Xプラットフォームの推薦アルゴリズムオープンソース化を進めるイーロン・マスクは、xAIチームが特定のトピックに焦点を当てたパーソナライズされた推薦ページの開発に取り組んでいることを明らかにした。
これらのページは、政治的バイアスを排除し、人工知能専用のページのように個々のユーザーの興味に合わせたコンテンツを提供する。
このイニシアチブは、自動的にフォローリストを生成し、品質に基づいてコンテンツをランキングする機能を備えている。
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イーロン・マスク、xAIチームのパーソナライズされた推薦ページに関する取り組みを発表
【編集部解説】
今回の発表は、2026年1月に進行中のXプラットフォームの推薦アルゴリズム改革の一環として位置づけられます。マスク氏は2026年1月10日、Xの推薦アルゴリズムを7日以内に完全オープンソース化すると発表し、1月20日に実際にGitHub上で公開しました。この動きは、EUのデジタルサービス法に基づく1億2000万ユーロの罰金を受けた後の透明性向上の取り組みの一部です。
公開されたアルゴリズムは、xAIのGrokモデルと同じTransformerアーキテクチャを使用しており、従来の手動で設計された機能やヒューリスティックルールをほぼすべて排除しています。システムは、ユーザーのいいね、リプライ、リポストなどのエンゲージメント履歴を分析し、15種類のエンゲージメントタイプを予測してコンテンツをランク付けします。
今回報じられた「パーソナライズされた推薦ページ」は、さらに一歩進んだ機能です。2026年1月17日、マスク氏はユーザーからの提案に対し、「プロンプト可能なアルゴリズム」の開発に取り組んでいると回答しました。これは、ユーザーが自然言語で「今日は政治の話題抜きで、最高のAIイノベーションだけを表示して」といった指示を出すことで、フィード内容を動的に調整できる機能です。
この技術は、単なるアルゴリズムの透明化を超えて、ユーザー主権の実現を目指しています。従来のソーシャルメディアでは、プラットフォーム側が決めたアルゴリズムに従うしかありませんでしたが、Grokの自然言語処理能力を活用することで、ユーザー自身がコンテンツキュレーションをコントロールできるようになります。
特定のトピックに特化したページの自動生成機能は、AI専用のページや特定の興味領域に焦点を当てたページを、政治的バイアスなしに提供することを目指しています。これにより、ユーザーは自分の専門分野や興味に応じた高品質なコンテンツに効率的にアクセスできるようになります。
技術的には、xAIのColossusスーパーコンピュータが毎日1億件以上の投稿を処理し、Grokがそれらをユーザーのエンゲージメントパターンに基づいて分析します。マスク氏は2025年9月時点で、11月までにアルゴリズムを「純粋なAI」にし、12月までにGrokに指示するだけでフィードを動的に調整できるようになると予告していました。
ただし、マスク氏の過去の約束には実現されなかったものも多く、2023年に公開されたTwitterの「For You」コードやGrok-1モデルのリポジトリは、その後ほとんど更新されていません。今回は4週間ごとの更新を約束していますが、この継続性が維持されるかどうかは不透明です。
この取り組みの潜在的なリスクとしては、ユーザーがエコーチェンバーに陥る可能性や、過度なパーソナライゼーションによって多様な視点との接触が減少する懸念があります。一方で、ユーザーが自分のフィードを完全にコントロールできることは、プラットフォームの操作に対する不満を軽減し、透明性を高める可能性があります。
競合他社への影響も注目されます。MetaやTikTokなどの他のプラットフォームも、EUのデジタルサービス法により透明性の向上を求められており、Xの動きが業界標準を変える可能性があります。
【用語解説】
Transformer
深層学習における注意機構(Attention Mechanism)を基盤としたニューラルネットワークアーキテクチャ。自然言語処理において革命的な進歩をもたらし、GPTやBERTなどの大規模言語モデルの基礎技術となっている。
エコーチェンバー
ソーシャルメディアやオンラインコミュニティにおいて、似た意見や信念を持つ人々が集まり、既存の見解が増幅され、異なる視点が排除される現象。情報の多様性が失われ、偏った認識が強化されるリスクがある。
ヒューリスティックルール
厳密な論理や証明ではなく、経験則や直感に基づいて問題を解決する手法。コンピュータサイエンスでは、完璧ではないが実用的な解を素早く得るために使用される。
EUデジタルサービス法(DSA)
2022年に欧州議会で可決された法律で、オンラインプラットフォームに対してコンテンツモデレーション、透明性、ユーザー保護などを義務付ける。違反した場合、企業の世界売上高の最大6%の罰金が科される。
【参考リンク】
xAI(外部)
イーロン・マスクが設立したAI企業でGrokチャットボットを開発。評価額は2300億ドルに達している。
GitHub – xai-org/x-algorithm(外部)
Xの「For You」フィードを支える推薦アルゴリズムのオープンソースリポジトリ。
Grok(外部)
xAIが開発した大規模言語モデルベースのチャットボット。リアルタイムのX投稿データにアクセス可能。
【参考記事】
Elon Musk’s X Open-Sources Recommendation Algorithm on GitHub(外部)
Xがコア推薦アルゴリズムをGitHubでオープンソース化しGrokモデルを活用した詳細を報じる。
X’s Promptable Algorithm: Musk’s Bid to Hand Users the Feed Controls(外部)
2026年1月17日のマスクの発言とプロンプト可能なアルゴリズムの開発について詳述。
X Open-Sources Its Recommendation Algorithm Built on Grok Transformers(外部)
2026年1月20日のアルゴリズムオープンソース化とTransformerアーキテクチャの詳細を解説。
Elon Musk Announces X’s Algorithm Open-Sourcing in 2026(外部)
2026年1月10日のマスクの発表と4週間ごとの更新約束について報じる。
Elon Musk Shocks with X’s Open-Sourced Recommendation Algorithm(外部)
GitHubで公開された推薦アルゴリズムの技術的詳細と6時間で1600スターを獲得した経緯を報告。
【編集部後記】
ソーシャルメディアのアルゴリズムが、これまでブラックボックスだった時代から、ユーザー自身がコントロールできる時代へと変わろうとしています。「今日は政治の話題を見たくない」「AI技術の最新情報だけ知りたい」といった、私たちの気分や目的に応じてフィードを調整できる未来は、情報との関わり方をどう変えるでしょうか。一方で、自分の見たい情報だけに囲まれることが、視野を狭めるリスクにもなり得ます。みなさんは、このようなパーソナライゼーションの進化をどう捉えますか。



































