Anthropic、Accentureと大型提携でエンタープライズAI市場を攻略──市場シェア40%、Claude Codeが開発現場を変革

[更新]2025年12月11日

 - innovaTopia - (イノベトピア)

AccentureとAnthropicは2025年12月9日、エンタープライズAI統合を促進する拡大パートナーシップを発表した。両社は新たにAccenture Anthropic Business Groupを設立し、規制業界全体での生成AI展開を工業化する。

Accentureは、AIコーディング市場の半分以上を保持するとされるAnthropicのClaude Codeの主要パートナーとして位置づけられ、約30,000人の自社専門家をClaudeでトレーニングする計画である。

パートナーシップは金融サービス、ヘルスケア、公共部門向けの業界特化型AIソリューションを開発する。実装はAccentureのInnovation Hubsを通じて行われ、両社はClaude Center of Excellenceに共同投資する。

AnthropicのCEO兼共同創設者Dario Amodeiと、Accentureの会長兼CEOのJulie Sweetが声明を発表した。AnthropicのエンタープライズAI市場シェアは24パーセントから40パーセントに成長している。

From: 文献リンクAccenture and Anthropic partner to boost enterprise AI integration

【編集部解説】

エンタープライズAI市場で注目すべき構造転換が進んでいます。AccentureとAnthropicが発表した今回のパートナーシップは、単なる業務提携を超えた、AIの「実装時代」への本格的な移行を象徴する動きです。

興味深いのは、このパートナーシップが発表されたタイミングです。Accentureは同じ月の12月1日にOpenAIとも大規模な提携を発表しています。数万人の従業員にChatGPT Enterpriseのライセンスを付与し、OpenAI Certificationsを通じた大規模なトレーニングプログラムを展開すると表明しました。そしてわずか1週間後、今度はAnthropicと30,000人規模のトレーニングを含む専用ビジネスグループの設立を発表したのです。

この「二股戦略」は、Accentureが単一のAIプロバイダーに依存するリスクを回避し、クライアントに最適なソリューションを提供できる体制を構築しようとしていることを示しています。実際、AccentureのCEOであるJulie Sweetの発言からは、同社がAIコンサルティング市場における「実装エンジン」としての地位を確立しようとする明確な意図が読み取れます。

Anthropicを選んだ理由も明確です。Menlo Venturesが2025年12月に発表した最新レポートによれば、Anthropicはエンタープライズ向けLLM市場で40%のシェアを獲得し、OpenAIの27%を大きく引き離してトップに立っています。特にコーディング分野では54%という圧倒的なシェアを誇り、これは40億ドル規模の市場において決定的な優位性を意味します。わずか2年前の2023年には12%だったシェアが、2025年には40%へと3倍以上に拡大したこの急成長は、Claude Sonnet 3.5の2024年6月のリリースを起点としています。

コーディング支援がエンタープライズAI導入の「最初のキラーアプリ」となった理由は明快です。開発者の生産性向上は定量的に測定でき、ROIが明確に示せるからです。これは多くの企業が直面している「AI投資の正当化」という課題への直接的な解決策となります。

金融サービス、ヘルスケア、公共部門といった高度に規制された業界への注力も戦略的です。これらの業界は最も慎重にAIを導入する一方で、一度導入すれば長期的な関係が構築される傾向があります。Menlo Venturesのレポートによれば、ベンダーを切り替える企業はわずか11%に過ぎず、一度選ばれたプロバイダーは強固な地位を確立できます。

AccentureのInnovation Hubsとの連携、そしてClaude Center of Excellenceへの共同投資は、単なる技術導入を超えた「責任あるAI」の実践基盤を構築しようとする試みです。Anthropicの「constitutional AI」原則とAccentureのガバナンス専門知識の組み合わせは、非決定論的なAIモデルを本番環境に展開する際のリスクを軽減する重要な要素となります。

2025年度のAccentureの業績を見ると、先進AI収益が27億ドル(前年の3倍)、生成AI予約が59億ドル(前年のほぼ2倍)と、AI関連ビジネスが急速に拡大しています。同社はこのパートナーシップを通じて、その成長をさらに加速させようとしているのです。

企業のAI支出は2025年に370億ドルに達し、2024年の115億ドルから3.2倍に増加しました。この市場の急拡大の中で、Anthropicは10月にDeloitte、IBM、そして先週Snowflakeとも2億ドルの契約を締結するなど、エンタープライズ市場での存在感を急速に高めています。

今回の発表が示すのは、AIの「実験フェーズ」から「実装フェーズ」への決定的な移行です。企業は今や、AIツールを試すことではなく、それらを実際のビジネスプロセスに統合し、測定可能な価値を生み出すことを求めています。AccentureとAnthropicのパートナーシップは、この移行を加速させる重要な触媒となるでしょう。

【用語解説】

LLM(Large Language Models/大規模言語モデル)
膨大なテキストデータで学習された大規模なAIモデル。文章の生成、翻訳、要約、質問応答など、自然言語に関する多様なタスクを実行できる。GPTやClaudeなどが代表例である。

Claude Code
Anthropicが開発したAIコーディング支援ツール。開発者がコードの記述、デバッグ、リファクタリングを効率化するために設計されており、2025年時点でAIコーディング市場の54%のシェアを獲得している。

