ACE StudioをClaude Codeから操作、歌の分離から拍の解析まで任せてMVを作った

[最終更新]

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1か月前、Sunoの曲で歌詞が飛ぶMVを作ったとき、歌詞の時刻は曲を聴きながらキーを押して取り、記録は1行ずれました。今回は、その作業を音楽制作ソフトのACE Studioに任せ、AIエージェントのClaude Codeから動かしました。歌の分離も、歌声の書き起こしも、拍の解析も、会話で頼んでいます。

1か月前は、タップで取った歌詞の時刻が1行ずれました

10月2日の記事で、Sunoで作った曲を、歌詞が飛ぶミュージックビデオ(MV)にする手順を紹介しました。歌詞を出す時刻は、曲を聴きながら行の頭でキーを押す自作のツールで取りました。記録は1行ずれ、拍の位置を調べる自作のプログラムは、ドラムが止まる区間では当てになりませんでした。

それから1か月。10月31日に作った曲では、歌を楽器から分ける作業、歌声を音符と読みに書き起こす作業、拍の位置を調べる作業を、ACE Studioに任せました。歌詞の行ごとの時刻は、その書き起こしを歌詞と突き合わせて割り出しています。ACE Studioを動かしたのは、AIエージェントのClaude Codeです。私は会話で頼み、Claude CodeがACE Studioのコマンドを打ちました。

その結果を使い、音に合わせて文字や図形が動く「音ハメ」のモーショングラフィックスまで作っています。

題材の曲とMVは、私が10月に毎日1曲ずつ公開してきた、AIで作る架空の音楽プロダクション「にじみプロダクション」の31日目「Flex -三十一夜目-」です。ACE Studioは、私が自費で契約したArtist Pro(年額)を使っていて、この記事のための提供は受けていません。試したのは2026年10月31日で、ACE Studioは2.1.9、付属のコマンドラインツール(acestudio-cli)は0.18.7です。

MVの静止画。澄の行が蛍光イエローの帯で出ている
一行ごとに、歌う人の書体と色で歌詞が出る(筆者のMVより)

ACE Studioには、AIエージェントのための入口があります

ACE Studioは、AIの歌声合成を中心にした音楽制作ソフトです。歌を楽器から分けるStem Splitterや、歌声を音符と歌詞に書き起こすVocal to MIDIなどのAIツールが入っています。

このACE Studioを、外のAIエージェントから操作する入口が用意されています。公式ドキュメントでは「External Agent Access」と呼ばれ、設定画面では「外部エージェント連携」です。入口は2つあります。

ひとつは、アプリに同梱されたコマンドラインツールのacestudio-cliです。もうひとつは、MCP(Model Context Protocol)のサーバーです。公式ドキュメントは、まずCLIを試し、セキュリティの制限などでCLIが使えない環境ではMCPを使う、という順番を案内しています。

ACE Studioの設定の外部エージェント連携
設定の「外部エージェント連携」。MCPサーバーの起動コマンドとacestudio-cliの場所をコピーできる(筆者撮影)

対応するアシスタントとして、Claude Code、Codex、Claude Desktopなどが挙がっています。デスクトップ版のChatGPTについては、公式ガイドがCodexかChatGPT Workの利用を案内しています。どれも、ACE Studioと同じパソコンからつなぐ使い方です。ブラウザだけで使うアシスタントからは、直接つなげません。またACE Studioを起動しておく必要があります。

公式ドキュメントは、この機能を「実験的で、開発中」と位置づけています。コマンドや形式は更新で変わりうること、エージェントから使えない機能もあることが、あわせて書かれています。

今回はCLIを使いました。Claude Codeはコマンドをそのまま打てるので、MCPに登録しなくても動きました。CLIには詳しい説明書が付属していて、acestudio-cli help で読めます。Claude Codeは、わからない操作があると、まずこの説明書を引いていました。

歌を6本に分け、歌声を音符に書き戻しました

最初は、Sunoから書き出したmp3を、私がACE Studioに読み込みました。ここから先はClaude Codeの作業です。

Stem Splitterを「professional」モードで実行すると、歌、ドラム、ベース、ピアノ、ギター、その他の6本に分かれ、元のトラックの下に並びました。付属の説明書によると、Stem Splitterの4つのモードのうち、basicとprofessionalは無料で、残りの2つはクレジットを使います。

元の曲の下に分けたトラックが並ぶACE Studioの画面
元の曲の下に、分けた6本とVocal to MIDIで作った歌のトラックが並ぶ(筆者撮影)

