今日、1月26日は国連が定めた「国際クリーンエネルギー・デー (International Day of Clean Energy)」です。
2009年のこの日、再生可能エネルギーの普及を目指す国際機関「IRENA」が設立されました。世界は今、化石燃料からの脱却へ向けて猛スピードで突き進んでいます。しかし、その「グリーンな未来」の足元には、見過ごせない不都合な真実が横たわっています。
それは、「クリーンなエネルギーを作るために、特定地域に偏在する鉱物を掘り続けなければならない」というパラドックスです。
太陽光や風力といった「燃料」は無限ですが、それを電気に変えるための「装置(ハードウェア)」は有限の資源で作られています。本日は、エネルギー問題の核心にある「レアアース(希土類)」の争奪戦と、それを技術で突破しようとする日本のイノベーション(守りと攻めの戦略)について解説します。

EVと風車の心臓部、「最強の磁石」を巡るリスク
なぜ、脱炭素社会で「レアアース」が重要なのでしょうか。その答えは「ネオジム磁石」にあります。
ネオジム磁石は、現時点で人類が保有する最強の永久磁石です。
電気自動車(EV)の駆動用モーターや、洋上風力発電の巨大タービンを効率よく回すためには、小型で強力な磁力を持つこの磁石が不可欠です。もしレアアースがなければ、モーターは巨大化し、EVの航続距離は短くなり、風車の発電効率はガクンと落ちてしまいます。
「第2のショック」への懸念
問題は、その供給体制です。レアアースの採掘・分離・精製プロセスにおいて、中国が圧倒的なシェア(工程によっては80%以上とも言われる)を握っています。
かつて2010年に起きた「レアアース・ショック(価格高騰)」を記憶している読者も多いでしょう。IEA(国際エネルギー機関)の試算によれば、2040年には重要鉱物の需要が現在の数倍〜数十倍に膨れ上がると予測されています。
エネルギーの動脈を特定のサプライチェーンに依存することは、国家の安全保障上、極めて高いリスクとなります。
【守りのイノベーション】都市鉱山ハックと「脱・レアアース」技術
この地政学的なリスクを無効化するために、テクノロジーによる「守り」のイノベーションが加速しています。
Urban Mining 2.0(進化した都市鉱山)
「掘る」のではなく「戻す」。使用済みのEVモーターや電子機器からレアアースを回収する技術です。
かつてはコストが合わず敬遠されていましたが、現在は日産自動車や早稲田大学などが、高温で溶かすことなく、低コスト・高純度で磁石を分離・再生するプロセスを開発しています。廃棄物はゴミではなく、純度の高い資源へとその定義を変えつつあります。
Material Substitution(代替技術)
さらに根本的な解決策は、「そもそもレアアースを使わない」ことです。
テスラが「次世代モーターで希土類を使わない」と発表し話題になりましたが、日本企業も負けていません。
例えば、プロテリアル(旧日立金属)などは、ありふれた資源である鉄を主成分とした「フェライト磁石」を用いつつ、モーターの構造設計を工夫することで、EV用としても十分な性能を出す技術を開発しています。
「希少資源がないなら、知恵(設計)でカバーする」。これこそがエンジニアリングの真髄です。
【攻めのイノベーション】眠れる資源大国・日本と「南鳥島」
リサイクルや代替技術といった「守り」に加え、日本には世界を驚かせる「攻め」の切り札があります。
それは、南鳥島沖の深海に眠る「レアアース泥」です。
日本の排他的経済水域(EEZ)内、南鳥島沖の水深約6,000mの海底には、世界的にも例を見ない高濃度のレアアースを含む泥が存在することが、学術調査によって確認されています。
現時点では経済性や大規模採掘の可否は検証段階にありますが、将来的な資源ポテンシャルとして国際的な注目を集めています。もし、この深海資源へのアクセスが確立されれば、日本は資源の「輸入国」から、一転して「輸出国」へとパラダイムシフトを起こす可能性があります。
この「夢の資源」を現実のものにするための、最新の採掘技術については、以下の過去記事で詳しく解説しています。ぜひ併せてご覧ください。
▼ あわせて読みたい:深海6000mへの挑戦
南鳥島沖に眠る「国産レアアース」採掘技術の最前線はこちら
https://innovatopia.jp/energy/energy-news/77217/
2050年へのハイブリッド戦略
1月26日、国際クリーンエネルギー・デー。
この日は、単に太陽や風の恵みに感謝するだけの日ではありません。それらを使いこなすための「マテリアル(物質)」に目を向ける日でもあります。
- 地上の資源を循環させる「サーキュラー・テクノロジー」
- 深海の資源を開拓する「オーシャン・テック」
この2つを組み合わせたハイブリッド戦略こそが、資源を持たない日本が脱炭素社会で勝ち残るためのロードマップです。エネルギーの未来は、空(再エネ)だけでなく、地面の下と海にこそ広がっているのです。
【Information】
国際再生可能エネルギー機関 (IRENA)
2009年1月26日に設立された、再生可能エネルギーの普及・持続可能な利用を促進する国際機関。本日の記念日の由来でもあります。世界の再エネコスト分析や雇用動向などのレポートを多数公開しています。
United Nations : International Day of Clean Energy
国連による「国際クリーンエネルギー・デー」の公式サイト。SDGs(目標7:エネルギーをみんなに、そしてクリーンに)との関連性や、この日が制定された背景、グローバルなイベント情報が掲載されています。
JOGMEC(独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構)金属資源情報
日本の資源エネルギー外交と探査技術の中核を担う機関。特に「金属資源情報」のページでは、レアアースを含む重要鉱物の価格動向、需給レポート、および海洋資源探査の最新技術情報を発信しており、ビジネスパーソン必見のサイトです。



































