Mecha Systemsが開発するMecha Cometは、オープンソースハードウェアのモジュール式Linuxハンドヘルドコンピューターである。
NXP i.MX 8M Plusまたはi.MX 95 Arm SoCを搭載し、最大8GBのRAMと128GBのストレージを備える。3.92インチAMOLEDディスプレイ(1080 x 1240解像度)を搭載し、40ピン磁気拡張コネクタによりゲームパッドやQWERTYキーボードなどのモジュールを追加できる。
OSはU-boot 2025.04、Linux 6.12、Fedora 43をベースとしたMechanix OSを採用している。約4年間続くこのコミュニティプロジェクトは、1月24日にKickstarterキャンペーンを開始し、わずか数時間で1,000人以上の支援者から35万ドル以上を調達した。
価格はi.MX 8M Plusモデルが189ドルから、i.MX 95モデルが269ドルからで、発送はそれぞれ2026年5月/6月と2026年9月に開始予定である。
From:
Mecha Comet is an open-source hardware, modular Linux handheld computer
【編集部解説】
Mecha Cometが登場したタイミングは、オープンソースハードウェア運動にとって転換点となる2026年と重なります。このプロジェクトはCERN-OHL-S-2.0ライセンスの下で完全にオープン化され、CADファイルからPCB設計まですべての設計資料が公開される予定です。これは単なる製品発表ではなく、ハードウェアの民主化を目指す思想の具現化といえるでしょう。
注目すべきは40ピンの磁気拡張コネクタによるモジュール設計です。ゲームパッド、キーボード、GPIOブレイクアウトボードなどの拡張モジュールを瞬時に着脱できる仕組みは、Right to Repair(修理する権利)運動が求める「消費者が自ら修理・改造できる製品」の理想形を体現しています。従来のハンドヘルドデバイスが使い捨て電子機器となりがちな中、このアプローチは電子廃棄物削減にも寄与します。
搭載されるNXP i.MX 8M Plusとi.MX 95の選択肢も戦略的です。i.MX 8M Plusはコストパフォーマンスに優れ、i.MX 95は最新のArm Mali-G310 V2 GPUと4K対応、2 TOPSのNPUを備えた上位モデルとなります。特にi.MX 95は2026年9月出荷予定で、ヘキサコアCortex-A55プロセッサにより前世代から大幅な性能向上を実現しています。
Mecha Systemsは約4年間このプロジェクトに取り組んできました。Kickstarterで数時間のうちに35万ドル以上を調達した事実は、オープンハードウェアに対する開発者コミュニティの強い期待を示しています。
技術的には、Mechanix OSがU-boot 2025.04、Linux 6.12、Fedora 43をベースとし、RustベースのMechanix ShellがWayland上でGPUレンダリングを実現する点が特徴的です。Debianリポジトリの6万以上のパッケージに対応し、NixOSやKali Linuxなど他のディストリビューションへの移植も可能としています。
このデバイスの真の価値は、ゲーム機やLinuxターミナルという既存の用途にとどまらず、ドローンコントローラー、AIアシスタント、車両診断ツール、無線トランシーバーなど、ユーザーのアイデア次第で無限の可能性を秘めている点にあります。3.92インチAMOLEDディスプレイ、8MPカメラ、9軸モーションセンサー、オプションの4G/5G接続といった充実したハードウェアスペックが、その実現を後押しします。
一方で、初代製品ゆえの課題も想定されます。バッテリー容量については情報源により3,000mAhから4,100mAhまで幅があり、実際の使用時間や充電サイクルについてはユーザーフィードバックを待つ必要があるでしょう。また、モジュールエコシステムの拡充にはコミュニティの活発な参加が不可欠です。
価格設定は絶妙なバランスを保っています。189ドルからという価格は、開発者向けツールとしては手頃でありながら、完全なオープンソースハードウェアとしての価値を考えれば納得できる水準です。50ドルで3つの拡張モジュールバンドルを追加できる点も、初期投資を抑えつつ多様な用途を試せる配慮が感じられます。
【用語解説】
オープンソースハードウェア
ハードウェアの設計図、回路図、基板レイアウトなどを公開し、誰でも自由に製造・改良・配布できるようにしたハードウェアのこと。ソフトウェアのオープンソース運動をハードウェアに適用した概念である。
SoC(System on Chip)
プロセッサ、GPU、メモリコントローラー、入出力インターフェースなど、コンピューターシステムに必要な複数の機能を1つのチップに集積した半導体デバイス。スマートフォンや組み込みシステムで広く使われる。
