飲酒運転防止の「次の一手」が動き出した。セイコーソリューションズが2026年2月に投入する新モデルは、アルコールインターロック機能に特化した導入しやすい製品と、従来対応できなかった物理キー車両へも展開できるモデルの2種類で、日本の法人車両管理市場の裾野を大きく広げる。
セイコーソリューションズ株式会社は、法人向けトータル車両管理ソリューション「Mobility+」から、新モデル「Mobility+Lite」と「Mobility+S」の2種類を2026年2月より提供開始する。
Mobility+は2025年7月にリリースされた。Mobility+Liteはアルコールインターロック機能のみを提供する特化型モデルである。Mobility+Sはシリンダーキー(物理キー)対応モデルで、従来のスマートキーに加え物理キーにも対応する。アルコールインターロック機能は、アルコールチェッカーの結果が一定の基準値を上回るとエンジンがかからなくなる仕組みである。
本サービスはINDICUS SOFTWARE PRIVATE LIMITEDが提供する「Contineo」をベースに開発されたテレマティクスプラットフォームを使用している。料金体系は車両1台ごと月額での契約となる。
【編集部解説】
セイコーソリューションズが発表した新モデルは、日本の法人車両管理市場における重要な転換点を示しています。2023年12月に施行された改正道路交通法により、アルコールチェックが義務化されましたが、今回の製品は「チェック」から一歩進んだ「物理的な飲酒運転の防止」という次のステージへと企業を導く存在です。
Mobility+Liteは、アルコールインターロック機能に特化したモデルとして、導入のハードルを下げる戦略的な製品です。フル機能版のMobility+は車両予約やデジタルキーなど多機能ですが、「まずは飲酒運転防止だけを確実に」というニーズに応えます。機能を絞ることで価格面でも導入しやすくなり、中小企業やコンプライアンス強化を急ぐ企業にとって現実的な選択肢となります。
一方、Mobility+Sの物理キー対応は、市場の裾野を大きく広げる重要な進化です。従来はスマートキー車両のみが対象でしたが、日本の商用車市場には物理キーの車両が数多く残っています。対応車種の拡大により、運送業、建設業、地方自治体など、幅広い業種での導入が現実的になりました。
日本では約3,200台と普及が遅れていました。その最大の理由は、日本では違反者への義務化がなく、企業の自主的な安全対策として導入されているためです。しかし、2023年のアルコールチェック義務化を契機に、企業のコンプライアンス意識が高まり、「チェックだけでは不十分」という認識が広がりつつあります。
技術面では、セイコーソリューションズがインド企業INDICUS SOFTWARE PRIVATE LIMITEDの開発したローコード・ノーコードプラットフォーム「Contineo」を採用している点が注目されます。Contineoは、IoTビッグデータとAIを統合したマルチテナント型プラットフォームで、開発期間とコストを約3分の1に短縮できるとされています。セイコーソリューションズは2024年8月21日にIndicus Softwareと業務提携を締結しており、今回の新モデル投入は、この提携の具体的な成果といえます。
今回の新モデル展開は、市場の多様なニーズに応える「製品ポートフォリオ戦略」の好例です。フル機能版、特化型、物理キー対応版という3つの選択肢を提供することで、企業規模、予算、車両タイプに応じた最適なソリューションを選べるようになりました。この戦略により、セイコーソリューションズは日本の法人車両管理市場において、アルコールインターロックの本格的な普及を牽引する立場を確立しつつあります。
【用語解説】
アルコールインターロック
呼気中のアルコール濃度を測定し、一定基準値を超えた場合にエンジンの始動を物理的に阻止する装置。飲酒運転を未然に防ぐ目的で開発され、海外では飲酒運転違反者への装着義務化が進んでいる。日本では主に企業の自主的な安全対策として導入されている。
テレマティクス
通信(Telecommunication)と情報科学(Informatics)を組み合わせた造語。車両に通信機器を搭載し、位置情報や走行データをリアルタイムで収集・管理するシステム。車両管理、安全運転支援、効率的な配車などに活用される。
Contineo(コンティネオ)
INDICUS SOFTWARE PRIVATE LIMITEDが開発したローコード・ノーコード開発プラットフォーム。IoTビッグデータとAIを統合したマルチテナント型のシステムで、開発期間とコストを約3分の1に短縮できる。デジタルファクトリ、テレマティクス、医療、スマートシティなど多分野で導入実績がある。
ローコード・ノーコード開発
プログラミングの知識がほとんどなくても、視覚的な操作やドラッグ&ドロップでアプリケーションを開発できる手法。開発期間の短縮とコスト削減が可能で、ビジネスユーザー自身がシステムを構築できる点が特徴。
【参考リンク】
車両管理システム Mobility+(モビリティプラス)(外部)
セイコーソリューションズの公式製品ページ。アルコールインターロック機能やデジタルキーなど詳細な機能説明を掲載。
Contineo – ローコード開発プラットフォーム(外部)
INDICUS SOFTWAREが提供するContineoの公式サイト。プラットフォームの機能や導入事例、技術情報を紹介。
アルコールインターロック装置の活用方策の検討のための基礎的調査(外部)
国土交通省による2007年の調査報告書。アルコールインターロックの技術仕様や海外事例、導入課題を詳述。
アルコール・インターロック.com(外部)
日本のアルコールインターロック法制化を目指す活動を推進する特設サイト。海外事例や技術情報を網羅的に提供。
【参考動画】
【参考記事】
セイコーソリューションズ、トータル車両管理ソリューション「Mobility+」をお披露目(外部)
2025年のAUTOMOTIVE WORLDでの展示レポート。実車デモや機能詳細を取材した業界専門メディアの記事。
累計出荷台数が3200台を超える。車載型飲酒運転防止システム出荷実績(外部)
東海電子による2023年度のアルコールインターロック装置出荷実績報告。日本市場の普及状況を数値で確認できる。
Business partnership between Seiko Solutions and Indicus Software(外部)
2024年8月21日発表の業務提携に関するプレスリリース。Contineoプラットフォーム活用の背景と戦略を解説。
アルコールインターロック、理想と現実。 – 運輸安全JOURNAL(外部)
日本における政策動向と課題を詳細に分析。2011年からの制度変遷と普及が進まない背景を考察した専門記事。
アルコール・インターロックとは?義務化の動向や価格、導入方法も解説(外部)
企業向けにアルコールインターロックの基礎知識から導入方法まで実践的に解説。海外との比較も充実している。
【編集部後記】
アルコールインターロックは「性善説から性悪説へ」という単純な話ではなく、「人間の意志と物理的な制約」という古くて新しいテーマを私たちに突きつけています。皆さんの会社では、安全管理とテクノロジーの関係をどう捉えていますか。
チェックだけで十分なのか、それとも物理的な制御が必要なのか。この問いに正解はないかもしれません。しかし、技術が進化する今だからこそ、改めて「企業が守るべきものは何か」を考える機会ではないでしょうか。



































