MTAニューヨーク地下鉄|AIカメラによる予測的防犯システム導入計画とその影響

[更新]2025年6月30日14:50

 - innovaTopia - (イノベトピア)

ニューヨーク市の公共交通機関を運営するMetropolitan Transportation Authority(MTA)は、地下鉄プラットフォームでの犯罪や危険行動を未然に防ぐため、AIカメラを活用した予測的防犯システムの導入を検討している。
2025年4月28日にMTA安全委員会で、チーフセキュリティオフィサーのマイケル・ケンパー氏が「AI技術を用いてトラブルや問題行動の兆候を感知する技術をパイロット運用中」と発表した。

このAIシステムは、異常行動を検知するとアラートを発し、警備員や警察が事件発生前に対応できることを想定している。顔認識は使用せず、あくまで行動検知に特化している。導入企業や検知対象となる行動の詳細は未公表だが、複数のテック企業と協力している。MTAは2023年からAIによる無賃乗車対策も導入している。ニューヨーク地下鉄は1日約300万人が利用しており、安全対策強化が期待されている。

from New York City wants subway cameras to predict ‘trouble’ before it happens

【編集部解説】

ニューヨーク市地下鉄で進むAIカメラによる「予測的防犯」システムの導入は、都市の安全管理における新たな潮流を象徴しています。MTAは、犯罪や事故が起こる前に兆候を検知し、警備や警察が迅速に対応できる体制を目指しています。顔認識ではなく「行動検知」に特化している点は、プライバシーへの配慮や誤認逮捕リスクの低減を意識したものです。

一方で、AIによる監視にはバイアスや誤検知、プライバシー侵害といった課題も指摘されています。AIは学習データの偏りによって特定の属性や行動を過剰に警戒するリスクがあり、現場での混乱や市民の不信感につながる可能性も否定できません。実際、米国内外でAI監視技術が社会的議論を呼んでいる事例もあります。

今後は、AIの透明性や説明責任、データの質の担保、人間による最終判断(human-in-the-loop)の仕組みが不可欠です。都市の安全と個人の権利・自由のバランスをどう取るかが、今後の社会的な議論の焦点となるでしょう。技術の進化とともに、私たち自身も新しい「安心」と「自由」のあり方を考える必要があります。

【用語解説】

MTA(Metropolitan Transportation Authority):
ニューヨーク州が運営する北米最大の公共交通機関。地下鉄、バス、鉄道などを運営し、ニューヨーク市とその近郊の約1,530万人をカバーする。日本の「東京都交通局」や「JR東日本」に近いが、さらに広域・大規模。

AIカメラ/AI監視システム
人工知能を搭載した監視カメラ。映像から人の行動や異常を検知し、リアルタイムで警備や警察に通知できる。

予測的防犯(Predictive Prevention)

AIが過去のデータやリアルタイムの映像から“事件が起きそうな兆候”を検知し、事前に対応できる技術。映画「マイノリティ・リポート」の“予知警察”に例えられる。

【参考リンク】

MTA公式サイト(外部)ニューヨーク市と周辺地域の公共交通機関の公式情報を提供している。

Hayden AI公式サイト(外部)AIと空間分析を活用した交通監視・都市インフラ向けソリューションを提供する企業。

【参考動画】

【関連記事】

AI(人工知能)ニュースをinnovaTopiaでもっと読む

投稿者アバター
乗杉 海
新しいものが大好きなゲーマー系ライターです!

読み込み中…
読み込み中…