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BYD ブレードバッテリー2.0発表—5分で70%、9分で97%のフラッシュ充電が変えるEVの常識

[更新]2026年3月8日

BYDは2026年3月5日、深セン(シェンチェン)で開催されたイベントにおいて、第2世代ブレードバッテリーとフラッシュ充電技術を正式発表した。同社の超高級サブブランドYangwangは、2026年型ヤンワン U7セダンが同バッテリーを初搭載すると発表。バッテリー容量は150kWhで、純電気走行距離は最大1,006キロメートルに達する。

また、第2世代メガワット急速充電設備の最大出力は1,500キロワットとされる。第1世代ブレードバッテリーの発売は2020年で、2025年3月には5分間で400キロメートル分を充電できるメガワット級フラッシュ充電器を発表済みだ。BYDのNEV販売台数は2026年2月に前年同月比41%減となった。同イベントでは2026年型ヤンワン U8・U8L、フラッグシップSUVのDatang、DenzaブランドのZ9GT更新版も発表された。

From: 文献リンクBYD to launch 2nd-gen blade battery and flash-charging tech on Mar 5

【編集部解説】

今回BYDが発表した「第2世代ブレードバッテリー」「フラッシュ充電」は、単なるスペック更新ではありません。EVにおける最大の課題だった「充電時間」という概念を根本から書き換えようとする、システムレベルの挑戦です。

まず充電速度について整理します。第2世代ブレードバッテリーは、バッテリー残量10%から70%まで5分、10%から97%まで9分という速度を実現しました。97%で止める設計は意図的なものであり、王伝福(ワン・チュアンフー)会長は「省エネ措置」と説明しています。さらに注目すべきは低温性能で、-20℃および-30℃という極寒環境においても、20%から97%の充電がわずか12分で完了するとされています。これは従来のEVが抱えていた「寒冷地での充電性能劣化」という課題に、正面から答えようとするものです。

元記事では充電設備の最大出力について「2,100キロワット」と記載されていましたが、これは3月5日の正式発表前に流れていた報道段階での数値です。正式発表では、充電ガン1基あたりの最大出力が1,500キロワット(1.5メガワット)であることが確認されています。

充電インフラ戦略にも独自性があります。BYDは2026年内に2万基のフラッシュ充電ステーション設置を目標としており、2026年1〜2月の2カ月だけですでに4,239基が完成しています。特筆すべきは「ステーション・イン・ステーション」モデルと呼ばれる設置方式で、既存の充電事業者(TELDやStar Chargeなど)の設備内にBYDの充電器を組み込む形を採用しています。各ステーションにはバッテリーストレージが内蔵されており、EV充電がないタイミングに既存の電力インフラから蓄電しておくことで、電力グリッドへの過大な負荷をかけずに超急速充電を実現する設計です。

「不可能の三角形」という表現についても補足します。これはEVのパワー、航続距離、充電速度の3要素を同時に高水準で実現することが、従来のバッテリー物理的制約から困難だったことを指しています。今回の技術では、150kWhというバッテリー容量を持ちながらフラッシュ充電に対応することで、この制約を超えたと主張しています。

一方で、冷静に見ておくべき点もあります。今回発表されたCLTC航続距離(ヤンワン U7:1,006km、Denza Z9GT:1,036km)は中国の試験サイクル(CLTC)に基づく数値であり、欧州のWLTPや米国のEPA基準と比較すると、実態より楽観的な数値となる傾向があります。TechCrunchの報道においても、CLTCはEPA基準と比べて約35%高い数値が出やすいと明示的に指摘されています。実際の使用環境での航続距離は、これより短くなる可能性を念頭に置く必要があります。

また、今回の技術が恩恵をもたらすのは、まず高価格帯のYangwangやDenzaブランドからです。BYDはSeal 07など計10車種への搭載を予定していますが、エントリーモデルへの波及がいつ、どのような形で実現するかは、今後の重要な注目点となります。

長期的な視点で見ると、この技術が普及すれば「航続距離不安からくる大容量バッテリー需要」そのものを変えうる可能性があります。高速充電が当たり前になれば、消費者は必ずしも巨大なバッテリーを必要とせず、より軽く・安価な車両設計が可能になるという逆説的な効果も期待されます。充電技術の進化が、EVの「あるべき姿」の再定義につながるかもしれません。

