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Suno v5.5、自分の声で音楽を作る時代へ—Voices・カスタムモデル・My Taste正式リリース

[更新]2026年3月28日

「歌が得意じゃないから」——そう言って、ずっと音楽から距離を置いてきた人は多い。でも、あなたの声はすでに、最高の楽器だ。AIによる音楽生成がここまで来た今、その言い訳は、もう通用しなくなるかもしれない。Sunoが2026年3月26日にリリースした「v5.5」は、ユーザー自身の声をAIモデルに宿す機能「Voices」を中心に据え、音楽制作の主役を”技術”から”あなた”へと大きくシフトさせた。単なるバージョンアップではない。これは、音楽と人間の関係を再定義する一手だ。

今回発表された三つの新機能——Voices(自分の声で楽曲を作る)、カスタムモデル(自分のスタイルをAIに学習させる)、My Taste(AIが好みを自動学習する)——はいずれも、「より高品質な音楽を生成する」ではなく、「より”あなたらしい”音楽を生成する」ことに特化している。


Sunoは2026年3月26日、新モデル「Suno v5.5」をリリースした。同時に3つの新機能、Voices、カスタムモデル、My Tasteを発表した。

Voicesはコミュニティから最も多くリクエストされていた機能で、ProおよびPremierサブスクライバーが利用できる。本人確認プロセスを備え、ユーザーの声はプライベートに管理される。カスタムモデルは、ユーザーが自身の楽曲をアップロードすることでv5.5を調整できる機能で、ProおよびPremierサブスクライバーは最大3つまで作成可能だ。My Tasteは全ユーザーが利用できるパーソナライゼーション機能である。同社は今年後半に音楽業界と共同で次世代の音楽モデルをリリースする予定だと明らかにした。

From: 文献リンクSuno v5.5: More Expressive. More You. – Suno

【編集部解説】

Suno v5.5が提示する最大の問いは「AIと人間、どちらが音楽の主役か」というものです。今回のアップデートで最も注目すべきは、技術の進化そのものより、Sunoという企業の哲学の転換にあります。これまでのバージョンが「より高品質な音楽を生成すること」を目指していたとすれば、v5.5は「生成される音楽がより”あなた”らしくなること」へと、開発の重心が明確にシフトしました。

三つの新機能のうち、最も根本的なインパクトを持つのがVoicesです。これはユーザー自身の歌声をAIモデルに組み込む機能であり、技術的には「本人確認つきの音声クローニング」と呼べるものです。声紋の保護やプライバシー管理への配慮が施されている点は評価できますが、同時に慎重に見るべき側面もあります。

法的な文脈では、Sunoはいまだ訴訟リスクを抱えています。2024年6月、主要レーベル3社(UMG、Sony、WMG)およびRIAAがSunoとUdioを著作権侵害で提訴し、2025年11月にWMGはSunoと和解・パートナーシップへ転換しました。しかし、UMG v. Sunoは現在も係争中であり、Sony Musicはいまだ和解に至っていません。さらに、ドイツの著作権管理団体GEMAもSunoを訴えており、2026年6月12日に判決が予定されています。欧州の司法判断がグローバルなプラットフォームポリシーに影響を与える可能性は十分あります。

ユーザー視点での重要な注意点もあります。Sunoの現行ヘルプでは、無料プランで作成した楽曲はSuno側に帰属し、Pro・Premier加入中に作成した楽曲はユーザーが所有できると整理されています。ただし、所有できることと、著作権として保護されることは同じではありません。AI生成の度合いが高い楽曲については、国や制度によって著作権保護の扱いが不確実な場合があるため、商用利用を考えるクリエイターは最新の利用規約と権利ガイドを確認する必要があります。

一方で、競合との争いも激化しています。Google DeepMindは、Suno v5.5の前日である2026年3月25日に最新のAI音楽システム「Lyria 3 Pro」を発表しており、AI音楽生成をめぐる競争の加速が鮮明になっています。GoogleはLyria 3 Proについて、より細かな構成制御やクリエイティブコントロールを重視したモデルとして紹介しています。

v5.5が打ち出す「人間起点の音楽」というコンセプトは、AI音楽に対するパブリックの不信感——「AIが人間のアーティストを代替するのではないか」という懸念——を和らげる狙いも含んでいると読み取れます。WMGとのパートナーシップを背景に、今年後半に予告されている「音楽業界との共同次世代モデル」が実現すれば、AIと既存音楽産業の関係は対立から共存へと本格的に移行するでしょう。その成否が、AI音楽の未来を左右する分水嶺になります。

