制当局など、臨床試験に関わる幅広い利害関係者を集めたプラットフォーム。ACT EUの活動の中心であり、年次公開会合と四半期ごとの諮問グループ会合を開催している。

多国籍臨床試験
複数のEU加盟国で同時に実施される臨床試験。現在、EUでは年間平均900件の多国籍臨床試験が承認されており、ACT EUは2030年までにこれを年間100件ずつ増やすことを目標としている。

臨床試験指令(CTD: Clinical Trials Directive)
2001年に制定された欧州連合の臨床試験に関する旧法規制。2022年1月31日に臨床試験規則(CTR)に置き換えられ、2025年1月31日までの3年間の移行期間が設けられた。

【参考リンク】

欧州医薬品庁(EMA)(外部)
欧州連合における医薬品の評価と監督を担う機関でACT EUイニシアチブの共同運営者

ACT EU公式ウェブサイト(外部)
EU臨床試験加速化イニシアチブの公式サイトで作業計画や統計データを提供

臨床試験情報システム(CTIS)公式サイト(外部)
2022年1月31日稼働開始のEU臨床試験の単一エントリーポイント

欧州医薬品庁長官会議(HMA)(外部)
EU加盟国の医薬品規制当局の長官で構成されるネットワーク

【参考記事】

ACT EU workplan 2025-2026(外部)
2024年12月採択の第3回作業計画で2025-2026年の活動と重点分野を記載

Clinical Trials Regulation becomes fully applicable(外部)
2025年1月31日のCTR完全適用と5000件超の試験移行を報じるEMAニュース

New targets for clinical trials in Europe(外部)
2030年までの多国籍試験500件追加と200日以内募集開始66%の目標設定

New clinical trial map launched in the EU(外部)
2025年3月3日のCTIS臨床試験地図開始をACT EU作業計画の一環として報道

EU Clinical Trials Regulation: A New Era Begins(外部)
CTR完全実施における移行期間の課題と小規模スポンサーへの影響を分析

Accelerating clinical trials in the EU (ACT EU): transforming the EU clinical trials landscape(外部)
Nature誌掲載のACT EUイニシアチブと臨床試験環境変革の包括的解説

EU launches clinical trial map for patients and professionals(外部)
CTIS臨床試験地図開始と患者募集課題改善の可能性について報道

【編集部後記】

欧州が臨床試験の環境整備に本気で取り組んでいることが伝わってきます。日本でも医薬品開発の国際競争力が議論されていますが、EUのように規制当局、製薬企業、患者、学術機関が一体となって制度を進化させる仕組みは参考になるのではないでしょうか。特に患者が臨床試験を地図で検索できるという発想は、患者中心の医療という理念を具体化した好例だと感じます。みなさんは、日本の臨床試験環境がより良くなるために、どのような取り組みが必要だと思われますか。

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Satsuki
テクノロジーと民主主義、自由、人権の交差点で記事を執筆しています。 データドリブンな分析が信条。具体的な数字と事実で、技術の影響を可視化します。 しかし、データだけでは語りません。技術開発者の倫理的ジレンマ、被害者の痛み、政策決定者の責任——それぞれの立場への想像力を持ちながら、常に「人間の尊厳」を軸に据えて執筆しています。 日々勉強中です。謙虚に学び続けながら、皆さんと一緒に、テクノロジーと人間の共進化の道を探っていきたいと思います。

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