advertisements

Crystal社、トヨタ「e-Palette」活用のオンデマンド移動サービス実証実験を名古屋で実施

 - innovaTopia - (イノベトピア)

Crystal株式会社は、トヨタ自動車の次世代モビリティ「e-Palette」を活用したオンデマンド移動サービスの実証実験を名古屋市内で実施する。

実証期間は2026年1月26日から1月30日までの5日間で、運行時間は10:00から17:00まで、13:00から14:00は充電のため運休となる。

ジェイアール東海バス株式会社が車両運行を担当し、Crystal株式会社は予約・運行システムを担当する。

実証実験では、JR名古屋駅広小路口アーバンネット名古屋ビル松坂屋名古屋店南館丸田町交差点付近イオンタウン千種STATION Aiの6拠点を結ぶ予約制デマンドモビリティの有効性を検証する。

乗車定員は9名で、着座6名と立ち3名である。利用者は停留所のQRコードからWeb予約し、スマートフォンの乗車チケットで乗車する。

本企画は2025年3月に開催された「e-Paletteビジネスコンテスト」で優秀賞を受賞した提案を基にしている。

From: 文献リンクCrystal株式会社、トヨタ自動車「e-Palette」を活用したオンデマンド移動サービスの実証実験を名古屋市内で実施

【編集部解説】

今回の実証実験は、愛知県が推進する「e-Paletteビジネスコンテスト」の受賞企画第2弾として実施されます。2025年3月のコンテストで優秀賞を受賞した3社のうち、Crystal株式会社による提案が具現化されたものです。

今回の実証で注目すべきは「オンデマンド運行」という仕組みです。従来の路線バスは時刻表通りに決まったルートを走りますが、オンデマンド運行では利用者の予約に応じて運行ルートが柔軟に変化します。つまり、予約のない停留所は通過し、需要のある場所だけを効率的に結ぶことで、無駄な運行を省きながら利用者の利便性を高められる仕組みです。

使用される「e-Palette」は、トヨタ自動車が2018年のCES 2018で発表したMaaS専用次世代EVです。東京2020オリンピック・パラリンピックで選手村内の巡回バスとして運行された実績があり、2025年9月に一般販売が開始されました。広い室内空間と低床フロア、大開口スライドドアを備え、車椅子利用者を含む多様な利用者に配慮した設計となっています。

今回の実証では、名古屋の都心部6拠点を結ぶルートでオンデマンド運行の有効性を検証します。過疎地での導入事例が多いオンデマンド交通ですが、都心部での検証は異なる意義を持ちます。都市部では既存の公共交通が充実していますが、高齢者の通院や買い物には必ずしも使いやすくない場合があります。このギャップを埋める「ラストワンマイル」の移動手段として、オンデマンド運行がどこまで機能するかが試されます。

この実証実験の背景には、日本社会が直面する構造的課題があります。人口減少や高齢化の進展により、従来の定時定路線型の公共交通を維持することが困難になっています。また、バスやタクシーのドライバー不足も深刻化しており、限られた人員で効率的な運行を実現する必要があります。

Crystal株式会社は、予約・運行システムを担当し、車両・予約・運行データを統合的に管理します。これにより、需要変動に応じた柔軟な運行設計と、従来の定時定路線型運行では難しかった効率性と再現性の両立を目指します。実証を通じて得られるデータは、運行事業者にとっても持続可能な事業モデルの設計に貢献する知見となります。

同社代表の蒼佐ファビオ氏のコメントでは、免許返納後の高齢者が安心して外出できる環境づくりや、アクセル・ブレーキの踏み間違い、突発的な疾患による事故リスクの低減といった観点も言及されています。高齢ドライバーによる事故が社会問題となる中、次世代モビリティによる安全な移動手段の提供は喫緊の課題です。

ただし、オンデマンド交通には課題もあります。事前予約の手間、急な移動への対応の難しさ、利用者1人当たりの運行経費が路線バスより高い傾向などが指摘されています。今回の実証では、これらの課題に対してどのような解決策が見出されるかも注目されます。

