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AI毎日利用で抑うつリスク30%増、JAMA研究が2万人調査で個人的使用との相関を報告

JAMA Network Openに掲載された新しい研究は、AIチャットボットを毎日使用する人々が中程度の抑うつ症状を報告する可能性が高いことを示している。

2025年に実施された約21,000人の米国成人を対象とした全国調査では、定期的なユーザーの間で少なくとも中程度のうつ病のオッズがおよそ30%高いことが判明した。

調査参加者のうち約10%が毎日AIを使用し、5%が一日に複数回チャットボットと対話していると回答した。

研究者は、この関連性は相関関係であり、チャットボットの使用がうつ病を引き起こす証明ではないと強調している。

特に中年成人(45〜64歳)で強い関連性が見られた。

専門的な治療環境でのCBTベースシステムなどでは抑うつ症状の軽減効果が示されているが、日常的な交友目的での使用については懸念が示されている。

From: 文献リンクTalk to AI every day? New research says it might signal depression – Digital Trends

【編集部解説】

AIとの会話が日常になりつつある今、この研究結果は私たちに重要な問いを投げかけています。

JAMA Network Openという医学分野で高い評価を得ている学術誌に掲載されたこの研究は、AIチャットボットの利用頻度とメンタルヘルスの相関関係を大規模調査で明らかにしました。Mass General Brighamの研究者チームが実施したこの調査では、20,847人の米国成人(平均年齢47歳)を対象に、2025年4〜5月にかけてデータを収集しました。統計的に意味のある結果が得られていますが、研究者自身が慎重に強調しているように、これは「因果関係」ではなく「相関関係」です。

つまり、AIチャットボットを使うからうつ病になるのか、それともうつ傾向にある人がAIチャットボットを多用するのか、この研究だけでは判断できません。孤独や不安を抱えている人が人間との対話を避け、AIに頼る可能性も十分に考えられます。

特に注目すべきは、AI使用の目的による違いです。仕事や学校でのAI使用は抑うつ症状と関連していなかったのに対し、個人的な理由での使用、つまり推奨、アドバイス、感情的サポートを求める使用のみが抑うつ症状と関連していました。毎日使用者の87.1%がこうした個人的な理由でAIを使用していることも明らかになっています。

さらに研究者は「用量反応関係」を観察しました。これは、AIを使用する頻度が高いほど、抑うつ症状がより強くなる傾向があることを意味します。1日に複数回使用する人は、毎日使用する人よりもさらに強い症状を示す傾向がありました。

興味深いのは、中年層(45〜64歳)で特に強い関連性が見られた点です。この世代は職場でのストレス、家庭での責任、将来への不安など、複数の心理的負担を抱えやすい時期にあります。デジタルネイティブではない世代が、人間関係の構築や維持に困難を感じた際に、手軽なAIとの対話に依存してしまう構造が見え隠れします。

一方で、研究は臨床的に設計されたCBT(認知行動療法)ベースのAIシステムについては肯定的な結果を示しています。つまり、適切な設計と専門家の監督下であれば、AIは有効なメンタルヘルスツールになり得るのです。問題は、日常的な「何となく」の使用、特に感情的サポートを求める使用にあります。

AIとの対話は即座に反応が得られ、判断されることもなく、いつでも利用できます。この手軽さは、人間関係特有の摩擦や不確実性を避ける逃避先になりかねません。そして、その逃避が長期化すれば、実際の人間関係を築くスキルはさらに低下し、孤立が深まるという負のスパイラルに陥る危険性があります。

この研究が私たちに示唆するのは、テクノロジーとの健全な距離感の重要性です。AIは便利なツールですが、人間の温かさ、予測不可能性、共感の深さを代替することはできません。

【用語解説】

JAMA Network Open
米国医師会(AMA)が発行する査読付きオープンアクセス医学雑誌。医学・公衆衛生分野で高い信頼性を持つ学術誌の一つである。

CBT(認知行動療法)
認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy)の略。思考パターンと行動パターンを変えることで心理的問題を改善する治療法で、うつ病や不安障害の治療に広く用いられている。

中程度の抑うつ症状
軽度と重度の中間に位置する抑うつ状態。日常生活に支障をきたし始める段階で、専門的な介入が推奨されるレベルである。

用量反応関係
医学や薬理学で用いられる概念で、刺激や曝露の量が増えるほど、その効果や反応も強くなる関係性を指す。この研究では、AI使用頻度が高いほど抑うつ症状が強くなる傾向を示している。

Mass General Brigham
マサチューセッツ総合病院とブリガム・アンド・ウィメンズ病院を含む、米国有数の医療・研究機関ネットワーク。ハーバード大学医学部の主要教育病院でもある。

【参考リンク】

JAMA Network Open(外部)
米国医師会が発行する査読付きオープンアクセス医学雑誌。最新の医学研究を掲載。

ChatGPT(外部)
OpenAI開発の対話型AI。世界中で利用される生成AIチャットボット。

Google Gemini(外部)
Google提供の生成AIサービス。テキスト生成から画像認識まで対応。

Microsoft Copilot(外部)
Microsoft提供のAIアシスタント。Office製品やWindowsに統合。

Mass General Brigham(外部)
マサチューセッツ総合病院を含む米国有数の医療・研究機関ネットワーク。

【参考記事】

Using AI for advice or other personal reasons is linked to depression and anxiety(外部)
NBC Newsによる詳細報道。20,847人調査の詳細と用量反応関係を解説。

Daily AI chatbot use linked to 30% higher depression risk, US study finds(外部)
Anadolu Agencyによる報道。調査実施時期と使用頻度の詳細データを掲載。

Association of Generative Artificial Intelligence Chatbot Use With Depression and Anxiety Symptoms(外部)
JAMA Network Open掲載の原著論文。統計的分析結果の詳細を確認可能。

【編集部後記】

AIとの会話が当たり前になった今、私たちはこのツールとどう向き合うべきでしょうか。この研究は、テクノロジーの便利さの裏側にある心の健康への影響を考える大切な機会を与えてくれています。特に注目すべきは、仕事や学習ではなく、感情的なサポートを求めてAIを使う場合にリスクが高まるという点です。AIは優れたツールですが、人間関係の代わりにはなりません。ご自身のAI利用を振り返り、もし孤独や不安を感じているなら、信頼できる人や専門家に相談することも選択肢の一つです。

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Satsuki
テクノロジーと民主主義、自由、人権の交差点で記事を執筆しています。 データドリブンな分析が信条。具体的な数字と事実で、技術の影響を可視化します。 しかし、データだけでは語りません。技術開発者の倫理的ジレンマ、被害者の痛み、政策決定者の責任——それぞれの立場への想像力を持ちながら、常に「人間の尊厳」を軸に据えて執筆しています。 日々勉強中です。謙虚に学び続けながら、皆さんと一緒に、テクノロジーと人間の共進化の道を探っていきたいと思います。

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