ビットコインは2025年12月11日時点で一時9万ドルを割り込んだ後、約$90,244で推移し、24時間で2.8%下落している。 ナスダック先物は0.80%下落し、FRBの利下げ決定後もリスクオフ姿勢が強まる展開となった。
同日発表されたOracleの2026会計年度第2四半期(期末2025年11月30日)決算では、総収入がコンセンサスをやや下回り、レガシーソフトウェアと新規ライセンス販売が弱含んだ。 The Financial Timesなどの報道によれば、Oracleはデータセンター投資計画を$15 billion積み増し、長期負債は$99.6 billionと前年比25%増加している。
クラウドインフラ収入は$4.1 billionと市場予想を下回り、Morgan Stanleyは同社のネットデットが2028年までに約$290 billionへ拡大すると予測している。 これを受けてOracle株は時間外取引で10%超下落し、AI関連株や暗号資産市場全体にも弱気なセンチメントが広がった。
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BTC, Nasdaq Futures Drop as Oracle Earnings Revive AI Bubble Fears
【編集部解説】
今回の動きを一言で表現すると、「金利よりもAIインフラの現実に市場が敏感になった日」と言えるかもしれません。 FRBの利下げという一見ポジティブなイベントがありながら、ビットコインとナスダック先物がそろって下落した背景には、Oracle決算をきっかけにAIバブル懸念が再燃したことが重なっています。
ここ数年、OracleはAIデータセンター分野で存在感を高め、OpenAIなどとの協業で「AI時代のインフラ銘柄」として注目されてきました。 しかし今回明らかになったのは、売上成長が予想に届かない一方で、データセンター投資と長期負債が急膨張しているという構図です。 AI向けGPUクラスターや大規模データセンターを、巨額のデットファイナンスによって前倒しで建設するモデルが、本当にキャッシュフローで回収できるのかという問いが、ようやく具体的な数字を伴って突きつけられた形です。
この「AIインフラの現実チェック」は、暗号資産市場にも波紋を投げかけています。ビットコインとハイテク株、とくにナスダック100との相関が高まっている2025年の相場環境では、Oracleのような個別決算ショックがテック全体のリスクオフを誘発し、その延長線上でBTCが売られるという連鎖が起こりやすくなっています。 AI関連株と暗号資産が「高ベータ資産」として同じバスケットに入れられ、マクロイベントや決算ニュースをトリガーに一括でリスク調整されているイメージです。
一方で、クレジット市場の反応を見ると、「ショック」ではあるものの「即座に破綻リスクが高まった」というレベルではない点も重要です。 Oracleの5年物CDSスプレッドは2022年以来の水準まで上昇したものの、年率1.93%、5年累積で9%程度のデフォルト確率を織り込む水準とされており、あくまでリスク再評価のフェーズと読むこともできます。 AIインフラ投資と負債の増加に対して、市場がより厳しい目でバランスシートとキャッシュフローを精査し始めた、というのが今回の本質に近いでしょう。
このニュースのポイントは「AIバブルかどうか」を断じることではなく、「どのレイヤーにリスクが集中しているのか」を見極める視点にあります。 巨大モデルを動かすためのGPUとデータセンター、そこに資金を供給する債券・ローン市場、その上でサービスを展開するSaaSやアプリケーション層、そしてそれらと相関を強めつつあるビットコインのようなデジタル資産――それぞれがどのようにリンクし、どこで歪みが生まれているのかを意識することで、より立体的に見えてきます。
長期的には、AIインフラの所有構造と負債構造が、テクノロジーの民主化にどんな影響を与えるのかも重要な論点です。 少数の巨大プレイヤーがレバレッジを効かせてインフラを独占する世界と、分散型の計算・ストレージネットワークが徐々に存在感を増す世界では、ユーザーや開発者にとっての選択肢や交渉力が大きく変わってきます。 ビットコインをはじめとする分散型プロトコルは、この集中と分散のせめぎ合いの中で、どのような「逃げ道」や「オルタナティブ」を提示しうるのか――その視点で、今回のOracleショックを見直してみる価値はあると感じています。
【用語解説】
ビットコイン(Bitcoin)
暗号資産の一種で、最も時価総額が大きい通貨であり、中央銀行や政府ではなく分散型ネットワークによって発行と取引が管理される仕組みを持つ。
ナスダック先物(Nasdaq futures)
