advertisements

Broadcom「Taurus™」登場—OFC 2026が映すAIインフラの転換点、光通信が電気配線の限界を超える

[更新]2026年3月15日

Broadcom Inc.(NASDAQ: AVGO)は2026年3月12日、ギガワット規模のAIクラスター向けAIインフラポートフォリオの拡充を発表した。同社は3月15日から19日にかけてロサンゼルスで開催されるOFC 2026において、3.5D XPU、102.4T EthernetスイッチCPO、400G/レーン光学DSP「Taurus™」、800G NIC「Thor Ultra」、PCIe Gen6スイッチおよびリタイマーなどを展示する。

Taurus™は業界初の400G/レーン光学DSPであり、400G EML・PDと組み合わせることで1.6Tトランシーバーの実現を可能にする。3.5D XDSiPはすでに量産段階にある。また、Broadcomは他の業界関係者とともにOCI MSAを設立し、次世代AIインフラ向けのオープン仕様の策定を進めている。OFC 2026にはBroadcomのパートナー30社以上が参加する。

From: 文献リンクBroadcom Showcases Industry-Leading Solutions for Scaling AI Infrastructure at OFC 2026

【編集部解説】

今回の発表を一言で表すなら、「AIインフラのボトルネックを光で突破する」宣言です。

生成AIモデルの学習や推論には、膨大なGPU・XPU同士を高速かつ低遅延でつなぐネットワークが不可欠です。しかし、AIクラスターの規模が10万台、100万台のXPUへとスケールするにつれ、従来の電気配線では物理的・電力的な限界に達しつつあります。Broadcomが今回OFC 2026で披露したのは、まさにその壁を光通信技術で乗り越えるための製品群です。

今回の発表の中核となるのが、光学DSP「Taurus™(BCM83640)」です。これは3nmプロセスで製造された400G/レーンのPAM-4 DSPであり、従来世代の200G/レーンアーキテクチャからレーンあたりの帯域幅を2倍に高めます。この技術的な飛躍により、1.6Tトランシーバーの実用化が可能となるほか、将来的には3.2Tトランシーバー、さらには204.8Tスイッチングプラットフォームへの道も開けます。光学調査会社LightCountingのCEO、ウラジミール・コズロフ氏は「今後5年間で1.6Tおよび3.2Tの光トランシーバーは1億台以上出荷され、そのうち約半数が400G光学技術を採用するだろう」と述べており、市場規模の大きさが伺えます。

スイッチング分野でもBroadcomは一歩先んじています。Tomahawk 6(102.4Tbps)は、前世代のTomahawk 5から帯域幅を2倍に拡大し、サンプル出荷から3四半期未満という異例の速さで量産体制に入りました。1チップで512台のXPUを直結できる点も重要で、「2段階のスイッチ階層で最大128,000台のXPUネットワーク」を構成できることを意味します。スイッチの段数が減れば、それだけレイテンシも下がり、AIの学習・推論ジョブの完了時間が短縮されます。

「オープン標準」へのこだわりも、今回の発表の重要な側面です。Broadcomが参画するOCI MSAは、AMD、Meta、Microsoft、NVIDIA、OpenAIという業界の主要プレイヤーが一堂に加わった設立メンバー6社によるコンソーシアムです。NVIDIAのような半導体大手から、MetaやMicrosoftといったハイパースケーラー、さらにはOpenAIまでが同じテーブルに着いたという事実は、光学ベースのスケールアップ接続が「特定ベンダーの利益」ではなく「業界全体の必然」として認識されていることを示しています。XPUとスイッチを複数サプライヤーの最適な光学技術と自由に組み合わせられる「プラグアンドプレイ」仕様の策定により、クラウド事業者やハイパースケーラーはベンダーロックインを回避しながら次世代AIインフラを構築できる基盤が整いつつあります。

一方で、留意すべき点もあります。今回の多くの製品は「展示・発表」段階であり、Tomahawk 6以外は量産・実運用に至っていないものも含まれます。Taurusについても、ServeTheHomeの報道によれば量産・実運用は2026年後半の見込みとされており、現時点ではアーリーアクセス顧客へのサンプル提供が始まった段階です。また「業界初」という主張はあくまでBroadcom自身の自己評価である点も忘れてはなりません。さらに電力消費の問題は技術が進化しても本質的には拡大しており、ギガワット規模のクラスターがもたらすエネルギー・環境への負荷は、今後の規制議論の焦点になり得ます。

長期的な視点で見ると、光学ベースのスケールアップアーキテクチャへの移行は、半導体・通信・データセンター設計に至るまで、広範な産業構造の変化を予告しています。日本においても、光デバイスや精密加工分野に強みを持つ企業にとって、このトレンドは無視できない商機を秘めているといえるでしょう。

【用語解説】

DSP(デジタル信号処理装置)
Digital Signal Processorの略。光通信において、送受信する信号の変換・補正・整形を担う専用チップ。光モジュールの性能と消費電力を大きく左右する核心部品である。

PAM-4(4値パルス振幅変調)
1つの信号に4つの振幅レベルを持たせることで、従来比2倍のデータを同じ帯域で伝送できる変調方式。高速光通信の標準技術として広く採用されている。

