ボルボ・カーズは2026年1月15日、新型電動SUV「ボルボEX60」を発表した。1月21日に正式発表されるこのミッドサイズEVは、GoogleのAIアシスタント「Gemini」を搭載した初のボルボ車となる。車両のコアシステム「HuginCore」には、Google、NVIDIA、Qualcomm Technologiesの技術が融合されている。
Qualcomm TechnologiesのSnapdragon Cockpit PlatformとNVIDIA DRIVE AGX Orinを搭載し、毎秒250兆回以上の演算処理能力を備える。ADW仕様では1回の充電で最大810kmの航続距離を実現し、400kW急速充電器を使用すれば10分で最大340km分の充電が可能だ。また、4年間無償の無制限データ通信が提供される。
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次世代EV新型「ボルボEX60」-自然な会話ができるクルマ、誕生

【編集部解説】
ボルボEX60は、自動車産業が迎えている歴史的な転換点を象徴するモデルです。このニュースは単なる新型EVの発表ではなく、自動車が「ソフトウェア定義車両(SDV)」へと本格的に移行する潮流を示しています。
業界調査によれば、2026年現在、自動車メーカーの45%がSDVへの移行を最優先戦略課題に位置づけています。これは先進運転支援システム(25%)や電動化(14%)を上回る数字であり、業界の重心が明確にソフトウェアへシフトしていることを物語ります。SDV市場は2026年の4,700億ドルから2036年には1.19兆ドルへと成長すると予測されており、従来の自動車市場の成長率2.1%を大きく上回る7.0%の年平均成長率が見込まれています。
ボルボEX60の核心技術である「HuginCore」は、まさにこの変革を体現したシステムです。北欧神話の鳥フギンにちなんで名付けられたこのシステムは、電動アーキテクチャ、コアコンピューター、ゾーンコントローラー、ソフトウェアを統合した基盤です。ボルボがこのコアシステムに初めて名称を与えたという事実は、同社がソフトウェアを単なる付加機能ではなく、車両の本質として位置づけていることを示しています。
特筆すべきは、GoogleのGemini AIを標準搭載した初の量産車となる点です。これは単なる音声認識の進化を超えた意味を持ちます。自然な会話による複雑な操作、メール内の情報検索、トランクサイズの確認など、従来のカーナビゲーションやボイスコマンドとは次元の異なる体験を提供します。
処理能力も圧倒的です。毎秒250兆回以上の演算処理能力は、QualcommのSnapdragon Cockpit PlatformとNVIDIA DRIVE AGX Orinの組み合わせによって実現されています。これは従来のボルボ車の中で最高レベルであり、リアルタイムでの高度なAI処理を可能にします。
航続距離810km、400kW充電器で10分充電340km走行という性能も、競合他社を上回る水準です。BMW iX3の805km、メルセデス GLC 400 with EQ Technologyの713kmと比較しても優位性は明確です。なお、元記事では「ADW仕様」と表記されていますが、正しくは全輪駆動を意味する「AWD仕様」です。
しかし、この革新にはリスクも伴います。最も重要な懸念はプライバシーとデータセキュリティです。Geminiは会話データを収集し、一部は人間のレビュアーによって最大3年間保持されます。将来的にはカメラを通じて周囲環境を理解する機能も予定されており、これは利便性と引き換えに膨大な個人情報が収集されることを意味します。
車内での会話、訪問先、運転パターンなど、極めてプライベートな情報がAIシステムに蓄積されていくのです。企業向けWorkspaceではデータ保護が強化されていますが、一般消費者向けのGeminiでは懸念が残ります。ユーザーは自らプライバシー設定を管理し、何がどのように使われるかを理解する必要があります。
また、SDVへの移行は自動車メーカーのビジネスモデルも根本的に変えます。車は「完成品」ではなく、継続的に進化する「プラットフォーム」となります。OTA(無線アップデート)により、購入後も新機能が追加され、性能が向上していきます。これはサブスクリプション型の収益モデルへの道を開きますが、消費者の反発も報告されています。
ボルボEX60は、自動車が単なる移動手段から、AI駆動の知的パートナーへと進化する未来を示しています。その未来は魅力的である一方、プライバシー、セキュリティ、ビジネスモデルの変革という重大な課題も提起しています。1月21日の正式発表では、これらの課題にボルボがどう向き合うのかが注目されます。
【用語解説】
ソフトウェア定義車両(SDV)
