Windows 11セキュリティアップデートがSSDを「破壊」- Corsair・SanDiskなど複数ブランドで報告

[更新]2025年8月19日18:07

Windows 11セキュリティアップデートがSSDを「破壊」- Corsair・SanDiskなど複数ブランドで報告 - innovaTopia - (イノベトピア)

MicrosoftのWindows 11アップデートパッチKB5063878(ビルド26100.4946)が複数ブランドのSSDに問題を引き起こしている。

ユーザーNecoru_catがX上で報告したところによると、50GB以上のファイル転送時やSSD使用率が60%を超えた際にSSDが認識されなくなる現象が発生する。

Phison NANDコントローラー搭載のSSDで問題が多発しているが、全ての該当ドライブが影響を受けているわけではない。日本のウェブサイトNichePCGamerも同様の現象を確認し、Phison E16コントローラー搭載のCorsair Force MP600やSanDiskのExtreme Pro M.2 NVMeなどで問題が報告されている。

SSDがクラッシュするとWindowsのファイルエクスプローラーで認識されなくなるが、PC再起動により大部分のSSDが再び表示される。ただし再度ファイル転送を試みると同じ問題が再発する。

少なくとも1つのドライブは再起動後も回復不可能だった。Microsoftは公式チャンネルでこの問題をまだ確認していない。

From: 文献リンクMicrosoft’s Latest Windows 11 Update Is Reportedly ‘Killing’ Some SSDs

【編集部解説】

今回のWindows 11アップデートによるSSD認識問題は、単なるソフトウェアの不具合を超えた、深刻なストレージシステムの脆弱性を浮き彫りにしています。innovaTopiaの編集部として、この問題の技術的背景と影響範囲について詳しく解説いたします。

技術的背景の詳細分析

問題の核心は、Windows 11のストレージドライバーやカーネル部分で発生した回帰にあります。Tom’s Hardwareの詳細な調査によると、21台のドライブでテストを実施した結果、12台が一時的にアクセス不可能となり、うち1台(Western Digital SA510 2TB)は再起動後も回復できませんでした。この結果は、問題がPhison NANDコントローラーに限定されていない広範囲な現象であることを示しています。

影響範囲の拡大と多様性

当初はPhison NANDコントローラー搭載SSDの問題と考えられていましたが、実際にはより広範囲に及んでいます。日本のNichePCGamerが報告した影響を受けるドライブリストには、Corsair Force MP600(Phison E16コントローラー)、SanDisk Extreme Pro M.2 NVMe(Triton MP28コントローラー)、Kioxia Exceria Plus G4 1TB(Phison E31Tコントローラー)が含まれており、コントローラーメーカーの垣根を越えた問題であることが判明しています。

データ完全性への深刻な脅威

最も懸念すべき点は、単なる認識エラーではなく、SMART機能の完全な停止とデータ破損の可能性です。Mashableの報告では、SSDがSMART機能を失い、ファイルが読み取り不可能になるケースが確認されています。これは、ドライブの健全性監視機能そのものが破綻していることを意味し、データの完全性に深刻な脅威をもたらします。

Windows 10移行期における致命的タイミング

この問題が発生したタイミングは、Microsoft にとって極めて不幸です。2025年10月のWindows 10サポート終了を控え、積極的なWindows 11への移行推進を行っている最中に発生した今回の問題は、ユーザーの移行意欲を大きく削ぐ要因となっています。Forbes の報告によると、多くのユーザーがWindows 11の過去数年間にわたる様々なバグのために、既にアップグレードを躊躇している状況です。

長期的な信頼性への影響

現時点では報告数が限定的であることが、かえって問題を複雑にしています。広範囲に影響が及んでいない状況は、Microsoftの公式対応が遅れる要因となっており、修正プログラムの提供時期が不透明な状況を生み出しています。この対応の遅れは、企業のIT部門や個人ユーザーの Windows 11 に対する信頼性評価に長期的な影響を与える可能性があります。

技術革新とリスクのバランス

今回の事例は、オペレーティングシステムとストレージハードウェアの密接な連携における脆弱性を示しています。セキュリティ強化を目的としたアップデートが、逆にデータの安全性を脅かすという皮肉な状況は、現代のIT環境における技術革新とリスク管理のバランスの難しさを物語っています。

【用語解説】

NANDフラッシュコントローラー
SSD内部でNANDフラッシュメモリを制御し、データの読み書きやエラー訂正、摩耗均一化などを管理する集積回路である。SSDの性能や信頼性を左右する中核的な部品で、各メーカーが独自技術を競っている。

SMART機能
Self-Monitoring, Analysis and Reporting Technologyの略で、ストレージデバイスの健康状態を監視する機能である。温度、不良セクタ数、書き込み回数などを記録し、故障の予兆を検出してユーザーに警告する。

NVMe(Non-Volatile Memory Express)
SSD専用に設計された高速なインターフェース規格である。従来のSATA接続と比較して、より多くのデータを並列処理でき、大幅な性能向上を実現している。

PCIe 4.0
PCI Express 4.0規格のことで、従来のPCIe 3.0と比較して2倍の帯域幅を持つ。高速SSDの性能を最大限に引き出すために必要な接続規格である。

TLC NAND
Triple Level Cellの略で、1つのセルに3ビットのデータを保存するNANDフラッシュメモリである。容量あたりのコストが安い一方で、書き込み耐久性はSLCやMLCより低い。

【参考リンク】

Phison Electronics Corporation(公式サイト)
(外部)台湾に本社を置くNANDフラッシュメモリコントローラーの世界的メーカー

Corsair(公式サイト)(外部)
アメリカのゲーミング向けPC部品メーカー、Force MP600シリーズを製造

SanDisk(公式サイト)(外部)
Western Digitalの子会社、Extreme Proシリーズの高性能SSDブランド

【参考記事】

Latest Windows 11 security patch might be breaking SSDs(外部)
21台のSSDで検証し、12台が一時的にアクセス不可能になったテスト結果を報告

Bug in Windows 11 update reportedly breaks some SSDs(外部)
50GB以上のファイル転送時とSSD使用率60%超過時の問題発生条件を詳細報告

Windows 11’s latest update may be bricking SSDs(外部)
SMART機能の完全停止とファイルが読み取り不可能になるケースを警告

Windows 11 Latest Update: More Critical Issues Now Emerging(外部)
Windows 10サポート終了を控えたタイミングでの問題発生の深刻さを分析

【編集部後記】

今回のWindows 11アップデート問題について、皆さんはどのようにお感じになりましたか。私たちinnovaTopiaでは、技術の進歩と同時に生まれるリスクについても率直にお伝えしたいと考えています。

特に大容量ファイルを日常的に扱われている映像クリエイターやデータサイエンティストの方々には、深刻な影響があるかもしれません。皆さんの環境では類似の問題は発生していませんでしょうか。また、OSアップデートとハードウェア互換性について、どのような対策を取られているか、ぜひお聞かせください。技術革新の恩恵を安全に享受するために、私たちと一緒に考えていければと思います。

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TaTsu
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