ナスダック100などの株価指数を原資産とする先物取引で、ハイテク株中心のポートフォリオに対する投機やヘッジに用いられる金融商品である。
AIバブル(AI bubble)
人工知能関連銘柄やインフラ投資への期待が収益実態を上回って膨張し、株価やバリュエーションが過熱していると懸念される状態を指す。
キャペックス(Capex、capital expenditures)
企業が設備投資として支出する資本的支出であり、データセンター建設やサーバー増設など長期的な資産取得に充てられるコストを意味する。
クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)
企業や国の債務不履行リスクをヘッジ・取引するためのデリバティブであり、スプレッドの水準が発行体の信用リスクの市場評価を反映する。
【参考リンク】
Oracle公式サイト(外部)
クラウドインフラやデータベース、AI関連ソリューションを提供する米Oracleの公式サイトで、製品情報や決算資料にアクセスできる。
Nasdaq公式サイト(外部)
ナスダック市場の指数や個別銘柄、先物・オプションなどの相場情報とニュース、マーケットデータを提供する公式ポータルサイトである。
Federal Reserve(外部)
米連邦準備制度理事会(FRB)の公式サイトで、FOMC声明や金利動向、経済データなど金融政策関連の一次情報を確認できる。
CoinDesk(外部)
暗号資産とブロックチェーン業界のニュース、価格インデックス、リサーチレポートを提供するグローバルな専門メディアの公式サイトである。
【参考記事】
Wall Street futures slide as Oracle’s forecast revives AI bubble fears(外部)
Oracleの弱い業績見通しと高水準のキャペックス計画がAIバブル懸念を再燃させ、米株価指数先物が下落した経緯と市場の反応を整理している。
Oracle shares tumble as gloomy forecasts, higher capex reignite AI bubble fears(外部)
Oracle株が2桁下落した背景として、売上予想未達やデータセンター投資の増加、長期負債の拡大が詳述され、欧州市場を含むAI関連株への影響が数値とともに示されている。
Oracle shares fall as bubble fears return, hitting wider tech stocks(外部)
Oracle決算後にAI関連株や広範なテック株が売られた構図を解説し、投資家がAI成長ストーリーとバリュエーションをどのように再評価しているかを紹介している。
Oracle AI reality check knocks stocks, Fed cut saps dollar(外部)
FRBの利下げとOracle決算が重なったことで、為替・株式・債券市場がどのように反応したかを俯瞰し、AI関連投資に対する「現実チェック」が入ったと分析している。
Oracle Might Be the Riskiest AI Stock as Bubble Fears Grow(外部)
OracleのAIインフラ投資と負債水準に焦点を当て、キャッシュフローとレバレッジのバランスから同社を高リスクなAI銘柄と位置づける見方を紹介している。
Crypto market sheds more than $1tn in six weeks amid fears of tech bubble(外部)
テックバブル懸念の高まりとともに暗号資産市場から多額の時価総額が失われた過程を整理し、AIブームとビットコイン価格変動の関連性を論じている。
Are we in an AI bubble? Here’s what analysts and experts are saying(外部)
アナリストや投資家のコメントを通じて、現在のAI関連株高がバブルなのか健全な成長局面なのかについて、多角的な見解と主要指標をまとめている。
【編集部後記】
AIインフラ投資やビットコインの値動きは、どうしても「遠い世界の話」に見えがちですが、実際には僕たちの日常のサービスや、これからの働き方にじわじわと影響していくテーマだと感じています。 今回のOracleのケースをきっかけに、「AIの成長ストーリー」と「その裏側の負債やリスク」をどこまで許容できるのか、いっしょに考えていけたらうれしいです。
もし、あなたが注目しているAI銘柄や暗号資産があれば、「どこに期待しているのか」「どんな不安を感じているのか」をぜひ教えてください。あなたの視点があることで、次に掘り下げるべき問いがはっきりしてきます。































