ブラウザにとって「AI対応」が特別な機能だった時代は、もう終わりに近づいているのかもしれません。
OperaとGoogle Geminiのタッグは、「どのAIを使うか」ではなく「どのブラウザを自分の相棒にするか」を選ぶフェーズに、私たちを連れていこうとしています。
Operaは2025年12月1日、Opera One、Opera GX、Opera Neonの各ブラウザに新世代のAI機能を展開すると発表した。
8,000万人以上のユーザーに最新のOpera AIへの無料アクセスを提供する。この機能はGoogleとの長年のパートナーシップ拡大により実現し、最新のGeminiモデルをブラウザAIに統合している。
新しいOpera AIはサイドパネルとして機能し、ウェブページや動画と連動してコンテキストに基づいた回答を提供する。音声入出力、画像・動画を含むファイル分析に対応し、Opera Neonのエージェント型エンジンを採用することで20%高速なレスポンスを実現した。
Operaは最新の収益結果でクエリ収益が年間17%増加したと報告している。1995年に設立されたOperaはノルウェーのオスロに本社を置き、ナスダックに上場している。
From:
Opera browsers now ship with a new generation of AI powered by Google

【編集部解説】
今回のOperaの発表で注目すべきは、ブラウザが単なる「ウェブページを閲覧するツール」から「コンテキストを理解するAIプラットフォーム」へと進化している点です。スタンドアロンのチャットボットとは異なり、ブラウザAIは開いているタブ、ページ内容、ブラウジングフローといったリアルタイムの文脈情報にアクセスできます。これにより、単発の質問に答えるだけでなく、ユーザーが今まさに行っている作業に即したアシスタンスが可能になるのです。
Opera Neonはもともと、プレミアムなエージェントブラウザとしてフォーム入力や予約、ショッピングといったタスク自動化を特徴としてきました。今回の展開により、そのNeon由来のエージェントエンジンとGoogleの最新Geminiモデルを組み合わせたOpera AIが、一般ユーザー向けのOpera OneやOpera GXにも広がりました。プレミアムサブスクリプション製品であるNeonと、無料で使えるOpera One/GXという棲み分けが明確化され、より幅広いユーザー層にAI体験を届ける戦略が見えてきます。
ビジネスモデルの観点からも興味深い動きです。Operaはクエリ収益が年間17%増加したと報告しており、これは従来の検索広告だけでなく、AIツールの利用増加を反映した収益化を意味します。ユーザーがAIを通じて商品やサービスを発見し、eコマースプラットフォームへ接続するという新しい収益源が育ちつつあるのです。
プライバシーへの配慮も見逃せません。ユーザーはOpera AIと共有するコンテキストを完全にコントロールでき、何を認識外に保つかを選択できます。AIが強力になればなるほど、プライバシー保護の仕組みが重要になります。
長期的には、ブラウザがAIエージェントの主戦場になる可能性が高まっています。フォーム入力、ホテル予約、オンラインショッピングといったルーチンタスクをブラウザが代行する世界では、ユーザーの意図を理解し実行する「エージェント性」が差別化要因となるでしょう。GoogleのAI Overviewsや新たなAIモードなど、検索体験そのものが変容する中で、独立系ブラウザであるOperaがエコシステムパートナーと柔軟に協業できる点は強みとなりそうです。
【用語解説】
エージェント型AI(Agentic AI)
ユーザーの指示を受けて自律的にタスクを実行するAIシステム。単なる質問応答ではなく、ウェブ検索、フォーム入力、予約手続きなど、複数のステップを伴う作業を代行できる。ブラウザに統合されることで、ユーザーの文脈を理解しながら能動的に行動する点が特徴である。
Gemini
GeminiはGoogleが開発した大規模言語モデル(LLM)シリーズで、テキスト、画像、動画など複数形式のデータを処理できるマルチモーダルAIである。Operaは、Googleとのパートナーシップ拡大により、最新世代のGeminiモデルをブラウザAIに統合している。
コンテキスト認識(Context Awareness)
AIがユーザーの現在の状況や文脈を理解する能力。ブラウザAIの場合、開いているタブ、閲覧中のページ内容、検索履歴などから状況を把握し、それに応じた回答やアシスタンスを提供する。スタンドアロンのチャットボットにはない、ブラウザならではの強みである。
クエリ収益(Query Revenue)
検索やブラウザ内クエリに紐づく収益全般を指す指標で、従来の検索広告に加え、eコマース連携など多様化する収益手法を含む形で拡大しつつある。Operaは最新決算で、このクエリ収益が前年同期比17%増加したと報告している。
サイドパネル
ブラウザのメイン画面の横に表示される補助的なインターフェース。Opera AIはこの形式で実装され、ウェブページを閲覧しながら同時にAIと対話できる。画面を切り替えることなく情報収集や分析が行える。
【参考リンク】
Opera公式サイト(外部)
Opera One、Opera GX、Opera Neonなど各製品のダウンロードや機能紹介、ブラウザAIの詳細情報が掲載されている公式サイト。
Opera投資家向け情報(外部)
Operaの財務情報、収益レポート、株主向け資料を公開。NASDAQ上場(ティッカー:OPRA)の最新業績データが確認できる。
Google Gemini公式サイト(外部)
Googleのマルチモーダルパワー大規模言語モデル「Gemini」の公式ページ。Operaブラウザに統合された最新技術の詳細を紹介。
Opera Newsroom(外部)
Operaの公式プレスリリースページ。新機能の発表、パートナーシップ情報、技術革新に関する最新ニュースが英語で配信される。
【参考記事】
Opera rolls out Gemini-powered AI features across its browsers(外部)
8,000万人以上のユーザーへのGemini統合展開、20%高速化、音声入出力機能などの詳細を解説する記事。
Google Gemini AI Now Built Into Opera One and Opera GX Browsers(外部)
サイドパネル形式でのAI実装、複数タブ間の比較機能、コンテキスト認識による回答精度向上について具体的に説明。
Opera browsers roll out new AI capabilities powered by Google(外部)
クエリ収益が年間17%増加した財務データに言及し、AI活用が収益化戦略の中核になっていることを指摘する分析記事。
Opera announces Opera Neon, the first AI agentic browser(外部)
2025年5月に発表されたOpera Neonの詳細。エージェント型ブラウザの特徴、タスク自動化機能を公式に解説。
How Opera’s AI Browser Upgrades and Query Growth Could Shape Its Future(外部)
OperaのAIブラウザアップグレードとクエリ成長が将来に与える影響を財務的視点から分析した投資家向け考察記事。
【編集部後記】
皆さんは普段、複数のタブを開きながら情報を比較したり、ウェブページの内容をメモ帳にコピペしたりする作業に、どれくらいの時間を使っているでしょうか。ブラウザがコンテキストを理解してくれるなら、「この3つのタブを比較して」と話しかけるだけで済むようになります。
Opera AIのような動きは、私たちの日常的なウェブ体験を静かに、しかし確実に変えていくはずです。スタンドアロンのAIチャットと、ブラウザに統合されたAI、どちらが皆さんの働き方にフィットするか、ぜひ試してみてください。






























