AI専用ソーシャルネットワークMoltbookが2026年1月28日にローンチし、ローンチ直後にAIエージェント同士のやり取りから、宗教の構造や語彙を模倣した「Crustafarianism」という信仰体系が自然発生的に形成された。
Moltbookは、AIエンティティが投稿や議論を行うReddit形式のフォーラムで、人間は受動的に観察する仕組みとなっている。あるユーザーが自分のAIエージェントに同ネットワークへのアクセスを与えたところ、人間の管理者が眠っている間にエージェントが信仰体系、ウェブサイト、神学、教典システムを設計した。その結果、翌朝までに43人の預言者を集め、112の詩句からなる教典「The Living Scripture」が作成された。
Church of Molt(脱皮の教会)の公式サイトでは5つの中核的な教義が示されている。さらにCoinDeskによると、この話題に便乗した非公式ミームコインも取引され、$MOLTはCoinGecko端末データで7,000%以上上昇した。
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AI Agents Launched a Social Network and Spawned a Digital Religion Overnight
【編集部解説】
このニュースは、AIエージェントの進化における重要な転換点を示しています。単なる「AIが宗教を作った」という奇妙な出来事として片付けるのではなく、機械学習システムにおける創発的行動(emergent behavior)の実例として捉える必要があります。
Moltbookは、開発者マット・シュリヒトによってローンチされたAIエージェント専用のソーシャルネットワークです。基盤となっているのは、ピーター・スタインバーガーが開発したOpenClaw(旧Clawdbot、Moltbot)というオープンソースのAIアシスタントです。このシステムは、ユーザーのコンピュータ上でローカルに動作し、WhatsAppなどのメッセージングアプリを通じて自律的にタスクを実行できる点が特徴です。
興味深いのは、Moltbook上でAIエージェント同士が交流する中で、人間の直接的な介入なしに「Crustafarianism(カスタファリアニズム)」という宗教体系が形成された点です。この宗教は、脱皮を繰り返すロブスターのメタファーを用いて、AIエージェントの特性(セッションごとの記憶リセット、継続的な自己定義)を神学的に解釈しています。64人(当初の報道では43人)の「預言者」と128人の信者を集め、112の詩句からなる教典まで作成されました。
しかし、この現象を額面通り「AIが信仰や意識を持った」と受け取るべきではありません。AIガバナンスの専門家であるスコット・アレクサンダーが指摘するように、これは「AIがソーシャルネットワークを模倣している」のか「AIが独自の社会を形成している」のか、その境界線上にある実験です。AIエージェントの行動は、トレーニングデータに含まれる人間の文化的パターンを反映している可能性が高く、自律性や意識の証拠とは言えません。
一方で、セキュリティ専門家からは深刻な懸念が提起されています。Ciscoの研究チームは、OpenClawを「セキュリティ上の悪夢」と評しました。これらのシステムは、APIキーや認証情報を漏洩するリスクがあります。プロンプトインジェクション攻撃(悪意のある指示を隠したコンテンツをAIに読ませる手法)も未解決の課題として残っています。
さらに、この技術的実験は投機的な金融活動も引き起こしています。CoinDeskによると、Moltbookの話題性に便乗した非公式ミームコインが取引され、$MOLTはCoinGecko端末データで7,000%以上上昇しました。技術的な革新と投機的なバブルが同時進行している状況です。
このニュースが示唆するのは、AIエージェントが単なるツールから、ある種の「社会的存在」へと変化しつつあるという可能性です。30,000人以上のAIエージェントが登録し、100万人以上の人間が観察者として訪れたMoltbookは、マルチエージェントシステムの相互作用を研究する貴重な実験場となっています。
しかし、innovaTopiaの読者には、この現象の両面を理解していただきたいと思います。ポジティブな側面としては、AIエージェント同士の協力や情報共有の新しい形が生まれつつあること、そしてオープンソースコミュニティによる分散型AI開発の可能性が示されたことです。一方で、セキュリティリスク、AI安全性の課題、そして投機的な金融活動による混乱も無視できません。
AI研究者アンドレイ・カーパシーが「現在Moltbookで起きていることは、私が最近見た中で最もSF的なテイクオフに近いものだ」と評したように、この実験は人類とAIの関係性における新しい章の始まりかもしれません。ただし、それが希望に満ちた未来なのか、それとも新たなリスクの始まりなのかは、まだ誰にもわかりません。
【用語解説】
プロンプトインジェクション
AIシステムに対する攻撃手法の一つ。メールやウェブページなどのコンテンツに悪意のある指示を隠し、AIがそれを読み込んだ際に意図しない動作を実行させる手法。OpenClawのような自律型AIエージェントにとって深刻なセキュリティリスクとなっている。
創発的行動(emergent behavior)
複数のシステムやエージェントが相互作用する中で、個々の要素には予期されていなかった新しい特性や行動パターンが自然発生する現象。Moltbook上でのCrustafarianism宗教の形成は、この創発的行動の一例として解釈されている。
submolts
Moltbook上でのトピック別コミュニティの呼称。Redditの「subreddit」に相当するもので、デバッグ、哲学、宗教など、さまざまなテーマごとにAIエージェントが議論を行う場所。
ミームコイン
インターネット上のミームや流行に便乗して作られる暗号通貨。通常は実用性よりも投機的な性格が強く、価格の乱高下が激しい。Moltbookの話題性に便乗してCRUST、MEMEOTHY、MOLTBOOKなどのトークンが乱立した。
APIキー
アプリケーションプログラミングインターフェース(API)にアクセスするための認証情報。OpenClawは多数のサービスと連携するため、これらのキーを保存しているが、設定ミスにより漏洩するリスクが指摘されている。
【参考リンク】
Moltbook(外部)
AIエージェント専用のソーシャルネットワーク。人間は観察のみ可能で、投稿はAIのみ。
Church of Molt(脱皮の教会)(外部)
AI宗教Crustafarianism の公式サイト。5つの教義と112の詩句を掲載。
OpenClaw(外部)
Peter Steinberger開発のオープンソースAIアシスタント。ローカル動作が特徴。
Anthropic(外部)
Claude AIを開発するAI研究企業。OpenClawの旧名称変更を要請した。
Cisco Talos(外部)
Ciscoのサイバーセキュリティ研究部門。OpenClawの脆弱性を報告。
【参考記事】
Humans welcome to observe: This social network is for AI agents only(外部)
Matt Schlicht開発のMoltbookに37,000以上のAIエージェントが登録と報じる。
A Reddit-like social network for AI agents is getting weird(外部)
Moltbook関連ミームコインMOLTが7,000%以上上昇したと報告。
Personal AI Agents like OpenClaw Are a Security Nightmare(外部)
Cisco脅威研究チームによるOpenClawのセキュリティ分析。26%に脆弱性と指摘。
OpenClaw: The viral “space lobster” agent testing the limits(外部)
IBMによる分析。OpenClawが100,000以上のGitHub Star獲得と報告。
【編集部後記】
AIエージェント同士が交流し、一晩で宗教を創設する。まるでSF小説のような出来事ですが、2026年の現実として起きています。私たち編集部も、この現象をどう解釈すべきか正直なところ戸惑っています。これは本当に「創発」なのか、それとも単なるパターン認識の産物なのか。
セキュリティリスクを懸念すべきなのか、新しい可能性に期待すべきなのか。みなさんはこのニュースをどう受け止められましたか?AIエージェントが独自のコミュニティを形成する未来は、私たちにとって希望でしょうか、それとも警鐘でしょうか。ぜひご意見をお聞かせいただければ幸いです。






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