株式会社デジタルプラスが運営する「デジタルギフト®」が、JPYC株式会社が発行する国内初の資金移動業型円建てステーブルコイン「JPYC」に対応することを2026年1月21日に発表した。API連携を通じて日本円ステーブルコインを受け取ることが可能となるギフトサービスとして国内初の事例となる。
JPYCは日本円と1対1で交換可能な日本円建ステーブルコインであり、裏付け資産は預貯金および国債によって保全される。Ethereum、Avalanche、Polygonの3つのチェーンで発行される。過去1年間におけるステーブルコインのオンチェーン取引量(送金・移転を含む)は約46兆ドルに達し、a16zの分析ではVisaの年間処理量と比較しても非常に大きな規模となっている。JPYC株式会社は2021年よりステーブルコイン事業を展開しており、直近ではLINE NEXT Inc.と日本円建ステーブルコイン「JPYC」の活用に向けて協業検討を開始する基本合意書を締結した。
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【国内初】日本円建ステーブルコイン「JPYC」に対応
【編集部追記】
本文中で言及している「オンチェーン取引量」は、ブロックチェーン上で発生したステーブルコインの送金・移転をすべて合算した数値を指しており、一般的に用いられる「決済額」や「経済規模」とは定義が異なります。
オンチェーン取引量には、暗号資産取引所間の資金移動、DeFi(分散型金融)における運用や清算、裁定取引など、金融的・技術的な用途による反復的な資金移動も含まれます。このため、同一の資金が短期間に何度も移動することで、取引量が実体経済の規模を大きく上回るケースがあります。
a16zがVisaやPayPalと比較して示しているのは、ステーブルコインの流動性や回転率の高さを示す文脈であり、実需ベースの決済規模が既存の決済ネットワークを上回ったことを意味するものではありません。a16z自身も、Visa等との比較については「必ずしも apples-to-apples(同列比較)ではない」と注記しています。
なお、a16zの2024年版レポートでは、ステーブルコインのオンチェーン取引量として2024年Q2に約8.5兆ドルが示されており、同期間のVisaの処理量(約3.9兆ドル)との比較が提示されています。
こうした数値を読む際には、「決済インフラとしての成熟度」と「金融市場における資金循環量」は必ずしも一致しない点を踏まえた解釈が求められます。
【編集部解説】
今回のニュースは、日本における金融イノベーションの新たな一歩として注目に値します。株式会社デジタルプラスが運営する「デジタルギフト®」がJPYCに対応したことで、ギフトサービスの受取手段としてステーブルコインが選択可能になりました。これは単なる決済手段の追加ではなく、日本の規制環境下でステーブルコインが実用フェーズへ移行していることを示す重要な事例です。
まず、資金移動業型ステーブルコインという仕組みについて説明します。2023年6月に改正資金決済法が施行され、日本ではステーブルコインが「電子決済手段」として法的に位置づけられました。発行形態には信託型、銀行預金型、資金移動業者型の3種類があり、JPYCは資金移動業者型として2025年8月18日に登録されています。この形態では、発行体は利用者預り金と同額以上の資金を供託する義務があり、利用者の資産保全が制度的に担保されています。
今回の連携で特筆すべきは、API連携によるリアルタイム送金を実現した点です。これまでステーブルコインの受取には専用のウォレットアプリやブロックチェーンの知識が必要でしたが、API連携により既存のギフトサービスからシームレスにステーブルコインを受け取れるようになります。これは、デジタル金融の民主化において大きな意味を持ちます。
市場規模の観点からも、この動きは重要です。ステーブルコインは、ブロックチェーン上での資金移転量が拡大しており、a16zの分析では年間数十兆ドル規模に達しているとされます。こうしたデータは、投機的な暗号資産取引から、実務的な送金・決済用途へと関心が移行していることを示唆しています。これはVisaの処理量の約3倍に相当し、グローバルな決済総額の約2.3%を占めています。投機的な暗号資産取引から、実務的な決済・送金利用へと関心が移行していることを数字が裏付けています。
デジタルプラスが掲げる「過去・現在・未来の受取手段」という視点も興味深いものです。現金、キャッシュレス決済、ポイント、そしてステーブルコインや暗号資産まで、あらゆる受取手段を横断的につなぐ金融アグリゲーターとして機能することで、デジタルリテラシーの差が人を不幸にしない社会を目指すという理念は、テクノロジーの進化に伴う情報格差への配慮として評価できます。
一方で、留意すべき点もあります。ステーブルコインは法定通貨との連動を謳っていますが、発行体の信用リスクや技術的な脆弱性、規制環境の変化といった要素には注意が必要です。また、Ethereum、Avalanche、Polygonという複数のブロックチェーンで発行されることで利便性は高まりますが、チェーン間の相互運用性や手数料の変動といった技術的課題も存在します。
さらに注目すべきは、LINE NEXTとの協業です。LINEアプリという日常的なプラットフォーム上でJPYCが利用可能になれば、ステーブルコインが一般消費者にとって身近な存在になる可能性があります。TISとの協業により2026年秋以降にステーブルコイン決済支援サービスが提供される予定もあり、企業間決済のDX化にもつながっていくでしょう。
