YouTubeのCEOニール・モハンは1月21日、年次レターでクリエイターが自分自身の似姿を使用してShortsを作成できる新機能を発表した。
今年中に提供を開始する予定だ。この機能により、クリエイターはテキストプロンプトでゲームを制作したり、音楽を実験したりすることも可能になる。Shortsは現在1日平均2000億回の視聴回数を記録している。YouTubeは同時に、AI生成コンテンツにおける似姿の使用を管理する新しいツールもクリエイターに提供する。
一方で、昨年10月には資格のあるクリエイターに対して、顔や声などの似姿を特徴とするAI生成コンテンツを識別する似姿検出技術を展開済みだ。クリエイターはこの技術を使ってAI生成コンテンツの削除を要求できる。
YouTubeはまた、TikTokやInstagram Reelsで人気の画像投稿を含む新しいフォーマットでShortsを拡張する計画だ。
From:
YouTube will soon let creators make Shorts with their own AI likeness
【編集部解説】
YouTubeがクリエイター自身のAI似姿を使ったShorts制作機能を発表した背景には、OpenAIのSoraアプリが2025年9月に導入した「cameos」機能への対抗という側面があります。Soraでは既にユーザーが自分の似姿を登録し、テキストプロンプトだけでAI生成動画に自分を登場させることが可能になっています。
この技術革新が実現するのは、クリエイターの「時間からの解放」です。従来は撮影、照明、編集に何時間もかかっていた動画制作が、テキスト入力だけで完結する可能性があります。特に1日2000億回という膨大な視聴数を誇るShortsにおいて、量産体制を整えたいクリエイターにとっては魅力的なツールとなるでしょう。
しかし、ここには大きなジレンマが存在します。YouTubeは同時に「AIスロップ」と呼ばれる低品質なAI生成コンテンツとの戦いを宣言しており、クリエイター自身がAIツールで量産したコンテンツが、結果的にプラットフォームの品質を下げるリスクもあります。
注目すべきは、YouTubeが2025年10月から導入している似姿検出技術との連携です。この技術はクリエイターの顔や声を無断で使用したディープフェイク動画を検出し、削除要請を可能にします。つまり「自分のAI似姿は自分だけが使える」という権利保護の仕組みを先に整備した上で、今回の機能を展開する戦略です。
HeyGenやSynthesiaといった既存のAIアバター生成ツールと比較すると、YouTubeの強みはプラットフォーム統合にあります。外部ツールで生成してアップロードする手間が不要になり、Shorts用に最適化された縦型動画を直接生成できる点は、クリエイターのワークフローを大きく変える可能性があります。
長期的には、この技術はクリエイターエコノミーの民主化を進める一方で、「本物の人間が出演する動画」の希少価値を高めるという逆説的な効果も生むかもしれません。視聴者がAI生成コンテンツに慣れた時、生身の人間が汗をかきながら撮影した動画は、より高い信頼性と感情的な価値を持つようになるでしょう。
【用語解説】
Shorts(ショーツ)
YouTubeが提供する60秒以内の縦型短尺動画フォーマット。TikTokやInstagram Reelsに対抗して2020年に開始されたサービスで、スマートフォンでの視聴に最適化されている。
AIスロップ(AI slop)
AI生成による低品質で反復的なコンテンツを指す俗語。スパムやクリックベイトと同様に、プラットフォームの品質を低下させる要因として問題視されている。
ディープフェイク(Deepfake)
AIを使って人物の顔や音声を合成・置換する技術。本人の許可なく似姿を使用した偽動画を生成できるため、悪用のリスクが高い。
似姿検出技術(Likeness Detection Technology)
クリエイターの顔や声などの特徴をAIで識別し、無断使用されているコンテンツを検出する技術。YouTubeが2025年10月から資格のあるクリエイター向けに展開している。
クリエイターエコノミー
個人クリエイターがデジタルプラットフォーム上でコンテンツを制作・配信し、収益を得る経済圏のこと。YouTubeはその代表的なプラットフォームの一つである。
【参考リンク】
YouTube Shorts(外部)
YouTubeの短尺動画プラットフォーム。1日2000億回視聴されモバイルファーストの縦型動画フォーマットでクリエイター向けAIツールも充実
OpenAI Sora(外部)
テキストから動画を生成するAIモデルとアプリ。2025年9月リリースでユーザーの似姿を登録しAI動画に登場できるcameos機能搭載
HeyGen(外部)
AIアバター生成ツールの代表的サービス。顔写真から話すアバターを作成しテキストや音声入力で動画を生成できる企業向けツール
【参考記事】
YouTubers will be able to make Shorts with their own AI likenesses(外部)
The Verge報道。ニール・モハンCEOの年次レター基にYouTubeのAI似姿Shorts制作機能2026年導入を伝えAIスロップ対策にも言及
YouTube to match OpenAI with AI likeness feature(外部)
TechXplore記事。YouTubeの新機能がOpenAI Soraのcameos機能への対抗策と指摘し両プラットフォームの競争関係を分析
OpenAI is launching the Sora app, its own TikTok competitor(外部)
OpenAI Soraアプリ2025年9月ローンチ時の詳細を伝えるTechCrunch記事。ユーザーが似姿使いAI生成動画作成できる機能説明
YouTube’s AI ‘likeness detection’ tool is searching for deepfakes(外部)
2025年10月導入の似姿検出技術を報じるThe Verge記事。クリエイターの顔や声の無断使用ディープフェイク検出し削除要請可能にする仕組み解説
35 YouTube Shorts Statistics For 2026 (Growth & Trends)(外部)
YouTube Shortsの統計データまとめ記事。視聴回数ユーザー数収益化動向などShortsの成長トレンドを数値で示している
【編集部後記】
AIが自分の代わりに動画を作ってくれる未来は、私たちにとって解放なのでしょうか、それとも何か大切なものを失う瞬間なのでしょうか。クリエイターが時間を節約できる一方で、視聴者として私たちは「本物の人間が撮影した動画」にどれほどの価値を見出すようになるのか、興味深いところです。
あなたが好きなクリエイターのAI版が毎日投稿するようになったら、それを歓迎しますか?それとも、たまにしか投稿されない本人出演の動画を待ちたいですか?ぜひ皆さんの考えを聞かせてください。



































