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BMW × NTTドコモビジネス、100カ国超のグローバル受注—2022年の「日本初」が4年で世界基準へ

[更新]2026年3月11日

2026年3月6日、NTTドコモビジネス(NTTグループ傘下)が、BMWが2026年以降にグローバルで発売する新型EVに搭載するコネクテッドカー向け通信システムの契約を獲得したことが明らかになった。

ドイツ大手通信会社との競合を制しての受注となる。同技術はまず次世代EVシリーズ「ノイエ・クラッセ」の第一弾モデルiX3に搭載され、100カ国以上(米国・中国を除く)への展開が見込まれる。eSIMを活用して複数国のモバイルネットワークに安定接続し、交通情報や車両状態などをリアルタイムで外部システムと交換する。

OTAアップデートにも対応し、販売後の機能追加も可能だ。NTTドコモビジネスは2022年にBMWへこのシステムを提案しており、今後発売される同シリーズ全車(少なくとも6車種、2027年までに)への採用拡大が予定されている。

From: BMW selects NTT Docomo for smart-car connectivity in EVs(Just Auto、2026年3月9日)

【編集部解説】

2022年3月、株式会社NTTドコモ(コンシューマ向け)とBMWが日本向けのコネクテッドカーサービスを発表しましたが、そのコネクテッドカービジネスを担うNTT側の主体はNTTコミュニケーションズ(現:NTTドコモビジネス)でした。対象はBMW iXとBMW i4に限られた、日本国内向けの取り組みでした。それから約4年—今回の報道は、その協業がまったく別のスケールへと進化したことを示しています。舞台は日本国内から「100カ国以上」のグローバル市場へ。通信の相手は個人ユーザーのスマートフォンから、車両そのものの基幹システムへ。この変化の意味を、少し丁寧に読み解いてみましょう。

注目すべき第一のポイントは、NTTドコモビジネスが「ドイツの大手通信会社との競合を制した」という事実です。BMWはドイツ企業であり、これまでドイツの通信インフラ企業がその車載通信システムを支えてきました。そこへ日本発の通信技術が入り込んだことは、自動車業界における「通信」という領域の競争がいよいよグローバル化したことを意味します。経済安全保障の観点から基幹システムを国外企業に委ねることへの慎重論もある中で、BMWがNTTを選んだ背景には、2022年から4年間にわたる実績の積み重ねと、グローバルネットワーク網の信頼性があったと考えられます。

第二のポイントは、「SDV(ソフトウェア定義車両)」との接続です。BMW iX3は単なるEVではなく、「スーパーブレイン」と呼ばれる4基の高性能コンピュータを搭載し、ソフトウェアによってほぼすべての機能を制御・更新できる次世代車両です。NTTドコモビジネスが提供するプラットフォームは、このSDVの「神経系」となるコネクティビティ基盤を担います。OTAアップデートを通じて販売後も機能が進化するクルマには、常時・安定・グローバルにつながる通信基盤が不可欠であり、そこに通信キャリアの新たな役割があります。

第三のポイントは、「米国と中国が除外される」という地政学的背景です。米国向けにはKDDIのシステムが採用されるとされており、市場ごとに異なる通信インフラパートナーを組み合わせる戦略が見えます。自動運転や車両データのセキュリティをめぐる各国規制が厳しくなる中、車載通信システムはもはや単なる技術製品ではなく、安全保障・データ主権とも絡む政治的な問題です。BMWとNTTの協業が100カ国超に広がる一方で、中国・米国を外した「選択と集中」の構図は、今後の業界再編を占う試金石になるかもしれません。

2022年の発表時点では「月額550円のワンナンバーサービス」という個人向けのサービスとして伝えられた協業が、4年後には「ドイツ大手通信会社を打ち負かしたグローバル基幹インフラ受注」へと化けました。クルマがスマートフォンのようにソフトウェアで進化する時代、通信キャリアは「電波を売る会社」から「モビリティの脳神経を設計する会社」へと変わりつつあります。

【用語解説】

SDV(Software Defined Vehicle:ソフトウェア定義車両) 
車両の機能や性能がハードウェアではなくソフトウェアによって定義・制御される次世代自動車のこと。購入後もOTAアップデートで機能を追加・改善できる点がスマートフォンと似ており、「走るスマートフォン」とも表現される。2026年は日本でもSDV化が本格化する年として注目されている。