Software-Defined Vehicleの略。車両の機能や性能をソフトウェアで制御・更新できる次世代自動車の概念。従来のハードウェア中心の設計から、ソフトウェアを中核に据えた設計へと移行する。無線アップデートにより購入後も継続的に進化する点が特徴だ。
HuginCore
ボルボ・カーズが開発したコアシステムの名称。北欧神話の鳥フギンにちなんで命名された。電動アーキテクチャ、コアコンピューター、ゾーンコントローラー、ソフトウェアを統合し、車両の思考、処理、作動を司る。
OTA(無線アップデート)
Over-The-Airの略。インターネット経由でソフトウェアを更新する技術。スマートフォンのアップデートと同様に、ディーラーに持ち込むことなく、車両の機能追加や性能向上が可能になる。
AWD仕様
All-Wheel Drive(全輪駆動)の略。四輪すべてに駆動力を伝える方式。EX60の場合、AWD仕様で最大810kmの航続距離を実現している。なお、元記事では「ADW仕様」と表記されているが、正しくは「AWD」である。
WLTP
Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedureの略。世界統一排出ガス・燃費試験方法。欧州を中心に採用されている、より実走行に近い条件での試験基準だ。
【参考リンク】
ボルボ・カーズ 日本公式サイト(外部)
スウェーデンの高級自動車メーカー。1927年創業で安全性を最優先する企業理念で知られる。
ボルボEX60 グローバルニュースルーム(外部)
新型EX60の公式発表ページ。1月21日のライブ配信イベント情報や最新の製品詳細を掲載。
Google Gemini(外部)
Googleが開発したAIアシスタント。自然言語での会話が可能で、EX60に標準搭載される。
NVIDIA DRIVE(外部)
NVIDIAの自動運転向けコンピューティングプラットフォーム。EX60にDRIVE AGX Orin搭載。
Qualcomm Snapdragon Digital Chassis(外部)
Qualcommの自動車向け統合プラットフォーム。EX60にはSnapdragon Cockpit Platformを搭載。
【参考記事】
Software-defined Vehicles Adoption: 4 Dimensions & Leading OEM(外部)
IoT Analyticsによる2026年版SDV採用レポート。自動車メーカーの45%がSDV移行を最優先戦略課題としている。
The Global Software-Defined Vehicles (SDV) Market 2026-2036(外部)
SDV市場の包括的分析レポート。2026年の4,700億ドルから2036年には1.19兆ドルへ拡大と予測。
Volvo EX60 Debuts With Google Gemini AI – The EV Report(外部)
EX60の技術仕様を詳細に報道。WLTP基準で最大810kmの航続距離など性能データを掲載している。
The New EX60 Is The First Volvo To Talk Back At You | Carscoops(外部)
EX60と競合車種の航続距離を比較。BMW iX3の805km、メルセデスGLC 400の713kmと対比している。
Top SDV trends for 2026: Insights from Eclipse SDV Ambassadors(外部)
2026年のSDV動向予測。世界販売車両の約15%が真のSDVとなり、25〜30%がSDV隣接車両になると予測。
MotorTrend Announces Winners of the 2026 Software-Defined Vehicle Innovator Awards(外部)
2026年SDVイノベーター賞の受賞者発表。テスラ、トヨタ、BMWなど16社から20名が選出された。
Is Gemini AI Safe or a Security Risk to Your Business? | Metomic(外部)
Gemini AIのセキュリティとプライバシーリスクを分析。人間レビュアーによる最大3年間の会話データ保持など懸念点を詳述。
【編集部後記】
自動車が「会話するパートナー」になる未来は、みなさんにとって魅力的でしょうか。それとも少し不安でしょうか。
AIアシスタントの便利さと引き換えに、車内での会話や行動パターンといった極めてプライベートな情報が収集されることになります。スマートフォンでさえプライバシーに悩む私たちが、さらに密接な空間である車でこの技術とどう向き合うべきか。1月21日のEX60正式発表では、ボルボがこの課題にどんな答えを示すのか、一緒に見守りたいと思います。みなさんは、進化し続ける車に何を期待し、何を心配されますか。



