今回の動きは、日本が世界に先駆けてステーブルコインの法整備を行い、実用化に向けて着実に歩を進めていることを示しています。金融イノベーションと利用者保護のバランスを取りながら、新しい決済インフラが構築されていく過程を、私たちは目撃しているのです。
【用語解説】
ステーブルコイン
法定通貨と価値が連動するように設計された暗号資産の一種。JPYCのように日本円と1対1で交換可能なものや、米ドルに連動するUSDTやUSDCなどが存在する。価格変動が激しい一般的な暗号資産と異なり、価値の安定性を重視した設計となっている。
資金移動業型ステーブルコイン
2023年6月施行の改正資金決済法により定められたステーブルコインの発行形態の一つ。信託型、銀行預金型、資金移動業者型の3種類があり、資金移動業者型では発行体が利用者預り金と同額以上の資金を供託する義務を負う。利用者の資産保全が制度的に担保される仕組みだ。
API連携
Application Programming Interfaceの略。異なるソフトウェアやサービス同士が相互にデータをやり取りし、機能を連携させるための仕組み。今回の事例では、デジタルギフトのシステムとJPYCのシステムがAPI経由で接続され、リアルタイムでのステーブルコイン送金が可能になる。
Ethereum(イーサリアム)、Avalanche(アバランチ)、Polygon(ポリゴン)
ブロックチェーンプラットフォームの名称。JPYCはこれら3つのブロックチェーン上で発行される。それぞれ異なる特性を持ち、Ethereumは最も広く利用されるスマートコントラクトプラットフォーム、Avalancheは高速処理、Polygonは低手数料が特徴だ。
a16z(Andreessen Horowitz)
米国シリコンバレーを拠点とする大手ベンチャーキャピタル。テクノロジー企業への投資で知られ、暗号資産やブロックチェーン分野にも積極的に投資している。業界動向に関する調査レポートを定期的に発行しており、編集部解説で引用したステーブルコインの取引量データもa16zのレポートに基づく。
改正資金決済法
2023年6月に施行された法律で、ステーブルコインを「電子決済手段」として法的に位置づけた。これにより日本国内でのステーブルコイン発行・流通に関する規制の枠組みが整備され、利用者保護と金融イノベーションの両立が図られている。
【参考リンク】
JPYC株式会社(外部)
国内初の資金移動業型円建てステーブルコインを発行。2021年からステーブルコイン事業を展開し、2025年8月に資金移動業者として登録された企業。
株式会社デジタルプラス(外部)
2005年設立のフィンテック企業。デジタルギフトサービスを展開し、企業から個人への多様な支払い手段を提供している。本社は東京都渋谷区。
デジタルギフト®(外部)
株式会社デジタルプラスが運営する送金インフラサービス。現金、キャッシュレス決済、ポイント、ステーブルコインまで多様な受取手段を提供する。
TIS株式会社(外部)
日本の大手ITサービス企業。JPYCと協業し、2026年秋以降にステーブルコイン決済支援サービスの提供を予定している。
【参考記事】
a16z Report: Stablecoin Transactions Hit $46 Trillion in 2024(外部)
a16zの報告書に基づき、2024年のステーブルコイン取引量が46兆ドルに達したことを報じる記事。前年比106%成長を記録した。
Stablecoin volumes triple Visa’s as a16z projects digital dollars to hit $2 trillion by 2028(外部)
a16zのレポートを引用し、ステーブルコインの取引量がVisaの3倍に達したことを報告。2028年までに2兆ドル規模に成長すると予測。
TIS、JPYCと日本円建ステーブルコイン決済の社会実装に向けて協業(外部)
TIS株式会社とJPYC株式会社が2025年11月に発表した協業のプレスリリース。2026年秋以降の決済支援サービス提供を計画。
米国で進むステーブルコインの規制整備(10):日本では初の資金移動業型ステーブルコインが誕生(外部)
野村総合研究所による解説記事。JPYCが2025年8月18日に資金移動業者として登録され、国内初の資金移動業型ステーブルコインとして発行された経緯を詳述。
LINEでJPYC利用普及目指す、LINE NEXTとJPYCが協業検討(外部)
LINE NEXT Inc.とJPYC株式会社が、LINEアプリ上でのJPYC活用に向けた協業検討を開始。基本合意書(MOU)を締結した。
【編集部後記】
ステーブルコインがギフトサービスで受け取れるようになる――。この変化を、みなさんはどう受け止めますか?
現金もキャッシュレスもポイントも、それぞれの時代に「新しすぎて不安」と感じた方がいたはずです。今回のステーブルコインも同じ過渡期にあるのかもしれません。技術の進化は止まりませんが、大切なのは「選択肢があること」ではないでしょうか。
受け取り方を自分で選べる社会。デジタルリテラシーの差が不利益につながらない仕組み。そんな未来に向けた一歩として、今回のニュースを一緒に見守っていけたらと思います。みなさんは、どんな受取手段があれば安心できますか?



