CPO(コパッケージドオプティクス)
Co-Packaged Opticsの略。光学モジュールをスイッチチップと同一パッケージ内に統合する技術。配線距離を極限まで短縮し、消費電力と信号損失を大幅に削減できる。

EML(電界吸収変調レーザー)
Electro-Absorption Modulated Laserの略。高速・高出力な光信号を生成するレーザー素子。400G/レーンのような超高速伝送において、信号品質と電力効率を両立する鍵となる。

VCSEL(垂直共振器面発光レーザー)
Vertical Cavity Surface Emitting Laserの略。チップ表面に対して垂直に光を発するレーザー素子で、低コスト・低消費電力が特徴。短距離・高密度インターコネクトに適している。

スケールアップ/スケールアウト/スケールアクロス
AIクラスターの拡張方式の区分。スケールアップは同一ラック内でのXPU間接続、スケールアウトはラックをまたいだクラスター間接続、スケールアクロスは地理的に分散したクラスター間の広域接続を指す。

SerDes(シリアライザー/デシリアライザー)
Serializer/Deserializerの略。並列データを高速なシリアル信号に変換(またはその逆を行う)回路。チップ間・ボード間の高速通信を支える基盤技術であり、その性能がスイッチ全体のレイテンシや省電力性に直結する。

XPU
GPU・CPU・NPUなど、AIワークロードに用いられる各種演算プロセッサーの総称。特定のアーキテクチャを問わず、AIアクセラレーターを広く指す業界用語として定着しつつある。

MSA(マルチソースアグリーメント)
Multi-Source Agreementの略。複数の企業が共同で策定する相互運用性規格。特定ベンダーへの依存を排し、複数メーカーからの調達を可能にする業界慣行である。

【参考リンク】

Broadcom Inc. 公式サイト(外部)
半導体・インフラソフトウェアを手掛けるグローバル企業。AIインフラ向け製品の技術仕様や最新情報を掲載している。

Broadcom OFC 2026 メディアキット(外部)
OFC 2026におけるBroadcomの展示・講演・パートナーデモをまとめた公式情報ページ。製品詳細やセッション日程も確認できる。

OCI MSA 公式サイト(外部)
AMD・Broadcom・Meta・Microsoft・NVIDIA・OpenAIが設立した光インターコネクト標準化コンソーシアムの公式サイト。技術仕様書のダウンロードも可能。

OFC(光ファイバー通信カンファレンス&展示会)公式サイト(外部)
IEEE・Optica共同主催の光通信分野における世界最大規模の国際学会・展示会。2026年はロサンゼルスで3月15〜19日に開催。

【参考記事】

Broadcom Delivers Industry’s First 400G/lane Optical DSP for Next-Generation AI Networks(外部)
Taurus™(BCM83640)の単独発表リリース。3nmプロセスのPAM-4 DSP仕様と1.6T・3.2Tへのロードマップを詳述。LightCountingによる今後5年で1億台超の市場予測も収録。

Broadcom Now Shipping World’s First 102.4 Tbps Switch in Production Volume(外部)
Tomahawk 6の量産出荷開始を告げる公式リリース。3四半期未満での量産化と最大128,000台XPUネットワーク構成の詳細を記述。

Broadcom Launches Taurus BCM83640 A 3nm 400G Per Lane Optical DSP(ServeTheHome)(外部)
Taurusのモノリシック設計と204.8Tへの一対一マッピングの意義を技術的に解説。量産・実運用は2026年後半見込みとの見方も示す。

AMD, Broadcom, and Nvidia join hyperscalers to define optical scale-up interconnect(Tom’s Hardware)(外部)
OCI MSA設立の経緯と技術的意義を詳報。6社の創設メンバーと共通光PHY上での各社プロトコル共存の構想を俯瞰的に解説。

AMD, NVIDIA, OpenAI & Others Form An Optical Scale-up Consortium(Phoronix)(外部)
OCI MSAの設立メンバー6社を確認できる記事。NVIDIAが自ら設立メンバーとして参加している事実を明記しており、客観的な裏付けとなる。

Broadcom debuts Taurus DSP to power 1.6T optical modules for AI networks(SDxCentral)(外部)
Cisco・Ciena・Marvellなど競合各社の動向も交えた市場分析。TaurusのIMDD方式の技術優位と1.6T市場の競争環境を客観的に解説。

Optical Compute Interconnect (OCI) MSA Aims to Standardize Scale-Up Links(Converge Digest)(外部)
OCI MSAの技術仕様を中立的視点で整理。GEN1からGEN2へのロードマップと最大ファイバー容量3.2Tbpsへのスケーリング計画を具体的に記述。

【編集部後記】

今回のBroadcomの発表、一言でいうと「AIのスピードを上げるための『配管』を、銅から光に切り替えよう」という話です。GPUやXPUがどれだけ賢くなっても、チップ同士をつなぐ経路がボトルネックになっては意味がない。その課題に真正面から挑んだのが、今回披露された製品群です。

個人的に驚いたのは、NVIDIAまでもがBroadcom主導のオープン標準「OCI MSA」に名を連ねていた点です。競合同士が同じテーブルに着いたという事実は、「もはや誰か一社が囲い込める規模ではない」という業界全体の危機感の表れではないでしょうか。AIインフラの戦いは、チップの性能争いだけでなく、「いかにつなぐか」という次のフェーズに突入したと感じています。

投稿者アバター
Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

読み込み中…