TER:ブータンGMCの金裏付けソブリンRWAトークン、DK Bank保管でSolana発行

[更新]2025年12月13日

TER:ブータンGMCの金裏付けソブリンRWAトークン、DK Bank保管でSolana発行 - innovaTopia - (イノベトピア)

ブータンの特別行政区Gelephu Mindfulness City(GMC)は12月11日、主権の関与をうたう金裏付けのデジタルトークン「TER」を発表した。現物の金は、ブータン政府の規制下にあるデジタル資産銀行DK Bankがカストディを担い、トークンはSolanaブロックチェーン上で発行される。

RWAのトークン化プラットフォームMatrixdockが技術パートナーを担う。第1段階ではトークンは銀行でカストディされ、具体的な開始日は明らかにされていない。GMCはTERについて、通貨インフレへのヘッジとしての役割を想定していると説明した。

CointelegraphはArkham Intelligenceのデータとして、ブータンが2019年から水力発電を利用してBitcoinを採掘しており、約6,000 BTCを保有していると報じているが、Arkhamの最新リサーチでは保有量は1万BTC超と推定されており、数値には乖離がある点には注意が必要だ。

From: 文献リンクBhutan goes for gold, announces sovereign-backed RWA token

【編集部解説】

今回のニュースは、ブータンの特別行政区Gelephu Mindfulness City(GMC)が、金に裏付けられた主権(ソブリン)デジタルトークン「TER」を立ち上げると発表した、という一点にまず注目が集まります。裏付け資産が「金」であることに加え、保管(カストディ)を政府規制下のDK Bankが担う構図を前面に出しているのが特徴です。

技術面では、TERがSolana上で発行されるとされています。金の保管・受け渡しというオフチェーンの世界と、移転・記録というオンチェーンの世界を接続する設計であり、金をデジタルで持つ/移す体験に寄せていく狙いが読み取れます。

一方で、トークン化RWAの評価はチェーンの性能だけで決まりません。現物金がどの条件で償還できるのか、保管残高の検証や監査がどの程度担保されるのか、二次流通をどこまで許容するのか(KYC/AMLをどう適用するのか)が重要になります。ここが曖昧なままだと、便利なデジタル金ではなく、発行体信用に依存する別の何かになってしまいます。

また、「主権(sovereign-backed)」という言葉は強い反面、受け手によって解釈が割れやすい表現でもあります。国家が価格を保証するのか、規制・監督の枠組みを提供するのか、準備資産としての位置付けを示すのかで、リスクの見え方が変わります。利用条件・監査方法・償還プロセスがどの粒度で開示されるかが、信頼を左右するでしょう。

長期目線で見ると、これは小国が暗号資産・RWA・観光決済などを束ねてデジタル金融の実験場を設計している流れの延長線上にあります。金という伝統資産をパブリックチェーン上のトークンとして扱う試みがどこまで制度化されるかは、他国の規制や金融機関の姿勢にも波及し得るテーマです。

なお、報道で使われている「ソブリン(sovereign-backed)」という表現は、国家が価格や償還を保証することを意味するとは限らない。現時点では、国家が制度設計や監督の枠組みに関与するという文脈で用いられており、投資家保護や償還条件の詳細は今後の開示を待つ必要がある。

【用語解説】

RWA(Real World Asset)
金や国債など現実世界の資産を、ブロックチェーン上で扱える形にして流通・管理する考え方である。

トークン化(tokenization)
現物資産や権利に対応するデジタルな持分(トークン)を発行し、移転や管理をデジタル化することを指す。

カストディ(custody)
トークンの裏付けとなる資産を保管し、必要に応じて償還などに応える役割をいう。

ソブリン(sovereign-backed)
国家や公的枠組みの関与・信用を前提に「裏付け」をうたう表現である。

Solana
パブリックブロックチェーンの一つで、TERが発行されるネットワークとして言及されている。

【参考リンク】

Gelephu Mindfulness City(GMC):TER発表(外部)
GMCがTER立ち上げを告知する公式ニュースページである。

Matrixdock(公式サイト)(外部)
RWAトークン化を提供するMatrixdockの公式サイトである。

Matrixdock:GMCとの提携発表(外部)
GMCとMatrixdockの提携内容を示すMatrixdock公式記事である。

DK Bank(About Us)(外部)
ブータンのデジタル資産銀行DK Bankの概要を確認できるページである。

Digital Kidu(DK Bankのサービス)(外部)
DK Bankが展開するデジタルバンキングの案内サイトである。

Solana(プロジェクトサイト)(外部)
Solanaネットワークの概要や開発者向け情報を提供するサイトである。

Arkham:Druk Holding Investments(外部)
Druk Holding Investmentsに関する情報を参照できるArkhamページである。

【参考記事】

CoinDesk:Bhutan Debuts TER Gold-Backed Token on Solana(外部)
TERの発表概要と、金裏付けでSolana展開する枠組みを伝える記事である。

Investing.com:Bhutan launches gold-backed digital token TER(外部)
GMC、DK Bank、Solana、TERの関係と狙いを整理して伝える記事である。

CoinMarketCap:Bhutan Launches Gold-Backed Token on Solana(外部)
TERをRWAトークン化の事例として整理し、概要を紹介する記事である。

ForkLog:Bhutan Launches Gold-Backed Token on Solana(外部)
ブータンのTERとSolana上での展開を伝える海外メディアの記事である。

【編集部後記】

TERの話題は暗号資産ニュースに見えますが、実は国家の信用、現物資産の保管、ブロックチェーンの移転性が同時に問われるテーマです。もし自分が触るなら、償還条件、監査の有無、二次流通でのKYC/AMLの設計だけでも一緒に確認してみませんか。気になるのは資産としての使い道でしょうか、それとも金融インフラとしての可能性でしょうか。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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