暗号資産取引所のKrakenは2026年3月13日、Pi Network(PI)の取引開始を公表した。Pi Networkは、スマートフォンを通じて参加できるモバイルファーストのLayer-1ブロックチェーンで、Pi公式はコミュニティ規模を5,500万人超としている。
同日、ネットワークのv20.2プロトコルアップグレードの必須対応期限を迎え、1,800万人以上のユーザーがKYC認証を完了しメインネットへの移行を進めている。上場発表を受けてPIの価格は約19%上昇し、0.20ドルから0.23ドルに達した。
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Kraken to List Pi Network Token With Trading Set for March 13
【編集部解説】
今回のKrakenによるPI上場は、単なる取引所の新規銘柄追加ではありません。Pi Networkというプロジェクトが歩んできた6年間の文脈を知ることで、このニュースの重さが初めて見えてきます。
Pi Networkは2019年に始動したプロジェクトで、創業メンバーにはスタンフォード大学の博士号保持者が含まれます。スマートフォンアプリで誰でも手軽にマイニングできるというコンセプトは爆発的な支持を集めましたが、長年にわたりメインネット移行が繰り返し延期され、「実体のないプロジェクト」「ネズミ講に近い」という批判も根強くありました。2025年2月にOpen Networkが始動し、Pi Networkはより広い外部接続が可能な段階へ進みました。
元記事はPI価格が約19%上昇したと伝えていますが、同じ本文中で示された「0.20ドルから0.23ドル」という値幅は約15%上昇に相当します。つまり、元記事の価格説明には参照時点の混在、または記述上の不整合がある可能性が高く、価格の数字は参照するタイミングや取引所によって異なるため、注意が必要です。
Krakenという選択肢が重要な理由は、その規制上の信頼性にあります。Krakenは米国での規制対応を進めてきた取引所として知られます。一方で、今回のPI取引開始がPIトークン自体にどこまで制度的な信認を与えるかについては、なお市場の評価を見極める必要があります。
一方で、見逃せないリスクも存在します。一部報道では、取引所に向かうPI供給量の増加が指摘されています。ただし、その規模や時点については一次的なオンチェーンデータの提示が必要です。これは初期マイナーたちが長年保有してきたトークンの売却に動く可能性を示唆しており、過去にもPI価格は大きく変動しており、上場や大型イベントの前後でボラティリティが高まる可能性には注意が必要です。
v20.2アップグレードについても補足が必要です。v20.2はMainnetノードに求められるアップグレードとして案内されています。一方、Pi DEXやAMM関連機能については、Pi側が別途テスト環境で進めてきた文脈があり、v20.2そのものと同一視するのは避けたほうがよいと思われます。スマートコントラクトやDeFi機能への布石とも解釈でき、単なるメンテナンスではなくエコシステム拡張の起点となる可能性があります。バリデーター報酬の展開も2026年3月末が目標とされており、ネットワークの実用性が問われる正念場を迎えています。
今後の最大の注目点は、BinanceやCoinbaseへの上場可能性です。Krakenでの取引が安定的に推移すれば、次のティア1取引所への上場交渉を後押しする材料となり得ます。5,000万人以上のユーザーを抱えながらも主要取引所との距離があったPi Networkにとって、今回のKraken上場はその突破口になりうるでしょう。ただし「話題性」と「実需」の乖離が続く限り、価格の持続的な上昇は未知数です。
【用語解説】
スポット上場
暗号資産を「現物」として売買できる取引所に銘柄が追加されること。先物取引(将来の価格を契約する取引)とは異なり、実際のトークンをリアルタイムで売買できる。
Layer-1ブロックチェーン
他のブロックチェーンに依存せず、独自のコンセンサスメカニズムと基盤インフラを持つブロックチェーンの最下層プロトコルのこと。EthereumやBitcoinと同じ分類に位置する。Pi Networkはこれを独自に構築している。
メインネット
テスト環境(テストネット)とは異なり、実際の資産が動く本番稼働のブロックチェーンネットワークのこと。Pi Networkは2025年2月にオープンネットワーク・メインネットへ移行した。
KYC(本人確認)
Know Your Customerの略。金融サービスにおいてユーザーの身元を確認するプロセス。Pi Networkでは、ボット排除と実在ユーザーの保護を目的として全ユーザーに義務付けている。
バリデーター
ブロックチェーン上のトランザクションを検証・承認する役割を担うノード(参加者)のこと。Pi Networkでは、v20.2アップグレードへの対応がバリデーターに求められた。
Pi DEX
Pi Network上で動作する分散型取引所(Decentralized Exchange)のこと。v20.2アップグレードと同時に立ち上げられ、スマートコントラクトやDeFi機能への拡張の布石として位置づけられている。
売り圧力(セルプレッシャー)
市場において売り注文が買い注文を上回り、価格を押し下げる力のこと。Pi Networkの場合、長年マイニングしてきた初期ユーザーが上場を機に保有トークンを一斉売却するリスクとして注目されている。
【参考リンク】
Kraken 公式サイト(外部)
米国サンフランシスコ拠点の暗号資産取引所。規制準拠と高いセキュリティで知られ、2026年3月13日よりPIのスポット取引を開始した。
Pi Network 公式サイト(外部)
スマートフォンアプリによるモバイルマイニングを軸に設計されたLayer-1ブロックチェーンプロジェクトの公式サイト。白書やロードマップ、KYC情報などを掲載している。
【参考記事】
Kraken Lists Pi Coin On Time for the Big Pi Day — BeInCrypto(外部)
発表直後のOKXでの上昇が約2%であったこと、取引所へのPI供給量が4億5,100万PIと過去最高に達したことなど、数値の根拠として最も重視した記事。
Pi Network Kraken Listing Date Confirmed: Price History, Targets and What to Expect — CoinPedia(外部)
直近1週間の週間上昇率約33%、v20.2アップグレードとPi DEX立ち上げの関係、OKX上場時の値動きとの比較を詳細に分析している。
Pi Network Kraken Listing Sparks 31% Price Surge as Pi Day 2026 Approaches — Pool Party Nodes(外部)
上場後のPI価格31%急騰、最高値からの93%下落の経緯、2026年3月末目標のバリデーター報酬展開などの数値を含む詳細なレポート。
Pi Network’s Big Break: Kraken Confirms Spot Listing for PI Coin — The Crypto Times(外部)
「ネズミ講」批判や透明性への疑問、トークンアンロック問題など、懐疑的な視点も含めて公平にまとめた分析記事。
Pi Coin Price Analysis: Kraken Sets March to List Pi Network — 99Bitcoins(外部)
総供給量1,000億PIという供給過剰リスク(サプライオーバーハング)と、KYC未完了ユーザーによる上場遅延リスクを指摘した構造的リスク分析記事。
Pi Day Update: What’s Happening With The Controversial Cryptocurrency? — Sify(外部)
v20.2アップグレードがスマートコントラクトやDEX機能への布石となる可能性と、Pi Day 2026に向けたロードマップを整理した記事。
【編集部後記】
実は私も、かなり長いことスマートフォンでタップし続けていたパイオニアの一人でした。でもいつの間にかやめてしまって……ログインできるかな、まだアカウント残ってるかな、と少し不安になっています。
同じような方、意外と多いのではないでしょうか。そんな「元パイオニア」たちにとっても、今回のKraken上場は他人事ではない話かもしれません。久しぶりにアプリを開いてみようかと思っている今日この頃です。







































