SK Hynixは9月12日、HBM4メモリの開発完了と大量生産準備開始を発表した。
この発表によりSK Hynixの株価は7%上昇した。NvidiaのRubinファミリーとAMDのInstinct MI400ファミリーの両GPUが2026年のリリースに向けてHBM4を採用する予定である。
現在のHBM技術は約36GBの容量とモジュール当たり約1TB/sの帯域幅が上限となっている。NvidiaのB300やAMDのMI355Xは約8TB/sの総メモリ帯域幅を持つ。
HBM4移行により、NvidiaのRubin GPUは288GBのHBM4を搭載し13TB/sの総帯域幅を達成する。AMDのMI400シリーズは最大432GBのHBMを搭載し20TB/sに近い総帯域幅を実現する。
SK HynixはI/O端子数を2,048個に倍増させHBM3eの2倍とし、エネルギー効率を40%以上向上、10Gb/sの動作速度を達成したと発表した。
Micronは、2025年初頭に36GB 12段HBM4スタックのサンプリングを開始し、2026年に量産を開始する予定であると発表した。
From: SK Hynix says its HBM4 is ready for mass production
【編集部解説】
AI業界にとって、この発表が持つ意味は想像以上に大きいものです。SK HynixのHBM4量産準備完了は、単なる一企業の技術的マイルストーンではなく、AI革命の次なるフェーズへの扉を開く重要な節目と言えるでしょう 。
現在のAI開発における最大のボトルネックは、実は演算処理能力よりもメモリの帯域幅にあります。大規模言語モデルの学習や推論では、膨大なパラメータを高速でアクセスする必要があり、従来のメモリ技術では限界に達していました 。HBM4はこの「メモリウォール」問題を根本的に解決する技術として期待されています。
技術的な進歩の核心は、I/O端子数の倍増にあります。HBM3eの1,024ビットから2,048ビットへの拡張により、理論上の帯域幅は2TB/sまで向上し、これは従来の2倍の性能を意味します 。さらに注目すべきは、SK HynixがJEDEC標準の8Gb/sを上回る10Gb/s以上の動作速度を実現している点で、これにより実際の性能はさらに高くなる可能性があります。
2026年という時期設定も戦略的に重要です。NvidiaのRubinアーキテクチャとAMDのMI400シリーズが同時期にリリース予定で、両社ともHBM4を前提とした設計となっています 。特にAMDのMI400は432GBのHBM4を搭載し、19.6TB/sという驚異的な帯域幅を実現予定で、業界の期待は高まっています。
ただし、課題も存在します。消費電力の問題は深刻で、消費電力の問題は深刻で、例えばAMD Instinct MI300XのTDPは750Wに達します。後継製品ではさらに消費電力が増加する可能性があり、SK Hynixがエネルギー効率を改善したと発表していますが、絶対的な消費電力の増加は避けられない見通しです。SK Hynixはエネルギー効率を40%以上改善したと発表していますが、絶対的な消費電力の増加は避けられず、データセンターの電力インフラへの負荷は増大するでしょう。
市場競争の観点では、SK Hynixが約60%のHBMシェアを維持する見込みですが、SamsungやMicronも追い上げを図っており、特にSamsungにとってはNvidiaのビジネスを獲得する新たな機会となっています 。この競争は価格低下と技術革新を促進し、最終的にはAI技術の民主化につながる可能性があります。
【用語解説】
HBM(High Bandwidth Memory) – GPUやAIアクセラレータに使用される高帯域幅メモリで、従来のDDR4やDDR5と比べて数十倍の帯域幅を実現する。メモリチップを垂直に積層し、TSV(Through Silicon Via)技術で接続することで実現される。
JEDEC標準 – 電子工業会連合が策定する半導体の国際標準規格。メモリの動作速度、電圧、信号仕様などを定義し、メーカー間の互換性を保証する役割を担う。
I/O端子 – メモリとプロセッサ間でデータをやり取りする入出力端子。端子数が多いほど並列にデータ転送でき、帯域幅が向上する。HBM4では2,048ビットの広帯域インターフェースを実現する。
積層構造(スタック) – HBMでは複数のメモリダイを垂直に重ねる構造を採用。12段(12-Hi)や16段などの表記で、積層数が多いほど容量が増加するが技術的難易度も高まる。
TSV(Through Silicon Via) – シリコンウェハーを貫通する微細な配線技術。HBMの積層構造を実現する核心技術で、各層のメモリチップを電気的に接続する。
【参考リンク】
SK hynix 公式サイト(外部)
韓国の世界第2位メモリ半導体メーカー。AI・サーバー・モバイル向けメモリソリューション提供
NVIDIA データセンター(外部)
AI・ディープラーニング向けGPUアクセラレータのリーディングカンパニー公式サイト
AMD Instinct アクセラレータ(外部)
AMDのデータセンター向けGPUアクセラレータシリーズ製品情報ページ
【参考記事】
SK hynix Completes World-First HBM4 Development(外部)
SK Hynix公式発表による技術仕様と量産計画の詳細解説記事
Nvidia-supplier SK Hynix readies production for cutting-edge HBM4 chips(外部)
CNBCによるHBM市場分析とSK Hynixの約60%シェア状況報告
2026年投入「Instinct MI400」は性能2倍(外部)
AMD MI400シリーズの432GB HBM4搭載と19.6TB/s帯域幅の技術詳細
SK Hynix says readying HBM4 production as it seeks to retain lead(外部)
ロイター通信によるSK Hynix・Samsung・Micronの競争状況分析
【編集部後記】
HBM4の登場により、私たちの身の回りの技術がどう変わっていくか、想像してみませんか。AIがより身近になり、スマートフォンのカメラでリアルタイム翻訳や画像生成ができるようになったり、自動運転車の反応速度が格段に向上したりと、これまで不可能だったことが日常になるかもしれません。
皆さんが最も期待するAI技術の進歩は何でしょうか?また、この高性能メモリが普及することで心配になる点はありますか?ぜひSNSで教えてください。技術の恩恵を受ける一方で、エネルギー消費の課題なども一緒に考えていけたらと思います。