OpenAIは2026年後半に初のAIデバイスを発表する予定であることが明らかになった。同社グローバル渉外責任者のChris LehaneがAxiosに語った。製品はApple元デザイン責任者ジョニー・アイブ率いるio Productsチームが設計を担当している。アイブのスタートアップは65億ドルで買収され、昨年OpenAIと統合された。
リーク情報によると、初のChatGPT搭載デバイスはポケットサイズでスクリーンレス、周囲環境を認識する機能を持つ。今週のサプライチェーン情報では、耳の後ろに装着するカプセル型の「Sweetpea」というコードネームのデバイスが開発中とされ、カスタム2nmチップを搭載しSiri経由でiPhone操作を代替する可能性がある。Foxconnが製造を担当し、早ければ9月発売の見込みだ。
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OpenAI on Track to Unveil First AI Device This Year, Could Rival AirPods
【編集部解説】
このニュースは、OpenAIがソフトウェア企業からハードウェア市場への本格参入を示す重要な転換点となります。特に注目すべきは、65億ドルという巨額を投じてジョニー・アイブのデザイン会社を買収した背景です。OpenAIはすでに23%の株式を保有していたため、実質的には約50億ドルで残りの77%を取得した形になります。
技術的な観点から見ると、「Sweetpea」と呼ばれる耳掛け型デバイスは、従来のスマートフォン中心のインターフェースからの脱却を目指しています。カスタム2nmチップの搭載は、デバイス上でのAI処理を可能にし、クラウド依存を減らすことで応答速度やプライバシー保護の向上が期待されます。超音波トランスミッターやセンサーの搭載により、周囲の環境を認識しながらコンテキストに応じた支援を提供できる点が革新的です。
市場への影響は多岐にわたります。AirPodsとの機能的重複が示唆されていますが、単なる音楽再生デバイスではなく、AIアシスタントとの常時対話を前提とした設計になる見込みです。初年度に4,000万から5,000万台の出荷を計画しているとされ、これはOpenAIの野心的な目標を示しています。
一方で懸念材料も存在します。Humane社のAI Pinが商業的に失敗した前例があり、スクリーンレスのAIデバイスが実際にユーザーに受け入れられるかは未知数です。また、常時装着型デバイスによる音声データの収集は、プライバシーや監視に関する新たな議論を呼ぶ可能性があります。
OpenAIは現在、年間約130億ドルの収益を目指していますが、ChatGPTの開発コストは膨大で、まだ黒字化していません。ハードウェア事業への進出は、新たな収益源を確保する戦略的な動きと言えるでしょう。
【用語解説】
2nmチップ
現在の7nmチップと比較して45%高性能化、または75%の省電力化を実現する次世代半導体技術。指の爪サイズに500億個のトランジスタを搭載できる。
スクリーンレスデバイス
ディスプレイを持たず、音声やジェスチャーなどでインターフェースを構成するデバイス。画面からの解放を目指す新しいコンピューティング形態である。
contextual awareness(コンテキスチュアル アウェアネス)
ユーザーの周囲環境、状況、過去の行動履歴などを認識し、文脈に応じた適切な支援を提供するAIの能力を指す。
Sweetpea
OpenAIが開発中とされる耳掛け型AIデバイスのコードネーム。リーク情報によると、錠剤型の形状で卵形ケースに収納される。
【参考リンク】
OpenAI公式サイト(外部)
ChatGPT、DALL-E、Soraなどを開発するAI企業の公式サイト。同社のミッションは汎用人工知能が全人類に利益をもたらすようにすることである。
LoveFrom(外部)
Jony IveとMarc Newsonが2019年に設立したクリエイティブ集団。Ferrari、Airbnb、OpenAIなどのブランドと協業している。
Foxconn公式サイト(外部)
世界最大の電子機器受託製造サービス企業。OpenAIとの協業により米国内でAIハードウェアの製造を強化している。
【参考記事】
Exclusive: OpenAI aims to debut first device in 2026(外部)
OpenAIのChris Lehaneが*Axios*に語った独占インタビュー。2026年後半にデバイスを発表する計画を明らかにした原典記事。
OpenAI acquires Jony Ive’s io Products in $6.5B all-stock deal(外部)
OpenAIがJony Iveのoi Productsを65億ドルの株式交換で買収した経緯を詳述。OpenAIは既に23%の株式を保有していたため、実質的には約50億ドルで残りを取得した。
OpenAI and Foxconn collaborate to strengthen U.S. manufacturing(外部)
OpenAIとFoxconnの協業を発表した公式リリース。次世代AIインフラハードウェアの米国内での設計・製造に関する提携内容を説明している。
OpenAI’s New Device: What We Know So Far(外部)
OpenAIのデバイスがポケットサイズでスクリーンレス、コンテクスチュアル アウェアネスを備えることを解説。ユーザーの生活全体を把握する機能について詳述している。
Tiny tech, big AI power: What are 2-nanometre chips?(外部)
2nmチップ技術の詳細を解説。指の爪サイズに500億個のトランジスタを搭載でき、7nmチップと比較して性能と省電力性が大幅に向上することを説明。
The Humane AI Pin Failure: A $700 Lesson in Product Development(外部)
699ドルのHumane AI Pinが商業的に失敗した要因を分析。技術的制約、既存エコシステムとの非統合、基本機能の不具合などの教訓を提示している。
OpenAI teases hardware unveil this year as Jony Ive’s team hires more Apple alumni(外部)
Jony IveのチームがApple出身者を積極的に採用していることを報告。ハードウェア発表に向けた体制強化の動きを伝えている。
【編集部後記】
OpenAIのハードウェア参入は、AI体験の根本的な変革を予感させます。耳掛け型というフォームファクターは、Humane AI Pinの失敗を踏まえた選択なのでしょうか。常時装着型デバイスが収集する音声や環境データのプライバシー管理はどう設計されるのか、2nmチップによるオンデバイス処理がどこまでクラウド依存を減らせるのか、気になる点は尽きません。65億ドルを投じたジョニー・アイブのデザインが、スマートフォン以来の革新をもたらすのか、それとも時期尚早なコンセプトに終わるのか。9月発売の噂が本当なら、今年後半には答えが見えてきそうです。



































