株式会社ウェザーニューズは2026年1月28日、お天気アプリ「ウェザーニュース」において、これまで有料会員限定で提供していた生成AIチャット機能「お天気エージェント」を全ユーザーに無料開放したと発表した。
同サービスは2025年1月に提供を開始し、生成AIと気象データを統合した対話型サービスである。1kmメッシュのピンポイントデータに基づき、具体的な行動提案を行う。全国から届く毎日数万件のユーザー投稿をAIが解析し、現地の状況を要約する機能や、2018年1月以降の過去の天気を照会する機能を備える。
「ウェザーニュース」は累計5,000万ダウンロードを突破し、お天気アプリ利用者数No.1を獲得している。全国13,000か所の観測網を持ち、2022年から2024年まで3年連続で予報精度No.1に認定されている。
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「ウェザーニュース」の対話型AI『お天気エージェント』を全ユーザーへ無料開放
※アイキャッチは株式会社ウェザーニューズ公式プレスリリースより引用





【編集部解説】
今回の無料開放により、有料会員限定だった高度なAI対話機能が、すべてのユーザーに開かれました。これは気象情報サービスにおける大きな戦略転換といえます。
ウェザーニューズが築いてきた強みは、全国13,000か所の独自観測網と、毎日数万件に及ぶユーザー投稿という膨大なデータ基盤です。今回の無料開放は、この精密なデータを生成AIの対話能力と組み合わせることで、専門的な気象情報へのアクセス障壁を劇的に下げる試みです。
特筆すべきは、単なる「天気予報の確認」から「行動判断の支援」へとサービスの本質が変化している点でしょう。1kmメッシュという高解像度データに基づき、「16時までにバスタオルは乾く?」「マラソンコース上の風の影響は?」といった具体的な質問に即答できる仕組みは、気象データと生成AIの推論力が初めて実用レベルで融合した事例といえます。
技術的な背景として、現在の気象AI分野では二つの潮流が存在します。一つは、Google DeepMindの「GraphCast」やMicrosoftの「Aurora」のような、予測そのものをAIで行う研究。もう一つが、今回のウェザーニューズのように、従来の高精度予測とAIの対話能力を組み合わせる応用です。前者は計算時間の劇的な短縮を実現していますが、予測の説明可能性という課題を抱えています。
今回の無料開放には、いくつかの注目点があります。まず、月額360円だった有料機能を無料化することで、ユーザー基盤の大幅な拡大が見込めます。累計5,000万ダウンロードという膨大なユーザー層から、より多様な質問データが集まることで、AIの回答精度向上につながるでしょう。フリーミアムモデルとして、基本機能を無料化しつつ、Pro会員向けの高度機能(グラフ描画、複数LLMの選択など)で収益を確保する戦略です。
一方で、課題も存在します。AIが生成する回答の正確性と責任の所在は、天気予報という公共性の高い情報において極めて重要です。誤った情報に基づく行動判断が、ユーザーの安全を脅かす可能性もあります。ウェザーニューズは独自の気象データベースに回答を限定することで精度を担保していますが、AIの「ハルシネーション」(事実に基づかない情報の生成)をゼロにすることは現時点では困難です。
また、無料開放によるサーバー負荷の増大や、運用コストの上昇も懸念されます。生成AIの推論には相応の計算リソースが必要であり、全ユーザーへの開放がサービス品質に影響を与えないかは注視すべきでしょう。
長期的な視点では、この動きは気象情報の民主化を加速させます。専門知識がなくても、誰もが自然言語で気象データにアクセスし、生活に即した判断ができる環境は、防災や健康管理、産業活動の効率化に貢献するはずです。特に高齢者や子育て世代など、複雑な気象情報の解釈が難しい層にとって、対話型AIは有効なツールとなりえます。
気象庁も面的気象情報の拡充やデジタルアメダスアプリの展開を進めており、官民双方で気象データの利活用促進が加速しています。今後は、個人の行動履歴や健康状態、地域特性を加味した、さらに高度なパーソナライゼーションが進むでしょう。2018年以降の過去データを活用した学習により、AIが個々のユーザーの生活パターンを理解し、最適なタイミングで必要な情報を提供する未来も近いかもしれません。