NPU(Neural Processing Unit)
AI処理に特化したプロセッサ。ニューラルネットワークの演算を高速に実行でき、画像認識や音声処理などの機械学習タスクを効率的に処理する。性能はTOPS(1秒あたり1兆回の演算)で表される。
GPIO(General Purpose Input/Output)
汎用入出力端子のこと。電子回路やセンサー、アクチュエーターなどの外部デバイスを接続し、プログラムで制御できるピン群を指す。
Right to Repair(修理する権利)
消費者が製品を自分で修理したり、第三者に修理を依頼したりする権利を保障する運動。メーカーによる修理独占や使い捨て電子機器に対抗し、持続可能な消費を目指す。
AMOLED
Active Matrix Organic Light Emitting Diodeの略。有機ELディスプレイの一種で、各画素が自発光するため、高コントラストで鮮やかな色表示が可能。省電力性にも優れる。
Wayland
Linuxにおける次世代ディスプレイサーバープロトコル。従来のX Window Systemに代わる技術で、よりシンプルな設計とGPUアクセラレーションの効率的な利用を実現する。
【参考リンク】
Mecha Comet公式サイト(外部)
製品情報、技術仕様、開発者向けドキュメントを提供。Kickstarterキャンペーンへのリンクやコミュニティフォーラムへのアクセスも可能
Mecha Systems GitHub(外部)
ハードウェアおよびソフトウェアのオープンソースリポジトリ。外装ケース設計、回路図、Mechanix OS、拡張モジュールの設計ファイルを公開
NXP Semiconductors(外部)
i.MX 8M Plusおよびi.MX 95プロセッサを製造する半導体メーカー。組み込みシステム向けのArm SoCを幅広く提供
Fedora Project(外部)
Mechanix OSのベースとなるLinuxディストリビューション。Red Hat社スポンサーによりコミュニティ主導で開発される先進的なOS
【参考動画】
Mecha Comet: The Modular Cyber-Deck for Your Pocket
Kickstarterキャンペーン開始に合わせて公開された公式プロモーション動画。Mecha Cometのモジュール交換の実演、各種拡張機能、実際の使用シーンが紹介されている。
Mecha Comet Modular Linux Handheld at #ces2025
CES 2025での展示レポート動画。NXP i.MX8搭載モデルの実機デモンストレーション、NVMeストレージ対応、Debianベースのシステム、オープンソース拡張モジュールの詳細が確認できる。
【参考記事】
Mecha Comet is a modular open source handheld computer(外部)
オープンソースコミュニティの視点から分析。Mechanix OSの技術スタック、Debianの6万パッケージ対応、バッテリー容量などの詳細情報を提供
Repairable Electronics: How Modular Tech and Right to Repair are Redefining Consumer(外部)
2026年におけるモジュール設計とRight to Repair運動の現状を解説。Mecha Cometのような製品が消費者の修理権と電子廃棄物削減にどう貢献するかを論考
What’s in store for open source in 2026?(外部)
2026年のオープンソース動向を展望。オープンソースハードウェア運動の転換点として、Mecha Cometのようなプロジェクトが持つ意義を位置づけ
ARM System on Module (SoM) Comparison(外部)
NXP i.MX 8M PlusとI.MX 95を含む各種Arm SoCの技術比較。プロセッサ性能、GPU仕様、NPU能力などの詳細な比較データを提供
【編集部後記】
Mecha Cometのようなオープンソースハードウェアは、私たちが「消費者」から「創造者」へと立場を変えるきっかけになるかもしれません。あなたならこのデバイスをどう使いますか?ゲーム機として?開発ツールとして?それとも誰も思いつかないような用途を見つけられるでしょうか。
モジュール設計という自由度の高さは、アイデア次第で無限の可能性を秘めています。Right to Repairの理念も、単なる修理の権利を超えて、テクノロジーとの関わり方そのものを問い直しているように感じます。皆さんはこの流れをどう捉えますか?ぜひご意見をお聞かせください。






がもたらす「アンテザード・ソサエティ」の衝撃-300x200.png)





























