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Mistral Vibe 2.0発表。確認機能搭載で進化するAIコーディングの未来

[更新]2026年1月28日

Mistral Vibe 2.0発表。確認機能搭載で進化するAIコーディングの未来

コードを書く行為が、構文を覚えることから意図を伝えることへと変わりつつあります。2025年に「今年の言葉」となった「Vibe Coding」の進化形として、Mistral AIが発表したVibe 2.0は、AIに全てを任せるのではなく、人間と協働する新しい開発スタイルを提案します。


Mistral AIは2026年1月27日、ターミナルネイティブなコーディングエージェント「Mistral Vibe 2.0」をリリースした。Devstral 2モデルファミリーで駆動され、カスタムサブエージェント、マルチチョイス確認機能、スラッシュコマンドスキル、統合エージェントモード、自動アップデートなどの新機能を搭載する。Le Chat ProとTeamプランで利用可能で、Le Chat Proは月額14.99ドル、Le Chat Teamは月額24.99ドル/シートとなる。

Devstral 2のAPI価格は入力0.40ドル/Mトークン、出力2.00ドル/Mトークンで、Devstral 2 Smallは入力0.10ドル/Mトークン、出力0.30ドル/Mトークンである。Mistral StudioのExperimentプランでは無料でAPIが利用できる。

エンタープライズ向けには、ファインチューニング、強化学習、コード現代化サービスを提供する。

From: 文献リンクTerminally online Mistral Vibe.

【編集部解説】

Mistral AIが今回発表したMistral Vibe 2.0は、単なるコーディングツールのアップデートではありません。これは2025年に「今年の言葉」に選ばれた「Vibe Coding」という、開発の新しいパラダイムの進化を示す動きです。

「Vibe Coding」とは、OpenAIの共同創設者であるアンドレイ・カルパシーが2025年2月に提唱した概念で、開発者が自然言語でAIに指示し、生成されたコードを詳細にレビューせずに受け入れる開発スタイルを指します。Y Combinatorの2025年冬バッチでは、スタートアップの25%がコードベースの95%をAI生成していたという報告もあり、この動きは急速に広がっています。

しかし、この潮流には課題もあります。セキュリティ脆弱性の懸念、メンテナンス性の問題、そして開発者自身のスキル低下といった問題が指摘されてきました。Mistral Vibe 2.0が注目に値するのは、こうした課題に正面から向き合っている点です。

新たに搭載された「マルチチョイス確認機能」は、AIが曖昧な指示を受けたとき、推測で実行するのではなく、複数の選択肢を開発者に提示します。これは「AIに全てを任せる」のではなく、「AIと協働する」という、より成熟したアプローチを示しています。

価格面でも興味深い展開です。Devstral 2のAPI価格は、Anthropicのクロード・ソネット4.5と比較して約7倍のコスト効率を実現しています。入力0.40ドル/100万トークン、出力2.00ドル/100万トークンという価格設定は、企業が本格的にAIコーディングアシスタントを導入する際の経済的障壁を大きく下げるでしょう。

ターミナルネイティブというアプローチも重要です。多くのコーディングアシスタントがIDEに統合される中、Mistral Vibeはコマンドラインで動作します。これにより、リモートサーバーでの作業やSSH経由での操作など、より広範な開発シナリオに対応できます。エディターに依存しない柔軟性は、複雑なインフラを扱う現場では大きな利点となります。

カスタムサブエージェントの機能も見逃せません。デプロイスクリプト、プルリクエストレビュー、テスト生成といった特定のタスクに特化したエージェントを構築できることで、チームのワークフローに合わせたカスタマイズが可能になります。

日本の開発者にとって、この動きが示唆するのは、コーディングの本質が「構文を書くこと」から「意図を伝え、結果を検証すること」へとシフトしているという現実です。しかし同時に、AIが生成したコードを適切に評価し、必要に応じて修正できる能力は、これまで以上に重要になっています。

Mistral Vibe 2.0は、AIコーディングアシスタントが「便利なツール」から「開発チームの一員」へと進化する過程を象徴しています。完全な自律性ではなく、適切な確認と制御のバランスを保ちながら、開発速度を劇的に向上させる。それが、次世代の開発環境が目指す方向性なのかもしれません。

【用語解説】

Vibe Coding(バイブコーディング)
OpenAIの共同創設者アンドレイ・カルパシーが2025年2月に提唱した開発手法。開発者が自然言語でAIに指示を出し、生成されたコードを詳細にレビューせず受け入れるスタイルを指す。コリンズ英語辞典の2025年「今年の言葉」に選ばれた。

ターミナルネイティブ
コマンドラインインターフェース(CLI)上で直接動作するように設計されたソフトウェアを指す。グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)に依存せず、ターミナル環境で完結できる。

API(Application Programming Interface)
アプリケーション・プログラミング・インターフェース。ソフトウェアやサービス間でデータをやり取りするための仕組み。開発者はAPIを通じてモデルの機能を自分のアプリケーションに組み込める。

ファインチューニング
事前学習済みのAIモデルを、特定のタスクやドメインに特化させるために追加学習させる手法。企業が独自のデータやコーディング規約に合わせてモデルをカスタマイズする際に使用される。

強化学習(Reinforcement Learning)
AIが試行錯誤を通じて最適な行動を学習する機械学習手法。報酬とペナルティのフィードバックを受けながら、目標達成のための戦略を改善していく。

IDE(Integrated Development Environment)
統合開発環境。コードの編集、デバッグ、実行などの機能を統合したソフトウェア。Visual Studio Code、IntelliJ IDEAなどが代表例。

