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神戸発・船舶とドローンによる複合型災害支援物資輸送訓練、国交省事業で実施

[更新]2026年1月27日

阪神・淡路大震災で港が機能不全に陥った神戸で、災害時の物資輸送を“途切れさせない”ための新モデル検証が始まった。

KOBEモビリティフィールド協議会は国交省の補助事業に採択され、船舶からドローンで陸上拠点へ運ぶ船上訓練に続き、道路寸断を想定した里山訓練も実施。海路・陸路・空路を組み合わせた複合輸送の実効性を確かめる。


KOBEモビリティフィールド協議会は、国土交通省の令和7年度「ドローンを活用した災害物資輸送に関する調査等事業」の採択を受け、災害時における支援物資輸送体制の強化を目的とした複合型物資輸送訓練を実施している。

南海トラフ地震や高潮災害時に船舶が着岸できない状況を想定し、停泊中の船舶からドローンで陸上拠点へ物資を輸送する船上訓練を2026年1月22日と23日に実施した。さらに陸路が遮断された状況を想定し、物資集積所から避難所までドローンで物資を輸送する里山訓練を1月28日と2月4日に実施する。

本事業には兵機海運、日本コンピューターネット、TOA、ソフトバンク、尾道工業、中村工業が参画し、神戸市公園緑化協会が物資集積所および避難所の提供を担う。海上輸送・陸上輸送・ドローン輸送を組み合わせた新たな支援物資輸送モデルの実効性を検証する。

From: 文献リンク【神戸発】船舶×ドローンによる災害時支援物資輸送訓練を実施

【編集部解説】

神戸発の官民連携による革新的な災害支援システムの検証が進んでいます。KOBEモビリティフィールド協議会は、南海トラフ地震などの大規模災害を想定し、船舶とドローンを組み合わせた複合型の物資輸送訓練を実施しています。

この取り組みの背景には、1995年の阪神・淡路大震災で神戸港が甚大な被害を受けた教訓があります。当時、港湾施設が被災したことで船舶による物資輸送が途絶し、被災地への支援が大きく滞りました。今回の訓練では、こうした過去の経験を活かし、港湾施設が使えない状況でも支援物資を届けられる新たな手法を検証しています。

訓練は2段階で構成されています。1月22日と23日に実施された船上訓練では、停泊中の船舶からドローンで陸上の集積地点へ物資を輸送する手法を検証しました。さらに1月28日と2月4日に実施予定の里山訓練では、道路が寸断された状況を想定し、物資集積所から避難所までドローンで輸送する実証を行います。つまり、海上輸送、陸上輸送、空中輸送という3つの輸送手段を有機的に連携させる試みです。

この事業は国土交通省の令和7年度(2025年度)補助事業に採択されており、一次公募では全国で8件、約31百万円の予算が割り当てられています。神戸の取り組みはその一つとして選ばれました。参画企業も多彩で、兵機海運、日本コンピューターネット、TOA、ソフトバンク、尾道工業、中村工業という6社に加え、神戸市公園緑化協会が協力しています。

技術的な要点としては、船舶から直接ドローンを飛ばすという点が挙げられます。通常、ドローンは陸上から離陸しますが、港湾施設が使えない状況では船上からの運用が必要になります。海上特有の風や波の影響、船体の揺れなどの条件下でドローンを安全に運用できるかが重要な検証ポイントです。

KOBEモビリティフィールド協議会は2022年3月に設立され、神戸市のポートアイランド第2期に180m×100mの実証フィールドを持っています。これまでもTOA製のスピーカーを搭載したドローンによる防災情報伝達の訓練など、実践的な取り組みを重ねてきました。ローカル5G環境も整備されており、遠隔操作や通信の安定性についても検証が進められています。

南海トラフ地震は、今後30年以内に60~90%の確率で発生すると予測されており、神戸市でも最大震度6強、最高3.9mの津波が予想されています。神戸市は2023年3月に津波対策を完了させましたが、それでも港湾施設が被災し船舶が着岸できなくなる可能性は否定できません。

今回の訓練で得られるデータは、災害時の物資輸送計画の策定に直接活用されます。ドローンの飛行距離、積載重量、運用時間、気象条件への対応、バッテリー交換の効率性など、実用化に向けた課題が明らかになるでしょう。