【用語解説】

LFP(リン酸鉄リチウム)バッテリー
リン酸鉄リチウム(Lithium Iron Phosphate)を正極材に使用したリチウムイオン電池。ニッケルやコバルトを使用しないため、材料コストが低く、熱安定性が高く、発火リスクが低い。エネルギー密度はNMC(三元系)より低い傾向があったが、第2世代ブレードバッテリーはこの課題を大幅に改善している。

CLTC(中国軽量車試験サイクル)
中国独自のEV航続距離測定規格(China Light-Duty Vehicle Test Cycle)。実際の走行環境よりも楽観的な数値が出やすい傾向があり、欧州のWLTPや米国のEPA基準と比べると、およそ20〜35%程度高い数値になるとされる。本記事のヤンワン U7の「1,006km」もCLTC基準の数値である。

NEV(新エネルギー車)
New Energy Vehicleの略。中国における電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の総称。中国政府が普及を推進する区分であり、販売台数の集計・規制においても独自の基準が設けられている。

FlashPassイオン輸送システム
BYDが第2世代ブレードバッテリーに採用した独自の内部構造技術の総称。正極の「Flash-Release」、電解液の「Flash-Flow」、負極の「Flash-Intercalate」の3要素からなり、LFPバッテリーの高速充電と高エネルギー密度を両立させるために開発された。

ステーション・イン・ステーション(Station-within-a-Station)
既存の公共充電事業者の設備内にBYDのフラッシュ充電器を組み込む展開モデル。BYDは各ステーションに蓄電池を内蔵し、EV充電がない時間に既存の低出力充電網から蓄電することで、電力グリッドへの過大な負荷なく1,500kWのフラッシュ充電を実現する。

【参考リンク】

BYD Global 公式サイト(外部)
BYDのグローバル向け公式サイト。EV・バッテリー・充電技術の最新情報を発信。プレスリリースや製品仕様の一次情報として参照できる。

BYD 公式プレスリリース:ブレードバッテリー2.0・フラッシュ充電(外部)
2026年3月発表のBYD公式リリース。ブレードバッテリー2.0とFLASH充電の技術詳細・充電ステーション展開計画を網羅した一次情報源だ。

Yangwang(仰望)公式サイト(外部)
BYDの超高級サブブランドYangwang公式サイト。ヤンワン U7・U8など第2世代ブレードバッテリー搭載モデルの製品情報を掲載している。

Denza(騰勢)公式サイト(外部)
BYD完全子会社のプレミアムEVブランドDenza公式サイト。第2世代ブレードバッテリー搭載のZ9GTをはじめ最新モデルの情報を掲載している。

【参考記事】

BYD unveils 2nd-gen blade battery, shattering charging speed records(外部)
充電速度・対応10車種・安全試験の結果を詳報。バッテリー保証条件の改善(容量維持率2.5%向上)も記載された主要参照元だ。

10–97% in nine minutes: BYD presents second generation of Blade Battery(外部)
車種ごとの充電時間差異、セルの縦置き配置変更、グリッド負荷対策を詳解。4,239基稼働・年内2万基目標も明記されている。

BYD unveils Blade Battery 2.0: 10-70% in 5 mins, 10-97% in 9 mins, and 20,000 flash charging stations in 2026(外部)
ステーション・イン・ステーションの仕組みを現地取材で実証。TELDの充電器背後にBYD充電器が設置されている様子を報告している。

BYD rolls out EV batteries with 5-minute ‘flash charging’ — but there’s a catch(外部)
CLTCがEPA基準より約35%過大評価される点や、専用充電器が必要という留保条件を指摘した中立的視点の分析記事だ。

BYD Launches Next-Generation Blade Battery & Flash Charging(外部)
高速充電の普及が大容量バッテリー需要を変えうる逆説的効果を論じ、既存充電器比10倍の充電可能台数を掲載している。

BYD’s Second-Generation Blade Battery Makes Western EV Tech Look Ancient(外部)
Denza Z9GTが9%から97%まで9分51秒で充電された実証を報告。CLTC基準の注意点と米国充電時間との比較も掲載している。

BYD now holds 100% of Denza as Mercedes exits(外部)
メルセデス・ベンツが残余10%株式をBYDへ譲渡し、DenzaがBYD完全子会社となった経緯を詳述した2024年9月の報道記事だ。 

【編集部後記】

「5分で70%」という数字を見たとき、皆さんはどう感じましたか。給油と変わらない時間で充電が完了するとしたら、EVへの見方はどう変わるでしょう。

私たちもこのニュースに触れて、充電インフラの進化がEVの「あり方」そのものを変えていくのかもしれないと感じています。皆さんはこの技術、どこに一番ワクワクしましたか?

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Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

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