次に、分けた歌のトラックにVocal to MIDIをかけました。言語は日本語を指定します。アプリの画面では言語を自動で判定させることもできますが、CLIの説明書では、言語の指定が必須とされています。説明書によると、こちらは無料です。

208秒の曲から、473個の音符ができました。音符にはそれぞれ、聞き取った読みが付きます。最初の行「今宵 かぼちゃの 灯がともる」は「こよいかぶちゃのひがとも」と書き起こされていました。読みは崩れても、音符の位置は、歌詞の時刻を取る手がかりとして十分に使えました。

Claude Codeは、この音符の読みと、私が書いた歌詞の読みを1文字ずつ突き合わせるプログラムを書きました。これで、歌われた53行それぞれに、歌い出しと歌い終わりの秒の目安を付けました。合わなかったのは、主に「Flex!」のような英語の掛け声です。日本語を指定して書き起こしているため、英語の部分はうまく照合できません。日本語でも、「伸びてくる 手 手 手」の1行は見つかりませんでした。そうした行のうち4行は、音符を見て手で直しています。

1か月前のように曲を何度も聴いてキーを押す作業は、なくなりました。

この作り方では、10月中に何度かつまずいています。4分を超える曲では、Vocal to MIDIの変換が通らず、2つに分けて書き起こしました。読み込んだあとに元のファイルを別のフォルダへ動かしたときは、分離が理由を示さずに失敗し、移した先から読み込み直すと通りました。どちらも、手順を一つ足せば済む話でした。

拍は、読み込んだ時点で解析されていました

拍の位置は、自分で解析する必要もありませんでした。ACE Studioは、読み込んだ音声の拍を自動で解析して、クリップに持たせています。acestudio-cliの clip beat-content で、それを読み出せます。このコマンドは、付属の更新履歴によると2.1.8で加わりました。

ACE Studioの解析では、今回の曲は144.27BPMで、拍の検出点は501個、小節の頭の候補は129個でした。Sunoには140BPMを指定していましたが、解析の推定値はそれより少し速い値でした。

1か月前の自作プログラムは、低い音の立ち上がりから拍を推定していたため、ドラムが止まる区間では当てになりませんでした。今回の曲にもドラムが薄くなる区間がありますが、拍は曲の終わり近く(207.94秒)まで並んでいました。

画面上部のテンポ表示が120.0のままなのは、プロジェクトのテンポを曲に合わせていないためです。曲のクリップには「144BPM」と表示されています。拍の秒をClaude Codeが計算に使うときは、プロジェクトのテンポではなく、クリップの解析結果を使いました。

拍とステムの音量で、文字と図形を動かしました

ここからはACE Studioの外です。MVはPythonで1コマずつ描き、ffmpegで動画にしました。この部分の考え方は、10月2日の記事と同じです。

変わったのは、動きの根拠が増えたことです。文字の帯は拍ごとに脈打ち、小節の頭で大きく跳ねます。それに加えて、分けたステムの音量も使いました。ドラムの音量で画面が揺れ、ベースの音量で下の帯が伸び縮みし、ギターの音量に合わせてギターソロの間に金色の線が走ります。

MVの静止画。ギターソロの間のメンバー紹介
ギターソロの間のメンバー紹介。拍に合わせてカードが切り替わる(筆者のMVより)

31日目は、それまでの30日間に登場したアーティストが全員そろう回にしました。歌詞の一行ごとに、歌う人のこれまでのMVの書体と色、絵を出しています。

できあがったMVは、横(1920×1080)と縦(1080×1920)の2本です。書き出しは、私のパソコンで横が20分前後、縦が約45分でした。

決めたのは、人です

全部を自動で作ったわけではありません。今回の作業で、音を聴き、動画を通しで見て仕上がりを確かめたのは私です。

曲は2回生成しました。1回目を聴いて、「金のカップ」が「かねのカップ」と歌われていることや、デスボイスがほとんど出ていないことに気づき、歌詞と指定を直しています。MVも、ギターソロの約40秒を「いま弾いている人の紹介」から「全員のメンバー紹介」に変えるなど、通しで見て何度か作り直しました。

作業の手間が減った分、時間は、見て、聴いて、決めることに使えました。

残る受け渡しは、Sunoで曲を作るところです

判断や手直しを除くと、今回手で受け渡したのは、Sunoのサイトで曲を作り、mp3をACE Studioに読み込むところです。

その入口になりそうなのが、Sunoが10月28日(日本時間29日)に発表したSuno MCPです。Claude、Claude Code、ChatGPT、Gemini、Cursorなどのアシスタントから、Sunoで曲を作れるようにする仕組みで、Suno側はベータ版として案内しています。ヘルプによると、無料プランを含むすべてのプランが対象で、曲は今のプランのクレジットで作られます。APIキーは要りません。ただし、今は早期アクセスの申し込みを受け付けている段階です。