また、この取り組みは単なる技術実証にとどまりません。官民学が連携した協議会方式により、企業の技術力、自治体の防災計画、研究機関の知見が統合されています。こうした連携モデルは、他地域の防災体制構築にも参考となる可能性があります。

【用語解説】

南海トラフ地震
駿河湾から日向灘沖にかけてのプレート境界を震源域として、概ね100年から150年間隔で繰り返し発生してきた大規模地震。今後30年以内に60〜90%の確率で発生すると予測されており、最大でM9.0クラスの巨大地震となる可能性がある。

阪神・淡路大震災
1995年1月17日に発生した兵庫県南部地震による大災害。神戸港は甚大な被害を受け、港湾機能が長期間麻痺した。この教訓から、神戸では災害時の物資輸送ルート確保が重要課題となっている。

令和7年度
西暦2025年4月から2026年3月までの日本の会計年度。この年度に国土交通省は「ドローンを活用した災害物資輸送に関する調査等事業」で全国8件、約31百万円の補助を実施している。

ローカル5G
特定のエリアで自営の5Gネットワークを構築できる通信システム。高速・低遅延・多数同時接続が可能で、ドローンの遠隔操作や映像伝送に適している。

複合型輸送モデル
複数の輸送手段を組み合わせて物資を届ける方式。今回は海上輸送(船舶)、陸上輸送(トラック等)、空中輸送(ドローン)を組み合わせることで、災害時でも柔軟に対応できる体制を目指している。

【参考リンク】

KOBEモビリティフィールド協議会(外部)
官民学が連携し、防災・物流・教育分野におけるドローン活用の社会実装を推進する協議会の公式サイト

国土交通省 令和7年度ドローンを活用した災害物資輸送に関する調査等事業(外部)
国土交通省による補助事業の概要と採択事業の情報を掲載

神戸市 南海トラフ巨大地震・津波への備え(外部)
神戸市による南海トラフ地震の被害想定と防災対策の情報

TOA株式会社(外部)
神戸市に本社を置く業務用音響・映像機器メーカー。スピーカー搭載ドローンを開発

日本コンピューターネット株式会社(外部)
大阪に本社を置き、ドローン事業を展開。KMFC事務局を担当

【参考記事】

国土交通省 令和7年度「ドローンを活用した災害物資輸送に関する調査等事業」の交付決定(外部)
国土交通省が2025年度に実施する補助事業の概要。一次公募で計8件、約3100万円の交付決定を行った。離島や山間部等における緊急支援物資輸送体制の確保を目的としている。

「KOBEモビリティフィールド」でローカル5G共創フィールド導入のお知らせ(外部)
2022年3月にKOBEモビリティフィールド協議会が設立され、ポートアイランド第2期にローカル5G環境を整備した経緯を説明。

兵庫県の地震・津波被害想定(南海トラフ)(外部)
兵庫県が公表している南海トラフ地震の被害想定。今後30年以内で60~90%程度の確率で発生すると予測されている。

神戸市 1000年に一度の津波対策完了(外部)
神戸市が2023年3月に南海トラフ巨大地震に伴う津波対策を完了したことを発表。浸水深を30cm未満に抑える対策を実施した。

【編集部後記】

災害大国日本において、物資輸送ルートの多重化は命を守る重要なテーマです。今回の神戸での取り組みは、従来の陸路・海路に加え、空路という新たな選択肢を実用化しようとするものです。

阪神・淡路大震災から30年以上が経ち、当時の教訓を次世代の技術で乗り越えようとする動きが加速しています。ドローン技術の進化により、かつては不可能だった複合型輸送が現実のものとなりつつあります。

みなさんの地域でも、ドローンを活用した防災の取り組みが始まっているかもしれません。地域の防災計画に関心を持ち、新しい技術がどのように私たちの安全を守ろうとしているのか、注目してみてはいかがでしょうか。

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Satsuki
テクノロジーと民主主義、自由、人権の交差点で記事を執筆しています。 データドリブンな分析が信条。具体的な数字と事実で、技術の影響を可視化します。 しかし、データだけでは語りません。技術開発者の倫理的ジレンマ、被害者の痛み、政策決定者の責任——それぞれの立場への想像力を持ちながら、常に「人間の尊厳」を軸に据えて執筆しています。 日々勉強中です。謙虚に学び続けながら、皆さんと一緒に、テクノロジーと人間の共進化の道を探っていきたいと思います。

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