CI/CD(Continuous Integration/Continuous Delivery)
継続的インテグレーション/継続的デリバリーの略。ソフトウェア開発において、コードの変更を自動的にテスト・統合し、本番環境へ迅速に展開するための開発手法とツールチェーンを指す。

Constitutional AI
Anthropicが開発した安全性を重視したAI設計原則。AIモデルに倫理的・安全的なルールを直接組み込むことで、有害な出力を抑制し、責任あるAI運用を実現する手法である。

Agentic AI(エージェント型AI)
単にテキストを生成するだけでなく、計画を立て、タスクを実行し、複雑なワークフローを自律的に完了できる次世代のAIシステム。人間の監督を最小限に抑えながら業務を遂行できる。

Global 2000
フォーブス誌が毎年発表する世界の上場企業2000社のランキング。売上高、利益、資産、市場価値の4つの指標に基づいて選定される、世界最大規模の企業群を指す。

ROI(Return on Investment/投資収益率)
投資に対してどれだけの利益が得られたかを示す指標。AI導入においては、導入コストに対する生産性向上や売上増加などの効果を定量化する際に用いられる。

Menlo Ventures
シリコンバレーを拠点とする著名なベンチャーキャピタル。70億ドル以上の資産を運用し、Anthropic、Uber、Rokoなど85社以上の上場企業を支援してきた。AI分野への投資に特に注力している。

【参考リンク】

Accenture(アクセンチュア)(外部)
世界最大級のコンサルティング・ITサービス企業。80万人以上の従業員を擁し、企業のデジタル変革やAI導入支援を提供。

Anthropic(アンソロピック)(外部)
安全で信頼性の高いAIシステムの開発を目指すAI研究企業。Claude AIモデルシリーズを開発している。

Claude(クロード)(外部)
Anthropicが開発したAIアシスタント。高度な推論能力とコーディング支援機能を持ち、エンタープライズ向けLLM市場で40%のシェアを獲得。

Menlo Ventures – 2025 State of Generative AI Report(外部)
エンタープライズAI市場の詳細な分析レポート。150社以上の技術リーダーへの調査に基づく市場シェアや投資動向を報告。

Accenture Innovation Hubs(外部)
Accentureが世界中に展開するイノベーションセンター。クライアントが新技術をプロトタイプ化し検証するための環境を提供。

【参考記事】

Accenture and Anthropic Launch Multi-Year Partnership to Drive Enterprise AI Innovation and Value Across Industries(外部)
Accenture公式のプレスリリース。30,000人のトレーニング計画、Accenture Anthropic Business Groupの設立、規制業界向けソリューション開発などの詳細を発表。

Anthropic and Accenture sign multi-year AI strategic partnership(外部)
TechCrunchによる報道。パートナーシップが3年契約であること、Anthropicの市場シェアが40%に達したこと、コーディング分野で54%のシェアを持つことを報告。

Menlo Ventures’ 2025 State of Generative AI Report: Enterprise Investment Hit $37B in 2025(外部)
2025年の企業AI支出が370億ドルに達し、Anthropicが40%の市場シェアを獲得したこと、コーディングが最初のキラーユースケースとなったことを報告。

Enterprise LLM Spend Reaches $8.4B as Anthropic Overtakes OpenAI(外部)
2025年中間期のエンタープライズLLM支出が84億ドルに達し、Anthropicが32%の市場シェアでOpenAIを上回ったことを報じたMenlo Venturesのレポート。

OpenAI and Accenture Accelerate Enterprise Reinvention with Advanced AI(外部)
AccentureとOpenAIのパートナーシップに関する公式発表。数万人の従業員へのChatGPT Enterprise導入とエージェント型AIの展開計画を発表。

Enterprises prefer Anthropic’s AI models over anyone else’s, including OpenAI’s(外部)
Menlo Venturesのレポートに基づき、Anthropicが32%の市場シェアでエンタープライズ市場のトップに立ったこと、Claude 3.5 Sonnetのリリースが成長の起点となったことを分析。

How Accenture’s OpenAI Partnership Turns AI Hype Into Profits(外部)
AccentureのAI関連収益が27億ドル(前年比3倍)、生成AI予約が59億ドル(前年比ほぼ2倍)に達したことなど、同社のAI事業の財務的成果を報告。

【編集部後記】

AccentureがOpenAIとAnthropicの両方と大規模なパートナーシップを結んだこの動きから、私たちは何を読み取るべきでしょうか。企業がAIを「試す」時代は終わり、「どう実装し、どう測るか」が問われる時代に入ったことは確かです。みなさんの組織では、AI導入の成果をどのように測定していますか。あるいは、複数のAIプロバイダーを併用する戦略は現実的でしょうか。Anthropicの急成長とOpenAIの市場シェア低下は、技術の優劣だけでなく、エンタープライズ市場が何を重視しているかを映し出しています。この変化の波を、みなさんはどう捉えますか。

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Satsuki
テクノロジーと民主主義、自由、人権の交差点で記事を執筆しています。 データドリブンな分析が信条。具体的な数字と事実で、技術の影響を可視化します。 しかし、データだけでは語りません。技術開発者の倫理的ジレンマ、被害者の痛み、政策決定者の責任——それぞれの立場への想像力を持ちながら、常に「人間の尊厳」を軸に据えて執筆しています。 日々勉強中です。謙虚に学び続けながら、皆さんと一緒に、テクノロジーと人間の共進化の道を探っていきたいと思います。

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