DeepSeek-V4.1-Flash-1017公開、検索APIも全ユーザーに開放

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コーディングの課題で正答率77.0%、1タスクあたりの費用は約0.2ドル。DeepSeekが10月17日に公開した新モデルについて同社が示した図では、Claude Opus 5が最も高い設定で10ドルを超えています。ただ、発表の重心は数字だけにありません。他社の開発ツールの中で動く部品として、自社の検索APIまで開いているからです。


DeepSeekは2026年10月17日、「DeepSeek-V4.1-Flash-1017」を公開した。9月10日公開のV4.1-Flashの更新版で、ベンチマーク性能の向上、タスク完了の高速化、出力の短縮を実現したとする。自己フィードバック型の強化学習で、ゲーム制作から3Dモデリングまでのプロジェクト開発能力を高めたとする。ウェブ・アプリ・APIで提供し、重みはHugging FaceとModelScopeで公開した。

自社検索エンジンを使うSearch APIとFetch APIも全ユーザーに開放した。料金は各1,000回あたり0.75ドルで、DeepSeek Harness、Claude Code、Codexのサーバー側ツール経由の呼び出しは10月31日16時(UTC)まで無料となる。

From: 文献リンクDeepSeek-V4.1-Flash-1017: Wish-Driven Programming Made Real

【編集部解説】

今回の発表で目を引くのは、性能の数字そのものよりも、DeepSeekが自社モデルを「他社の開発ツールの中で動く部品」として磨き込んでいる点です。

ベンチマーク表を見ると、ターミナル操作の能力を測るTerminal-Bench 4.0は、AnthropicのClaude Codeを作業環境にして測定されています。新たに開放したSearch APIとFetch APIも、DeepSeekのAPIをClaude CodeやOpenAIのCodexにつないで使う場面のサーバー側の呼び出しを、自社のDeepSeek Harnessと並べて無料の対象にしました。8月に自前のエージェント基盤DeepSeek Harnessを公開する一方で、他社の基盤の中で選ばれる経路も広げていると見ることができます。なお、Codexに組み込まれた検索機能は、DeepSeekのガイドでは現時点でV4-Proを使う場合に限られています。

DeepSeekが今回いう「パレート改善」は、前のバージョンより性能を高めながら費用も抑えた、という説明です。DeepSeekが公開した図では、コーディング能力を測るDeepSWE v1.1をmini-swe-v2の環境で評価し、V4.1-Flash-1017は推論の強さを最大(max)にした設定で77.0%を記録しました。1タスクあたりの平均費用は約0.2ドルです。同じ図のClaude Opus 5は、max設定で約74%を記録し、その設定での1タスクあたりの平均費用は10ドルを超えています。

出力が短くなったことも、費用に効いてきます。APIでは入力と出力の両方のトークンに課金されるため、ほかの条件が同じなら、同じ作業を少ない出力で終えられるほど出力分の費用を抑えられます。エージェントが何十回も考えては動く使い方では、この差が積み重なります。

もっとも、ベンチマーク表はDeepSeekが公表した比較で、相手はClaude Opus 5やGPT-5.6 Solです。費用の図には、公開リーダーボードの9月22日時点の値なども含まれています。Claude Opus 5.5など最新世代のモデルとの比較は含まれていません。またHLEやTerminal-Bench 4.0では、Claude Opus 5が今回のモデルを上回っています。得意な領域がはっきりしていて、掲載された比較ではタスクあたりの費用を抑えられるモデル、と読むのが実態に近いでしょう。

日本から使う場合は、料金の時間帯にも目を向けておきたいところです。DeepSeekのモデルAPIはピーク時間帯とそれ以外で単価が異なり、ピーク外はピーク時の半額です。ピークは中国の祝日を除く月曜から金曜の、日本時間10時〜13時と15時〜19時にあたり、日中の業務時間の多くがピーク料金と重なります。夜間や週末にまとめて処理を回す使い方なら、半額の恩恵を受けやすくなります。

API上のモデル名「deepseek-flash」は、すでにV4.1-Flash-1017を指しています。旧名の「deepseek-v4-flash」で呼び出していた場合も、新モデルに振り向けられます。既存の利用者は、設定を変えなくても新モデルに切り替わっている点を把握しておく必要があります。

Search APIは、DeepSeekが自社で運営する検索エンジンを外部に開くものです。DeepSeekは、この検索エンジンが世界で1日数億件のリクエストを処理しているとしています。AIエージェントがウェブで調べものをするには、検索とページ取得の手段が欠かせません。モデル、エージェント基盤、検索を同じ会社が提供し、検索とページ取得を独立したAPIとして開いたことで、これらを組み合わせた開発の選択肢が広がりました。料金は成功した呼び出しだけに課金され、エラーや結果が空の場合は請求されません。

重みがMITライセンスで公開されている点は、日本の利用者にとって別の意味も持ちます。APIを使えばデータはDeepSeekのサーバーを通りますが、重みを自社の環境で動かせば、その経路を通さずに済みます。DeepSeekの利用を制限する国や組織が出ているなかで、データの置き場所を自分で選べることは、導入を判断する材料の一つになります。

