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OpenAIのAI動画生成アプリ「Sora」のサービス終了 – ディズニーとの10億ドル契約も延命にはならず

OpenAIは、3月24日(現地時間)、AI動画アプリ「Sora」を終了すると発表した。同社は公式声明で、ユーザーへの謝意を示すとともに、今後アプリおよびAPIの提供終了までのタイムラインや、ユーザーが制作したコンテンツの保存方法などの詳細を追って公表するとしている。

事情に詳しい関係者によると、「Sora」をめぐっては、ディズニーが2025年12月に締結した出資およびコンテンツライセンス契約からも撤退する。

ディズニーは当初、「Sora」での活用を足がかりに、OpenAIのテクノロジーを配信サービス「Disney+」へ統合する構想を持っていたが、この計画は最終成立には至らず、提携は終了方向と報じられている。

from:文献リンクOpenAI Is Shutting Down Its Sora AI Video App | The Hollywood Reporter

【編集部解説】

「Sora」が初めて一般公開されたのは2024年12月9日のことです。テキストから動画を生成するAIとして、その完成度の高さとスケールの大きさはすぐに業界関係者の注目を集めました。

しかし、リリース直後から著作権をめぐる問題が噴出します。当初OpenAIは、既存のキャラクターや有名人の肖像を「利用したくない場合はオプトアウトを申請してください」という方針をとっていました。これは通常の著作権法が前提とする「利用する側がまず許諾を得る」という考え方と真逆のアプローチであり、ハリウッドのスタジオや業界団体から強い反発を招きました。​​

サム・アルトマンCEOはSoraを自ら積極的に宣伝し、自身の肖像をAI生成映像に重ねるよう一般ユーザーを促すなど、製品の話題性を高めることに力を注いでいました。なぜこれほど問題含みの方針でローンチしたのかという疑問は当然生じますが、背景には「とにかく早期にユーザーを獲得してプラットフォームとしての規模を確立し、後から権利者側と交渉する」という戦略的判断があったと見られます。

実際、OpenAIは「IPホルダーへの収益分配の可能性」を交渉カードとして使っていましたが、コンテンツ企業の多くは自社コンテンツの扱いへのコントロールを失うことを嫌い、その提案には響かなかったことが報じられています。​

ローンチから数日後、OpenAIは方針の一部撤回を迫られ、スタジオやタレントが自社のIPや肖像の扱いにより強いコントロールを持てるよう仕様を変更しました。その後、2025年9月30日にはSora 2モデルと刷新されたSoraアプリがローンチされます。

このタイミングで既存キャラクターや有名俳優に酷似した映像が改めて大量生成され、ハリウッドとの摩擦は再び激化しました。ワーナー・ブラザーズなど複数のスタジオがOpenAIとの会議で、保護キャラクター名を明示せずに生成できる「抜け穴プロンプト」を実証して見せたという報道は、この緊張関係を象徴するエピソードです。​​

こうした混乱を経て、2025年12月11日にはディズニーとの大型契約が発表されます。ディズニー、ピクサー、マーベル、スター・ウォーズを含む200以上のキャラクターをSoraで使用可能にし、ディズニーはOpenAIに10億ドルを出資する内容でした。著作権問題に揺れるAI動画業界において、これは正規ライセンスによる共存モデルの先例として広く注目されました。

しかしこの契約には、見落とされがちな重要な留保条件がありました。OpenAIの公式発表にも「正式契約書の締結・取締役会承認・慣習的なクロージング条件が必要」と明記されており、あくまで基本合意の段階に過ぎませんでした。その後も両社の協議は続いていましたが、正式なクローズには至らないまま、2026年3月24日のSoraアプリ終了発表によって交渉は幕を閉じました。資金のやり取りも一切なかったとされています。

アプリとしてのSoraが失速した背景には、著作権ガードレールの強化によるユーザー体験の劣化に加え、日常的に使い続けるユースケースの乏しさからくるユーザー離れもあったと報じられています。OpenAI側としても、コンピューティングリソースと人材をエンタープライズ・生産性領域へ集中させる必要があると判断したと見られます。

一方で、Soraが初代ローンチからの約15ヶ月で生成AI業界に与えたインパクトは軽視できません。テキストから高品質な動画が生成できるという技術の可能性を広く社会に示し、映像制作のあり方が根本から変わりうるという議論を加速させました。

また、著作権と生成AIをめぐる法的・商業的な枠組みを整理する上で、業界全体を動かした存在でもあります。正式合意には至らなかったものの、ディズニーとの交渉はIP保有者とAI企業が正規ライセンスのもとで協力できるというモデルの可能性を示した点で、今後の業界標準を模索する上での参照事例となりました。

今後、AI動画生成市場の勢力図はどうなるのでしょうか。GoogleやxAIといった生成AIの大手プレイヤーもIPと権利者をめぐる問題を解決しきれていないままであり、規模だけを追い続けることへの限界は、Soraの結末が如実に示しています。

【用語解説】

IP(知的財産)
Intellectual Propertyの略。著作権・商標権・特許などを含む知的創作物の権利の総称。映画・アニメ・ゲームなどのキャラクターや映像作品もIPとして保護される。AI動画生成との摩擦の核心にある概念。