【用語解説】

音声クローニング(Voice Cloning)
ユーザーの声の特徴(音色、ピッチ、ビブラートなど)をAIが学習・再現する技術。Sunoのボイス機能はこの技術を応用している。他者の声を無断でクローニングすることは、各国で法的リスクを伴う。

RIAA(Recording Industry Association of America)
全米レコード協会。アメリカの音楽業界を代表する業界団体で、著作権保護や音楽の商業的利益の擁護を主な活動としている。2024年のSunoへの訴訟にも加わっている。

パーソナライゼーション
ユーザーの好みや行動履歴に基づいて、サービスや体験を個人に最適化すること。今回のMy TasteやカスタムモデルはいずれもAI音楽生成におけるパーソナライゼーションの実装例だ。

【参考リンク】

Suno(外部)
AIを活用した音楽生成プラットフォーム。テキストプロンプトから楽曲を生成でき、Pro・Premierなど複数のプランを提供している。

Warner Music Group(WMG)(外部)
世界三大メジャーレーベルの一つ。2025年11月にSunoと和解・パートナーシップ契約を締結し、AI音楽モデルの共同開発へ移行した。

Universal Music Group(UMG)(外部)
世界最大の音楽会社。2024年にSunoを著作権侵害で提訴。2026年3月時点で訴訟は係争中。Udioとは2025年10月に和解している。

Sony Music Entertainment(外部)
世界三大メジャーレーベルの一つ。SunoおよびUdioとの訴訟は2026年3月時点で和解に至らず、引き続き法廷で争っている。

GEMA(外部)
ドイツの著作権管理団体。Sunoに対して訴訟を起こしており、2026年6月12日に判決が予定されている。

Google DeepMind(外部)
GoogleのAI研究部門。2026年3月25日にAI音楽システム「Lyria 3 Pro」を発表し、AI音楽市場の競争激化を印象づけた。。

【参考動画】

【参考記事】

Suno Launches Version 5.5 With New ‘Voices’ Feature(外部)
音楽業界専門メディアDigital Music Newsによるv5.5レポート。GoogleのLyria 3 Proとの同日リリースを取り上げ、AI音楽市場の競争激化を指摘している。

AI Voice Cloning Music 2026: Essential Producer’s Guide(外部)
Sonarworksによる2026年のAI音声クローニング動向まとめ。WMG・UMGの和解やSunoの年間収益など、数値を交えた業界動向を詳述している。

AI Music Copyright: What You Need to Know in 2026(外部)
jam.comによる著作権解説記事。GEMA訴訟の判決予定日やSuno利用規約改定など、法的リスクを多角的に整理している。

Warner Music Strikes AI Deal with Suno for Artist Voice Cloning(外部)
WMGとSunoのパートナーシップ詳細を報じた記事。オプトイン制度の仕組みや訴訟から協業へ転じた経緯を解説している。

【関連記事】

SunoがWarner Musicと歴史的契約、AI音楽は民主化かディストピアか——$250M調達の舞台裏
v5.5リリースの背景にあるWMGとの提携と資金調達の文脈を詳述。本記事の編集部解説と直接つながる内容。

Warner Music GroupとSunoがAI音楽で提携──アーティストの声とライクネスをどう守り、どう稼ぐか
WMGとSunoの提携の詳細。Voices機能の法的背景を理解するうえで不可欠な前提記事。

Geminiアプリに音楽生成AI「Lyria 3」搭載 ─ 全ユーザーへ展開開始
Suno v5.5公開前後のタイミングで注目を集めたLyria 3系統の前身記事。AI音楽市場の競合状況を把握する文脈として有効。

ACE-Step v1.5リリース:Sunoを超える性能のオープンソースAI音楽生成モデル
AI音楽生成の競争環境を示す記事。オープンソース勢の台頭というSunoを取り巻く状況として参照可能。

Suno Udio:音楽業界大手がAI音楽生成ツールを提訴:著作権侵害の疑いで
RIAAによる提訴の経緯を詳述。今回の編集部解説における法的背景の出発点となる記事。

【編集部後記】

あなたは自分の声で、どんな音楽を作ってみたいですか?

「歌が得意じゃないから」と、ずっと音楽から距離を置いてきた人にこそ、今回のアップデートは刺さるかもしれません。私たちも、AIと音楽の関係がこれほど急速に変わるとは、正直驚いています。ぜひ、あなたの感想や期待していることを聞かせてください。

投稿者アバター
TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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