SSH(Secure Shell)
ネットワーク上のコンピューターに安全に接続し、遠隔操作するための暗号化通信プロトコル。開発者がリモートサーバーにアクセスする際に広く使用される。

プルリクエストレビュー
Gitなどのバージョン管理システムで、コード変更を本番環境に統合する前に、他の開発者がレビューするプロセス。コード品質の維持と知識共有に重要な役割を果たす。

カスタムサブエージェント
特定のタスク(デプロイ、テスト生成、コードレビューなど)に特化した小規模なAIエージェント。必要に応じて呼び出すことができ、チームのワークフローに合わせたカスタマイズが可能。

マルチチョイス確認機能
AIが指示内容に曖昧さを感じた際、複数の選択肢を提示してユーザーに確認する機能。推測で実行するのではなく、人間との対話を重視した設計。

SWE-bench Verified
実際のGitHubイシューから抽出された、ソフトウェアエンジニアリングタスクのベンチマーク。AIモデルがコードベースを理解し、バグを修正し、テストを通過できるかを評価する。

【参考リンク】

Mistral AI(外部)
2023年設立のフランスのAI企業。オープンウェイトの大規模言語モデルを開発し、企業向けAIソリューションを提供。評価額は約140億ドル(約2兆円)に達している。

Le Chat(外部)
Mistral AIが提供する多言語・マルチモーダルAIアシスタント。Pro版(月額14.99ドル)とTeam版(月額24.99ドル/シート)で、Mistral Vibe 2.0へのフルアクセスが可能。

Mistral Vibe CLI – GitHub(外部)
Mistral Vibeのオープンソースリポジトリ。Apache 2.0ライセンスで公開されており、インストール方法や使用方法、カスタマイズオプションが詳細に記載されている。

Anthropic(外部)
クロード・ソネット4.5などのAIモデルを開発する米国のAI企業。Mistral Vibe 2.0の価格比較対象として編集部解説で言及。

Y Combinator(外部)
シリコンバレーの著名なスタートアップアクセラレーター。2025年冬バッチでは参加企業の25%がコードベースの95%をAI生成していたと報告。

【参考記事】

Mistral AI surfs vibe-coding tailwinds with new coding models(外部)
TechCrunchによる初期報道。Mistral AIの評価額が117億ユーロ(約138億ドル)であること、ASMLが13億ユーロ(約15億ドル)を投資したことを報告。Devstral 2がクロード・ソネット4.5の約7倍のコスト効率を実現していることを指摘。

Devstral 2 & Mistral Vibe CLI: Complete Coding Guide(外部)
詳細な技術ガイド。SWE-benchでのスコア(Devstral 2が72.2%、Devstral Small 2が68%)、価格設定(入力0.40ドル/出力2.00ドル per Mトークン)、ローカル実行の要件(RTX 4090で24GBのVRAM)など、具体的な数値データが豊富に記載されている。

AI Coding: Mistral AI Launches Devstral 2 Model and Vibe CLI(外部)
ベンチマーク比較に焦点を当てた記事。Devstral 2がSWE-bench Verifiedで72.2%を達成し、DeepSeek V3.2の73.1%に迫る性能であることを報告。ハードウェア要件として最低4基のH100 GPUが必要であることを明記。

Vibe coding – Wikipedia(外部)
Vibe Codingの概念を包括的に解説。アンドレイ・カルパシーが2025年2月に提唱したこと、Y Combinatorの2025年冬バッチで参加企業の25%がコードベースの95%をAI生成していたこと、コリンズ英語辞典の2025年「今年の言葉」に選ばれたことなどを記載。

Mistral AI launches Devstral 2 coding model and Mistral Vibe CLI(外部)
企業戦略の観点からの分析記事。Mistral AIの評価額が117億ユーロ(約138億ドル)、ASMLによる13億ユーロ(約15億ドル)の投資、Zed、Kilo Code、Clineとのパートナーシップについて詳述。

Introducing: Devstral 2 and Mistral Vibe CLI(外部)
Mistral AI公式の発表記事。Devstral 2(123億パラメータ)とDevstral Small 2(24億パラメータ)の技術仕様、256Kトークンのコンテキストウィンドウ、Apache 2.0ライセンス(Small 2)とModified MITライセンス(Devstral 2)の違いを説明。

【編集部後記】

コードを書く行為が、構文を覚えることから意図を伝えることへと変わりつつあります。

2025年に「今年の言葉」となった「Vibe Coding」は、開発者とAIの関係性を再定義しました。しかし、その初期の熱狂は、セキュリティ脆弱性や保守性の問題という現実に直面することになりました。AIに全てを任せるのではなく、人間が適切に関与し続けることの重要性が明らかになったのです。

Mistral Vibe 2.0は、こうした課題に対する一つの答えを示しています。マルチチョイス確認機能は、AIが推測で動くのではなく、人間と対話しながら進むという姿勢の表れです。これは「AIに置き換えられる」という不安への応答でもあります。

月額約2,200円(14.99ドル)という価格設定は、個人開発者にも手が届く範囲です。ターミナルから離れることなく、リモートサーバーでも動作するという設計は、実際の開発現場の多様性を理解していることの証です。

AIコーディングアシスタントは、もはや「便利なツール」ではなく、開発チームの一員として機能し始めています。しかし、その進化の方向性は、完全な自律性ではなく、人間との適切な協働にあるのかもしれません。

皆さんは、コードを書くという行為がどこまで変わると思いますか?そして、その変化の中で、開発者として何を守り、何を手放すべきなのでしょうか。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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