自己フィードバックを用いた強化学習について、リリースノートの説明は一文にとどまります。それでも、紫禁城の3Dモデリングやレースゲーム、ゲームエンジンGodotで作った『Portal 2』の再現といった実演からは、単発のコード生成に加えて、ひとまとまりの作品を仕上げる能力を前面に出そうとする姿勢がうかがえます。

Search APIとFetch APIのリクエスト料金の無料期間は、日本時間では11月1日午前1時に終わります。対象はDeepSeek Harness、Claude Code、Codexのサーバー側ツールを経由した呼び出しで、モデルのトークン料金は別にかかります。どのモデルを選ぶかに加えて、どの道具の中で、どの部品を組み合わせるか。今回の発表は、開発者の選び方がその段階に入ったことを、価格と性能の両面から示しています。

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【編集部後記】

Search APIの仕様書を読んでいて目に留まったのが、検索結果の一件ずつに付く「authority」という項目です。ページの権威性を0から4の段階で示し、関連度の点数と並べて、検索結果と一緒に返す仕組みです。

人が検索するとき、どのサイトを信じるかは画面を見ながら自分で決めてきました。エージェントに調べものを任せると、その判断の手がかりは、検索エンジンが付けた数字として先に渡されます。どの検索APIを部品に選ぶかは、その数字の付け方を選ぶことでもあるのかもしれません。


【用語解説】

パレート改善
複数の評価指標のうち、どれも悪化させずに少なくとも一つを改善すること。今回DeepSeekは、性能と費用の両面で前のバージョンを上回ったという意味で使っている。

強化学習
AIが試行の結果に応じて報酬を受け取り、よりよい行動を学んでいく学習方法。今回のモデルには「自己フィードバック型」の強化学習を用いたとされ、手法の詳細は今後の公表を待つ段階である。

トークン
AIが文章を処理する際の最小単位。APIの料金は、入力と出力のトークン数に応じて計算されるのが一般的である。

DeepSWE v1.1
Datacurveが運営する、コーディングエージェントの能力を測るベンチマーク。公開中のオープンソースのリポジトリから作った、長い手順を要するソフトウェア開発の課題で評価する。

Terminal-Bench 4.0
ターミナル(コマンドを入力して操作する画面)上で、AIが複数の手順からなる作業をこなせるかを測るベンチマーク。

HLE(Humanity’s Last Exam)
幅広い学術分野から、専門家でも難しい問題を集めたベンチマーク。AIの知識と推論の水準を測る目的で使われる。

重み(ウェイト)
AIモデルが学習によって獲得した数値の集まり。重みが公開されていれば、利用者は自分の環境でモデルを動かせる。

MITライセンス
著作権表示と許諾表示を残せば、商用を含めて自由に利用・改変・再配布できるオープンソースのライセンス。

エージェント基盤
AIモデルにツールの使用、ファイル操作、作業の手順管理などを組み合わせ、自律的に作業させるための土台となるソフトウェア。DeepSeek Harnessがこれにあたる。

【参考リンク】

DeepSeek(外部)
中国・杭州のAI企業DeepSeekの公式サイト。チャットサービス、アプリ、APIプラットフォームへの入り口をまとめている。

Search & Fetch(DeepSeek API Docs)(外部)
今回開放されたSearch APIとFetch APIの公式ガイド。パラメータ、料金、課金条件、レート制限を説明している。

DeepSeek-V4.1-Flash-1017(Hugging Face)(外部)
Hugging Faceにおける今回のモデルの公開ページ。ベンチマーク表、推奨設定、MITライセンスの条件などを掲載している。

DeepSeek-V4.1-Flash-1017(ModelScope)(外部)
中国のAIモデル共有サイトModelScopeにおける今回のモデルの公開ページ。Hugging Faceと同じく重みを取得できる。

DeepSeek Harness(GitHub)(外部)
DeepSeekがMITライセンスで公開しているエージェント基盤のリポジトリ。今回のモデルにはv0.2.1-rc.1以降を推奨している。

DeepSWE(外部)
Datacurveが運営するコーディングエージェントのベンチマークの公式サイト。各モデルの正答率と費用を一覧で公開している。

【参考記事】

DeepSeek-V4.1-Flash: Smarter, Faster, More Efficient(外部)
2026年9月10日公開の前バージョンのリリースノート。新しいアーキテクチャ系列で最小のモデルと位置づけ、画像の理解に対応した。

Integrate with Codex(外部)
DeepSeekのAPIをCodexで使うためのガイド。内蔵のウェブ検索はdeepseek-v4-pro使用時に限られると説明している。

Integrate with Claude Code(外部)
DeepSeekのAPIをClaude Codeで使うためのガイド。ウェブ検索時には要約のための追加のトークン費用がかかると説明している。

Models & Pricing(外部)
DeepSeek APIの料金ページ。モデル名と版の対応、ピーク時間帯、ピーク外の半額料金、Search APIの料金を掲載。

DeepSWE: Measuring frontier coding agents on original, long-horizon engineering tasks(外部)
DeepSWEの設計を解説した記事。91のオープンソースのリポジトリから作った113の課題で評価する仕組みを説明している。

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山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

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