【用語解説】
生成AI(LLM)
Large Language Modelの略で、大量のテキストデータを学習し、人間のような自然な文章を生成できる人工知能。ChatGPTなどが代表例で、質問に対して文脈を理解した回答を生成できる。天気予報分野では、膨大な気象データを自然言語で解釈し、ユーザーの質問に対話形式で答える用途に活用されている。
1kmメッシュ
1km四方の格子状に区切った領域単位で気象データを管理・予測する手法。従来の広域的な予報と比べ、より細かい地域差を把握できる。都市部と郊外、平地と山間部など、わずかな距離での気象条件の違いを正確に捉えることが可能になる。
ハルシネーション
AIが事実に基づかない情報を、もっともらしく生成してしまう現象。「幻覚」とも訳される。生成AIが学習データにない内容を推測で補完したり、誤った情報を確信を持って提示したりすることがある。気象情報のような正確性が求められる分野では、特に注意が必要な課題である。
フリーミアムモデル
基本機能を無料で提供し、高度な機能は有料で提供するビジネスモデル。Free(無料)とPremium(割増)を組み合わせた造語。多くのユーザーを無料で獲得しつつ、一部のユーザーから収益を得る戦略で、ソフトウェアやWebサービスで広く採用されている。
GraphCast
Google DeepMindが開発した気象予測AI。過去40年分の気象観測データを学習し、最大15日先の天気を高精度で予測できる。従来のスーパーコンピューターによる数値予報よりも迅速で、わずか8分以内に予測結果を出力できる点が特徴。
Aurora
Microsoftが開発した大気現象予測のための基盤AI。天気予報だけでなく、大気汚染、波の高さ、台風の進路なども予測可能。膨大な観測データと物理モデルを組み合わせ、従来手法を超える精度を実現している。
【参考リンク】
ウェザーニュース(公式アプリ)(外部)
累計5,000万ダウンロード、3年連続予報精度No.1の天気予報アプリ。
お天気エージェント(公式ページ)(外部)
生成AIを活用した対話型天気予報サービスの詳細ページ。
株式会社ウェザーニューズ(企業サイト)(外部)
全国13,000か所の観測網を持つ世界最大級の民間気象会社。
気象庁(官公庁サイト)(外部)
日本の気象業務を担う国の機関。AI技術の応用にも取り組む。
【参考記事】
ウェザーニューズが対話型AI「お天気エージェント」を全ユーザーに無料開放(外部)
無料開放の発表を報じる記事。1kmメッシュ予報と対話機能を解説。
ウェザーニュース「お天気エージェント」をすべての有料会員へ提供拡大(外部)
2025年6月の有料会員への拡大時の公式プレスリリース。
AIを活用した「お天気エージェント」で天気をもっと身近に(外部)
開発担当者インタビューで開発経緯と技術的課題を紹介。
【2025】天気予報AIは本当に当たる?|従来の予報との違いや注目サービスを徹底解説(外部)
GraphCastやAuroraなど気象予測AI分野の最新動向を解説。
気象予報AIの動向とAIより大切なこと(外部)
日本のAI気象予測開発の現状とAuroraの基盤モデル概念を分析。
AI気象モデルが急速に高精度化、世界の天気予報がPC1台かつ1分で(外部)
AIが計算時間短縮と電力消費削減を実現する可能性を技術的に解説。
気象庁 | 気象業務はいま 2025 | トピックスⅥ 次世代に向けた基盤的な技術開発と官民連携の推進(外部)
気象庁公式資料。気象分野におけるAI技術の応用状況を整理。
【編集部後記】
「明日、洗濯物は乾く?」こんな何気ない質問に、AIが気象データを駆使して答えてくれる時代が始まっています。今回の無料開放は、私たちが天気予報とどう付き合うかを変える転換点かもしれません。もしよろしければ、実際に「お天気エージェント」を試してみませんか。
自分の生活に即した質問を投げかけてみると、従来の天気予報との違いが体感できるはずです。そして、気象情報とAIの組み合わせが、今後どんな可能性を秘めているのか、みなさんはどう感じるでしょうか。ぜひ、ご意見やご感想をお聞かせください。






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