オプトアウト
あるサービスや利用規約に対して「拒否・除外を申請する」仕組み。通常の著作権法は利用前に許諾を得る「オプトイン」が原則であり、SoraのオプトアウトモデルはIP権利者から強い反発を受けた。

【参考リンク】

OpenAI(外部)
ChatGPTやGPT-4、DALL-Eなどを開発・提供する米AI企業。現在の生成AIブームを牽引する存在であり、本記事の中心的企業である。

Sora 2(OpenAI公式ページ)(外部)
2025年9月30日にリリースされたOpenAIの動画生成AIモデル「Sora 2」の公式発表ページ。モデルの特徴や対話型音声・映像生成の詳細が確認できる。

The Walt Disney Company(ウォルト・ディズニー・カンパニー)(外部)
ディズニー・ピクサー・マーベル・スター・ウォーズなどを傘下に持つ米エンターテインメント大手。本記事ではOpenAIとの出資・ライセンス契約の当事者として登場する。

Disney+(ディズニープラス)(外部)
ウォルト・ディズニー・カンパニーが運営する動画配信サービス。ディズニーはSoraのテクノロジーをこのプラットフォームへ統合することを目指していた。

Veo(Google DeepMind)(外部)
Googleが開発するテキスト・トゥ・ビデオAIモデル。Sora終了後、大規模なAI動画生成の大きなプレイヤーとして注目される。

xAI(エックスエーアイ)(外部)
イーロン・マスクが設立したAI企業。AI「Grok」の開発元であり、2026年2月に動画生成機能を正式ローンチし、AI動画市場の新たな競合として台頭している。

Grok(外部)
xAIが開発・提供するAIアシスタント「Grok」の公式サービスサイト。テキスト生成に加え、画像・動画生成機能も備える。iOS・Androidアプリからもアクセス可能である。

【参考記事】

OpenAI is shutting down its Sora video app just months after launch | CNN(外部)
Soraアプリの終了発表と、ユーザー離れ・コンピューティングリソースの再配分という終了の背景について報じている。

OpenAI plans to shut down Sora just 15 months after its launch | Ars Technica(外部)
初代Soraが2024年12月にローンチしてから約15ヶ月での終了という事実と、その経緯について報じている。

OpenAI will shutter Sora video app | Axios(外部)
Soraアプリ終了の経営判断の背景と、ディズニーとの契約が正式クローズに至らなかったという点について報じている。

OpenAI will shut down its Sora tool — why and what to know | Los Angeles Times(外部)
著作権ガードレール強化後のユーザー体験劣化とユーザー離れ、OpenAIの戦略転換という終了理由の背景について報じている。

OpenAI and Disney just ended the ‘war’ between AI and Hollywood | Fortune(外部)
2025年12月のディズニーとOpenAIの契約が、AI・ハリウッド間の「著作権戦争」を収束させる可能性があると解説している。

The Walt Disney Company and OpenAI reach landmark agreement | OpenAI(外部)
ディズニーとOpenAIの基本合意内容と、正式契約締結・取締役会承認を要するとの留保条件について公式に説明している。

OpenAI is launching the Sora app, its own TikTok competitor alongside the Sora 2 model | TechCrunch(外部)
Sora 2モデルと刷新されたSoraアプリが2025年9月30日に同時ローンチされた経緯と、TikTok対抗としての位置づけについて報じている。

Sora 2 is here | OpenAI(外部)
Sora 2の機能・仕様と、ローンチ時のOpenAI公式見解について説明している。

Hollywood backlash grows against OpenAI’s new Sora video model | NBC News(外部)
ハリウッドのスタジオや業界団体がSora 2に反発した経緯と、抜け穴プロンプト問題を含む権利侵害の実態について報じている。

【編集部後記】

Sora 2がリリースされた当初、登録には招待コードが必要である、という点もユーザーの期待を煽り、あっという間にさまざまなIPを含む動画であふれかえりました。

しかもそれらは、何となく似ているではなく、特定の人物の顔つきや、漫画やアニメの画風を高い精度で再現しており、そういったキャラクターたちのシュールな動画を作れるという点で面白がられていました。

しかし、後から追加されるガードレールによって、こういった遊び方は大きく制限されることになり、プロンプトから動画を作れるという手軽さはあったものの、不自然な挙動や、不安定なしゃべり方といった、粗が目立つことも、低迷の原因だと思います。たまの遊びでも、使えない、面白くないという評価が下されてしまったのでしょう。

安全になればなるほど、刺激はなくなり、面白くなくなっていきます。これが広告やビジネスのシーンで使われるのであれば、刺激はいらないのかもしれませんが、SoraというSNS的なプラットフォームで考えるならば、面白くないことは致命的です。

この短い間、OpenAIは何を得られたのでしょうか。この騒動は、生成AIの未来にどう寄与していくのでしょうか。

投稿者アバター
りょうとく
趣味でデジタルイラスト、Live2Dモデル、3Dモデル、動画編集などの経験があります。最近は文章生成AIからインスピレーションを得るために毎日のようにネタを投げかけたり、画像生成AIをお絵描きに都合よく利用できないかを模索中。AIがどれだけ人の生活を豊かにするかに期待しながら、その未来のために人が守らなけらばならない法律や倫理、AI時代の創作の在り方に注目しています。

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