バングラデシュ軍間広報局が2026年1月14日に発表したところによると、バングラデシュは中国電子科技集団公司国際と政府間協定を締結し、国内でのドローン製造・組立施設の設立に乗り出した。
協定はバングラデシュ空軍本部で署名され、同空軍と中国企業が共同でUAV製造・組立工場を国内に設立する。プロジェクトには技術移転、能力構築、産業技能開発、長期的な技術協力が含まれる。
初期段階では中高度長時間滞空UAV(MALE)と垂直離着陸ドローンを製造し、空軍は国産UAV設計の開発も進める予定だ。ドローンは軍事用途に加え、サイクロンや洪水などの災害対応や人道支援にも活用される。
この取り組みは海外サプライヤーへの依存削減と国内専門知識の発展を目指し、熟練した航空宇宙労働力の育成を通じて製造バリューチェーンの向上を支援する。
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Bangladesh to build domestic drone industry
【編集部解説】
バングラデシュが中国と組んでドローン産業の国産化に踏み出したこのニュースは、南アジア地域における防衛産業の地殻変動を示す重要な事例です。2026年1月6日に財務省が承認したこのプロジェクトは、総額約60億8,000万タカ(約76億円)規模で、従来の途上国型の「完成品輸入」から「技術移転を伴う本格的生産体制」への転換を目指しています。
中国電子科技集団公司国際(CETC International)は中国政府系の大手防衛企業で、レーダーシステムや電子戦装備、そして無人航空機システムで世界的に知られています。同社の製品は110カ国以上で使用されており、その技術水準は国際的にも認められています。バングラデシュ空軍参謀長のHasan Mahmood Khan空軍大将や中国大使のYao Wenが出席した署名式は、この協定の戦略的重要性を物語っています。
製造予定のMALE(Medium Altitude Long Endurance)UAVは、中高度長時間滞空型ドローンと呼ばれ、10,000〜30,000フィート(約3,000〜9,000メートル)の高度で24〜48時間の連続飛行が可能な高性能機です。広域監視や長時間の偵察任務に適しており、軍事作戦における戦略的価値は極めて高いものです。
特筆すべきは、このプロジェクトが軍事用途だけでなく、民生用途も見据えている点です。バングラデシュはベンガル湾に面した低地が多く、毎年のようにサイクロンや洪水に見舞われる気候変動の最前線にあります。MALE UAVによる長時間の空中監視は、被災地の迅速な把握や物資輸送ルートの確保に革命をもたらす可能性があります。
技術移転と人材育成に重点が置かれている点も見逃せません。プロジェクト名が正式に「無人航空機の製造工場設立と技術移転」と銘打たれているように、単なる組立工場ではなく、設計能力を含めた包括的な技術基盤の獲得が目標です。航空宇宙産業は高度な工学知識と精密な製造技術を要求する分野であり、ここで培われる技能は他の先端製造業にも応用可能です。
バングラデシュは縫製業を中心とした労働集約型産業から、より付加価値の高い産業への転換を国家戦略「Forces Goal 2030」の一環として掲げており、このドローン産業はその試金石となるでしょう。財務省は既存予算内での支出を条件としており、2026年から2029年にかけて段階的に資金を配分する計画です。
一方で、中国との軍事技術協力は地政学的な意味合いも持ちます。インドと複雑な関係にあるバングラデシュにとって、防衛面での選択肢を増やすことは戦略的自律性の向上につながります。しかし同時に、中国依存が深まるリスクや、西側諸国との関係への影響も考慮する必要があります。
また、「国産」の定義についても慎重に見る必要があります。初期段階では中国の技術と部品に大きく依存することは避けられず、真の意味での国産化には長期的な投資と研究開発が不可欠です。それでも、海外からの完成品輸入に比べれば、国内に技術と雇用が蓄積される点で大きな前進といえます。
国際需要への対応も視野に入れている点は野心的です。もしバングラデシュが競争力のあるドローンを開発できれば、同じく防衛近代化を進めるアジア・アフリカの途上国向けに輸出する道も開けます。これは単なる輸入代替にとどまらない、より大きな産業ビジョンを示しています。
【用語解説】
UAV(Unmanned Aerial Vehicle / 無人航空機)
パイロットが搭乗せずに飛行する航空機の総称。ドローンとも呼ばれる。軍事用途では偵察・監視から攻撃任務まで幅広く使用され、民生用途では空撮、測量、農業、物流などに活用される。
MALE(中高度長時間滞空)UAV
Medium Altitude Long Enduranceの略。高度10,000〜30,000フィート(約3,000〜9,000メートル)で24〜48時間の連続飛行が可能なドローン。広域監視や長時間の偵察任務に適しており、国境監視、海洋監視、災害対応などに使用される。米国のプレデターやイスラエルのヘロンなどが代表的な機種である。
VTOL(垂直離着陸)ドローン
Vertical Take-Off and Landingの略。ヘリコプターのように垂直に離着陸できるドローン。滑走路が不要なため、船舶や山岳地帯など限られたスペースでも運用可能。
技術移転(Technology Transfer / ToT)
先進的な技術やノウハウを、開発国から受入国へ移転すること。製造方法、設計図、運用知識などを含み、受入国の自立的な生産能力構築を目指す。
ISPR(Inter-Services Public Relations / 軍間広報局)
バングラデシュ軍の公式広報機関。陸海空軍の活動や政策について情報発信を行う。
Forces Goal 2030
バングラデシュ軍の近代化計画。軍事装備のアップグレード、国内産業の関与促進、自立的な防衛生産能力の構築を目指す国家戦略。
【参考リンク】
Bangladesh Air Force(外部)
バングラデシュ空軍の公式サイト。組織概要、装備、活動内容を掲載。
China Electronics Technology Group Corporation (CETC)(外部)
中国電子科技集団公司の公式サイト。電子・情報技術分野の国有企業で防衛関連技術を手がける。
ISPR Bangladesh(外部)
バングラデシュ軍間広報局の公式サイト。軍の最新ニュースとプレスリリースを提供。
The Business Standard(外部)
バングラデシュの主要経済紙。今回のドローン製造契約の財務詳細を詳報。
【参考記事】
Bangladesh to sign Tk608cr deal with China for military drone plant(外部)
財務省承認の詳細、契約額、支払いスケジュール等具体的情報を報道。
Bangladesh Establishes Military UAV Manufacturing Capability Under China Agreement(外部)
技術移転の詳細とCETC開発の具体的機種情報、技術的側面を詳述。
China Pushes Ahead With US$55 Million Drone Factory in Bangladesh(外部)
地政学的観点から分析。インドへの影響、ベンガル湾の戦略的重要性を考察。
Bangladesh signs defense deal with China to manufacture drones locally(外部)
協定の概要、MALE UAVとVTOL UAVの製造計画について報告。
Bangladesh Strengthens UAV Capabilities with Chinese Partnership(外部)
署名式の詳細、出席者、技術移転の内容、能力構築の目標について報道。
【編集部後記】
途上国が先進技術を「買う」のではなく「作る」側に回る。この変化は私たちが想像する以上に速く進んでいます。約76億円という投資で、バングラデシュは24〜48時間連続飛行可能なMALE UAVの製造能力を獲得しようとしています。気候変動への備えと防衛力強化を同時に実現しようとするこの試み、そして中国との提携が地域にもたらす影響について、みなさんはどうお考えでしょうか。技術の民主化が進む時代に、私たちは何を見据えるべきなのか。一緒に考えていければと思います。






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