Anthropicは2025年12月8日、プログラミングエージェント「Claude Code」とSlackを接続するベータ版統合機能を発表した。
ユーザーがSlackで@Claudeをメンションすると、システムが会話のコンテキストを分析してClaude Codeセッションを自動生成し、コードリポジトリの特定、問題調査、修正提案、プルリクエストの作成までを実行する。
Claude Codeは2025年5月の公開から6か月で年間10億ドル超の収益を達成し、Netflix、Spotify、Salesforceなどが顧客となっている。Anthropicは今月、JavaScriptランタイムのBunを初めて買収した。
同社の内部調査によると、従業員は業務の60%でClaudeを使用し、50%の生産性向上を達成している。連続ツール呼び出し数は6か月前の9.8回から21.2回に増加した一方、人間のターン数は6.2回から4.1回へ33%減少した。
MicrosoftとNvidiaは先月、Anthropicへ最大150億ドルの投資を約束している。
From:
Anthropic’s Claude Code can now read your Slack messages and write code for you
【編集部解説】
今回のSlack統合は、単なる機能追加ではなく、開発プロセスにおける根本的な転換点を示しています。これまでAIコーディングアシスタントは専用のIDEやWebインターフェースで使うものでしたが、Anthropicは開発者が最も時間を費やすコミュニケーションの場に直接入り込む戦略を取りました。
注目すべきは収益面での成功です。Claude Codeは公開から6か月で年間換算収益10億ドルを達成しました。この急成長は、単に便利なツールではなく、開発ワークフローを実質的に変革できる製品であることを物語っています。
Slack統合の本質は「コンテキストの断絶」を解消する点にあります。バグの報告や機能要求は多くの場合Slackで行われますが、実際の修正作業は別のツールで行われる。この移動のたびに情報が失われ、認識のズレが生じていました。Claude Codeはスレッドの文脈を読み取り、関連するコードリポジトリを自動で特定してタスクを実行します。
技術的な裏付けとして、Anthropicが今月Bunを買収した背景も重要です。Bunは既存のNode.jsと比較して最大3〜197倍高速なJavaScriptランタイムで、Claude Codeの実行ファイルとして配布されています。つまりBunの安定性とスピードが、Claude Codeのパフォーマンスを直接支えているのです。
一方で、Anthropic自身が実施した内部調査が示す懸念も見逃せません。従業員の多くは業務の0〜20%しか完全に委任できないと報告しており、スキル低下への不安を表明しています。コード生成が容易になるほど、深い理解を獲得する機会が減る逆説的な状況が生まれているわけです。
Slack統合により、@メンションだけでコーディングタスクを起動できる手軽さは、この傾向をさらに加速させる可能性があります。便利さと引き換えに、開発者が本質的なスキルをどう維持するかが、今後の大きな課題となるでしょう。
【用語解説】
Claude Code
Anthropicが開発したAIプログラミングエージェント。コードの記述、デバッグ、リファクタリングを自動実行し、開発者の生産性向上を目指す。2025年5月に一般公開され、わずか6か月で年間10億ドルの収益を達成した。
Model Context Protocol (MCP)
AIエージェントを外部システムに接続するためのオープン標準プロトコル。従来はツールごとにカスタム統合が必要だったが、MCPを一度実装すれば複数の統合が可能になる。開発エコシステムの断片化を解消する役割を持つ。
Bun
従来のNode.jsと比較して最大3〜197倍高速なJavaScriptランタイム。ランタイム、パッケージマネージャー、バンドラー、テストランナーを統合したオールインワンツールキット。Anthropicが2025年12月に初の買収案件として取得した。
プルリクエスト
ソフトウェア開発においてコード変更を提案する仕組み。開発者が修正したコードをレビュー用に提出し、承認されるとメインコードベースに統合される。
European Accessibility Act (EAA)
2025年7月に発効したEUのアクセシビリティ法。EU内でデジタル製品・サービスを提供する全ての企業に、障がい者がアクセス可能な設計を義務付ける。EU域外の企業も対象となる。
【参考リンク】
Anthropic公式サイト(外部)
AI安全性研究に注力する企業。Claude AIシリーズを開発し、エンタープライズ向けAIソリューションを提供している。
Claude Code製品ページ(外部)
AnthropicのAIプログラミングエージェント。Slack連携やデスクトップアプリ、API経由での利用が可能。
Bun公式サイト(外部)
高速JavaScriptランタイム。Node.jsと比較して最大197倍高速とされ、2025年12月にAnthropicが買収した。
Model Context Protocol (MCP)(外部)
AIエージェントと外部システムを接続するオープン標準プロトコル。Anthropicが主導して開発を進めている。
Slack(外部)
企業向けコミュニケーションプラットフォーム。75万以上の組織が利用し、各種ビジネスツールとの統合機能を提供。
【参考動画】
【参考記事】
Claude Code is coming to Slack, and that’s a bigger deal than it sounds(外部)
TechCrunchによる分析記事。Slack統合が開発ワークフローの「コンテキストの断絶」を解消する重要性を解説。
Agentic coding comes to Slack as Anthropic launches Claude Code integration(外部)
SiliconAngleの詳細レポート。コミュニケーションツール内でのコード生成がもたらす開発プロセスの変革を分析。
Claude Code made an astonishing $1B in 6 months(外部)
ZDNETによる収益分析。Claude Codeが6か月で年間換算収益10億ドルを達成した背景を解説している。
Claude Code ARR Hit $1B in 6 months(外部)
ARR Clubによる収益データの分析記事。Claude CodeがARR(年間経常収益)10億ドルに到達した事実を報告。
Anthropic acquires developer tool startup Bun to scale AI coding(外部)
ロイターによるBun買収報道。Anthropic初の買収案件として、高速JavaScriptランタイムBunを取得したと伝える。
Anthropic acquires JavaScript runtime Bun(外部)
Gigazineによる技術解説記事。BunがNode.jsより3〜197倍高速である点など技術的背景を詳述している。
【編集部後記】
Slackでの何気ない会話から、数分後にはプルリクエストが生成される。そんな開発体験を、みなさんはどう受け止めるでしょうか。便利さの裏側で、私たちが大切にしてきた「じっくり考える時間」や「同僚との対話」が減っていくことへの違和感も、きっとあるはずです。
AIが開発の主役になっていく時代に、人間の開発者はどんな役割を担うべきなのか。効率化と引き換えに失うものは何か。みなさん自身の現場では、どんな変化が起きているでしょうか。ぜひ、感じていることを教えていただけたら嬉しいです。






