Neue Klasse(ノイエ・クラッセ) 
ドイツ語で「新しいクラス」を意味するBMWの次世代車両シリーズの名称。1960年代にBMWの経営危機を救った歴史的車名を現代に復活させたもの。新型iX3を第一弾として、2027年末までにNeue Klasseの技術を採用した新型車・マイナーチェンジ車を合わせて40モデル前後まで拡大する計画。EV専用アーキテクチャ・高性能コンピュータ「スーパーブレイン」・BMW OS Xを核とする全面刷新が特徴。

OTA(Over-the-Air)アップデート 
無線通信を通じて車両のソフトウェアを遠隔更新する技術。ディーラーへの入庫なしに、セキュリティパッチや新機能を車両へ配信できる。SDVの根幹をなす技術であり、テスラが先行実装したことで業界標準となりつつある。日本では2020年の道路運送車両法改正によって法的に整備された。

NTTドコモビジネス 
2025年7月にNTTコミュニケーションズが社名変更して誕生した、NTTグループの法人向け通信・ICTサービス会社。コンシューマ向けのNTTドコモとは別組織。BMW向けにグローバルコネクテッドカーサービスを提供するほか、IoT・クラウド・セキュリティなど幅広い法人ITサービスを展開している。

eSIM(Embedded SIM) 
物理的なSIMカードを挿入する必要がなく、機器に組み込まれた形で遠隔からキャリア設定を書き込めるSIMのこと。車載用途では、1台の車両に複数の「eSIM機能」を持たせ(テレマティクス用とコンシューマ用など)、それぞれが独立して動作するDSDA(Dual-SIM-Dual-Active)構成が採用されることがある。

MoU(Memorandum of Understanding:覚書) 
企業や組織が協力関係の意向を確認するために締結する文書。法的拘束力は弱いが、今後の正式契約や協業に向けた意思表明として重要な位置づけを持つ。本記事では、BMWとCATL(中国の世界最大手電池メーカー)がバッテリーデータ連携・脱炭素に関するMoUを北京で締結したことが言及されている。

【参考リンク】

NTTドコモビジネス 公式サイト(外部)
本記事の主役。NTTコミュニケーションズが2025年7月に社名変更した法人向けICT・通信サービス会社。BMW向けグローバルコネクテッドカーシステムを手がける。

BMW コネクテッド・ドライブ 公式ページ(日本語)(外部)
BMWが提供するデジタルサービス・コネクティビティ機能の総合案内。今回のeSIM接続サービスが位置づけられる上位の枠組み。

NTT OPEN HUB「世界の自動車メーカーが舵を切るSDV」(2026年1月30日)(外部)
NTT自身がSDV時代における通信基盤の役割を解説した記事。BMW協業の経緯(4つのプロジェクト)も詳述されており、本記事の理解を深める一次資料として最適。

【参考記事】

Nikkei Asia「BMW adopts smart-car tech from Japan’s NTT for global EV」(2026年3月6日)(外部)
「ドイツ勢独占を崩す」「経済安全保障上の異例案件」というフレーミングの出典。Just Autoが一次ソースとして引用した記事

NTT OPEN HUB「世界の自動車メーカーが舵を切るSDV。その進化に通信事業者が示す存在感とは」(2026年1月30日)(外部)
BMW協業の4つのプロジェクト全容(2022年日本向けサービス→グローバル受注まで)と、NTTドコモビジネスがBMWに提案した経緯を確認。

BMW Group Press Release「The new BMW iX3 – The start of a new era」(外部)
「月額550円のワンナンバーサービス」「BMW iXとi4が対象」「DSDA技術」など、2022年当時の日本向けサービスの詳細。解説冒頭の「4年前はこうだった」という比較の根拠。

編集部後記

「2022年の日本発の実証が、4年後には100カ国超のグローバル基盤を受注した」—この事実をどう読みますか?クルマが走りながらソフトウェアで進化する時代、通信の役割はますます大きくなっています。

その一方で、車両データをどの国の、どの企業が管理するのかという問いは、私たちの生活に静かに影響を与え始めています。技術の進歩と、その先にある課題を、一緒に考えていただけると嬉しいです。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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