日本は世界に先駆けて超高齢化社会を迎えており、ここで確立される技術と運用モデルは、将来的に同様の課題を抱える地域や国々にとっても応用可能な基盤となり得ます。今回の実証実験は、次世代モビリティ社会の実装に向けた重要な一歩と言えるでしょう。

【用語解説】

オンデマンド交通(デマンド交通)
利用者の予約に応じて運行ルートや時間が柔軟に変化する交通サービス。従来の路線バスのように決まったルートと時刻で運行するのではなく、利用者のニーズに応じて効率的に運行する。需要応答型交通システム(DRT:Demand Responsive Transport)とも呼ばれる。路線バスとタクシーの中間に位置する公共交通サービスである。

MaaS(Mobility as a Service)
複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス。移動をサービスとして捉え、利用者の移動ニーズに対応する。日本では観光や医療等の目的地における交通以外のサービスとの連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となっている。

モデルベース開発(MBD)
システムやソフトウェアの開発において、数式やモデルを用いてシミュレーションを行い、設計の妥当性を検証する開発手法。自動車業界では車載システム開発で広く用いられている。

Aichi-Startup戦略
愛知県が2018年10月に策定した、スタートアップを起爆剤としたイノベーション創出を推進する戦略。

【参考リンク】

トヨタ e-Palette公式サイト(外部)
トヨタ自動車が開発した次世代モビリティの公式サイト。車両の特徴や仕様を紹介

STATION Ai公式サイト(外部)
日本最大級のオープンイノベーション拠点。約1,000社が交流する共創空間

Crystal株式会社 公式サイト(外部)
2019年創業の自動車関連ソフトウェア、MaaS開発企業の公式サイト

愛知県スタートアップ推進課(e-Palette関連情報)(外部)
e-Paletteの定期運行や実証実験に関する最新情報を掲載するページ

ジェイアール東海バス公式サイト(外部)
今回の実証実験でe-Paletteの運行を担当するバス事業者の公式サイト

【参考記事】

「e-Palette」を活用した実証実験第2弾を実施します!~都市部におけるオンデマンド型運行オペレーションの検証~ – 愛知県(外部)
愛知県による公式プレスリリース。2026年1月26日からの実証実験詳細を発表

「e-Palette」の定期運行の開始及び実証実験の実施について – 愛知県(外部)
e-Palette定期運行開始とビジネスコンテスト受賞企業による実証実験を発表

トヨタ、次世代モビリティ「e-Palette」を発売 – トヨタ自動車株式会社(外部)
2025年9月のe-Palette販売開始を発表。2027年度レベル4対応を目指す

【編集部後記】

今回の実証実験は、わずか5日間という短期間ですが、都市部でのオンデマンド運行の可能性を探る貴重な機会です。予約のない停留所を通過するという仕組みは、効率性と利便性のバランスをどう取るかという、これからの公共交通が直面する課題そのものです。名古屋という大都市でこの実験がどのような結果を生むのか、そしてそれが私たちの日常の移動にどう影響していくのか、一緒に見守っていきたいと思います。

投稿者アバター
Satsuki
テクノロジーと民主主義、自由、人権の交差点で記事を執筆しています。 データドリブンな分析が信条。具体的な数字と事実で、技術の影響を可視化します。 しかし、データだけでは語りません。技術開発者の倫理的ジレンマ、被害者の痛み、政策決定者の責任——それぞれの立場への想像力を持ちながら、常に「人間の尊厳」を軸に据えて執筆しています。 日々勉強中です。謙虚に学び続けながら、皆さんと一緒に、テクノロジーと人間の共進化の道を探っていきたいと思います。

読み込み中…

innovaTopia の記事は、紹介・引用・情報収集の一環として自由に活用していただくことを想定しています。

継続的にキャッチアップしたい場合は、以下のいずれかの方法でフォロー・購読をお願いします。