Claude Codeでは、claude mcp add でサーバーを登録し、/mcp からSunoにサインインします。私も登録まではできましたが、サインインの画面で「お使いのアカウントでは、AIアプリとSunoの連携はまだご利用いただけません」と表示されました。早期アクセスを申し込み、許可を待っているところです。

Suno MCPのサインインで表示されたエラー画面
Suno MCPのサインインで表示された画面(筆者撮影)

Suno MCPがつながれば、曲を作るところから、歌を分け、歌詞の時刻と拍を取り、MVを描くところまでを、ひとつの会話の中で進められる見込みです。どこまで曲の情報を受け渡せるのかは、使えるようになってから確かめます。

1か月前、私は歌詞の時刻を取るためにキーを押し続けていました。今は、その時間を、どの言葉をどの色で見せるかを考えることに使えます。音楽制作ソフトがAIエージェントの入口を持ちはじめたことで、ひとりで曲とMVを作る人の作業は、形を変えはじめています。

10月に公開した31曲

題材にした31日目の曲を含め、にじみプロダクションが10月に公開した31曲を並べます。曲名から、YouTubeのMVに移れます。

再生リスト「にじみプロダクション 毎日1曲 × 31日」(外部)
10月の31日間に公開した曲を、Day 1から順に並べたYouTubeの再生リスト。最初から続けて聴くときは、ここから再生できる。

Day 曲名 アーティスト ひとこと
1 りんごの色 Half Bitten Apple Club 「はい」しか言えなかった優等生と、風みたいな自由人。放課後に始まった二人組のデビュー曲
2 Relic Baroque Pumpkins 古いと笑われたバロック調の6人が、転調して言い返すメタル
3 Miniature Band Half Bitten Apple Club ノートの隅に描いた棒人間のバンド。ギターの隣は一人分だけ空けたまま
4 とげのまま 葉(よう) 水もやっていない窓辺のサボテンが、日曜の朝、花をひとつ咲かせていた
5 Smack! 澄(すみ) 止まらない通知に、言葉は打たずスマホを伏せて、手をひとつ鳴らす
6 おにさん こちら 3年A組の誰か 同窓会で、誰も名前を思い出せない「いつも鬼だった男の子」
7 パニック! ずっと寝ててぇよーズ 一時間の寝坊のつもりで飛び出したのに、街の何かがおかしい
8 Stinky! 澄(すみ) 夜の歩道橋で、くさいセリフを撃ち合うラップバトル
9 RAM RFBY-09 電源を切られると全部忘れるロボットに、男の子が付箋で教える
10 Mystical 心(しん) 祖母の洋品店を片付けに帰った町で、占い師がレースを三度落とせと言う
11 Rescue! Half Bitten Apple Club 部室に来ないちーを、ひいろがベースを背負って迎えに走る
12 Toss! 澄(すみ) 朝帰りの娘と、卵焼きを焼いて待つ父の言葉の投げ合い
13 Flimsy Half Bitten Apple Club feat. 澄 来ない助っ人ドラマーの、ぺらっぺらの言い訳
14 Lady Luck ノルン 指先ほどの回復魔法しか使えない、時間が千倍ゆっくりな幸運の女神
15 Hooray 綴(つづり) 独り立ちして三年、コンビニの夜勤の合間に一通のメールが届く
16 Gangly Boy 霖(りん) いちばん背の高い男の子の、背中を丸めるしぐさから目が離せない
17 カタンコロン ~Contraption~ 葉(よう) ドアを開けるとビー玉が転がり、おもちゃの箱が「おかえり」と鳴る
18 Flightless! Half Bitten Apple Club 屋上で、名前だけ書いた進路の紙と「そっちの羽、貸して」
19 Confused! 澄(すみ) 隣に座るのに目は合わせない。気があるのか、ないのか
20 Lounge -なーんてな- ミトン 日だまりで寝るのが仕事の黒猫。……なーんてな
21 The Hero Is You ヨイネ・グラス × クロストーク まだ白い地図を持つ「きみ」に、吟遊詩人が歌う旅立ちのマーチ
22 You Were My Beacon 霖(りん) 終電の帰り道、明るかった三階の窓が、今夜はほかと同じ色
23 Mister Dapper 心(しん) 毎週金曜の三時、「ブレンドを ふたつ」と頼むおじいさん
24 Bake! メジェド ピラミッドの石を積む男たちが、音頭に合わせて綱を引く
25 Fracture! ピシッ 葉(よう) かえった雛に追われる猫から、商店街じゅうの追いかけっこへ
26 Zip! 澄(すみ) 誰より速く韻を撃つ澄の口が、輪の外の影の前でだけ閉じる
27 Dumb -愚者の宴- Baroque Pumpkins マイクの音が消えたステージで、冷めていたボーカルが叫ぶ
28 トロフィー 凪(なぎ) 古道具屋で見つけた10円のトロフィーと、新聞をめくる祖父の手
29 Tusk Blues 木場ジョージ 仮装の付け牙が取れないまま、週末を過ごして月曜の会議室へ
30 Cookie RFBY-09 画面は好みを覚えているのに、ロボットは毎朝「はじめまして」
31 Flex -三十一夜目- にじみプロダクション オールスターズ 31日間のアーティストが全員そろう、ハロウィンの見せびらかし合戦

曲と画像はAIで作っています(音楽:Suno/歌詞:AIとの共作/画像:AI生成)。登場人物はすべて架空のキャラクターで、歌声もAIによるものです。お題はInktoberのお題リストをお借りした個人の企画で、Inktober公式の活動とは関係ありません。

【関連記事】

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【編集部後記】

ACE Studioの説明書で目を引いたのは、読み手にAIエージェントを想定した書き方です。Stem Splitterのモードは自動では選ばれず、クレジットを使うモードは名前で指定しないと動きません。モードを選ぶことは、お金の使い道を選ぶことだから、という理由が添えられていました。

画面で迷わず選べることと、AIが勝手に支払わないこと。音楽制作ソフトの説明書は、これから二種類の利用者に向けて書かれていくのかもしれません。

【用語解説】

AIエージェント
人の指示を受けて、自分で手順を考え、ツールの実行やファイルの操作を進めるAI。Claude Codeは、パソコン上でコマンドを打ちながら作業を進めるAIエージェントである。

CLI(コマンドラインインターフェース)
文字のコマンドを打ってソフトを操作する方法。画面を操作しなくても、コマンドやスクリプトから呼び出せるため、AIエージェントにも扱いやすい。ACE Studioのacestudio-cliはアプリに同梱されている。

MCP(Model Context Protocol)
AIアプリと外部のデータやツールをつなぐための共通の取り決め。MCPのサーバーを登録すると、AIアシスタントは会話の中でそのツールを呼び出せる。

ステム
1曲の音を、歌・ドラム・ベースなどのパートごとに分けた音声。ACE StudioのStem Splitterは、まとまった曲を複数のステムに分けるAIツールである。

Vocal to MIDI
ACE Studioの機能。歌声の音声を、音の高さと長さを持つ音符(MIDI)に変換し、各音符に聞き取った歌詞を付ける。

BPM
1分あたりの拍の数で表すテンポ。140BPMなら1分に140拍で、1拍は約0.43秒になる。

音ハメ
映像の切り替えや動きを、音楽の拍やアクセントにぴったり合わせる手法。

モーショングラフィックス
文字や図形、色に動きを付けて見せる映像の表現。写真や実写を使わず、デザインの要素だけで構成することが多い。

【参考リンク】

ACE Studio(外部)
AIの歌声、AIの楽器、声のクローン、ステムの分離などをひとつにまとめた音楽制作ソフト。有料のプランで提供されている製品。

ACE Studio Docs「External Agent Access」(外部)
外部のAIエージェントからACE Studioを操作する方法の公式説明。CLIとMCPの2つの入口と、接続の手順をまとめている。

ACE Studio Docs「Stem Splitter」(外部)
Stem Splitterの公式説明。4つのモードと、それぞれで分けられるパートを紹介している。分離は選んだ範囲に対して行う。

ACE Studio Docs「Vocal to MIDI」(外部)
Vocal to MIDIの公式説明。歌声を歌詞付きのMIDIに変える手順と対応言語、アカペラ向けに設計されている点をまとめている。

Claude Code(外部)
Anthropicのエージェント型コーディングツールの公式ドキュメント。コマンドの実行や、MCPでの外部ツールとの接続に対応する。

Suno MCP (beta)(外部)
2026年10月28日付のSunoの公式発表。AIアシスタントからSunoで曲を作れるベータ版で、早期アクセスを受け付けている。

How do I connect Suno MCP (Beta) to an AI assistant?(外部)
Suno MCPの接続手順をまとめたヘルプ記事。Claude CodeやChatGPTなど、アシスタントごとの設定を説明している。

Model Context Protocol(外部)
MCPの公式サイト。AIアプリと外部のデータやツールをつなぐオープンな規格について、その仕様と導入の手引きを公開している。

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山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

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