SpaceXのイーロン・マスクCEOは2026年1月26日、Starshipロケットの12回目の試験飛行を早ければ3月に実施する計画を明らかにした。今回の飛行はテキサス州南部のStarbase施設の新設されたPad 2からの初打ち上げとなる。
さらに重要なのは、Starshipの第3バージョンが初めて飛行することである。新バージョンは全高が123.3メートルから124.4メートルに増加し、より大きなペイロード容量と軌道上での燃料移送用の新しいドッキングアダプターを搭載している。
Starshipは打ち上げ時に1700万ポンドの推力を生成し、Falcon 9の約10倍の推力を持つ世界最強のロケットである。このロケットは2027年以降に予定されているNASAのArtemis IIIミッションで月面着陸船として使用される予定で、1972年以来初の有人月面着陸を実現する計画だ。
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Elon Musk shares target date for Starship rocket’s next flight – Digital Trends
【編集部解説】
SpaceXがStarshipの次回飛行となる12回目の試験飛行を3月に計画していることが判明しました。イーロン・マスクCEOがX上で「6週間後に打ち上げ」と予告したことで、宇宙開発コミュニティに注目が集まっています。
今回の飛行が特に重要なのは、Starshipの第3バージョン(Block 3)が初めて飛行することです。Block 3は従来のBlock 2から大幅なアップグレードを受けており、全高が123.3メートルから124.4メートルへわずかに増加しました。しかし真の革新は内部にあります。
最大の注目点は、Raptor 3エンジンの初飛行です。このエンジンは前世代のRaptor 2と比較して推力が230トンから280トンへと21%増加しながら、エンジン質量は1,630kgから1,525kgへと約7%軽量化されています。つまり、より軽く、より強力になったということです。Raptor 1と比べると、推力は51%増加しながら質量は36%も軽くなっており、SpaceXのエンジン技術の驚異的な進化を示しています。
Raptor 3の設計は大幅に簡素化されており、外部配管やセンサーの多くが内蔵されました。これにより製造コストの削減と生産速度の向上が実現し、「迅速な再利用」を可能にする設計となっています。エンジン外部のヒートシールドも不要になり、メンテナンスの必要性が大幅に低減されました。
また、今回の打ち上げは建設中の新しいPad 2からの初めての打ち上げとなります。SpaceXは現在、テキサス州のStarbaseに2つの発射台、フロリダ州のケネディ宇宙センターのLC-39Aに1つ、そしてケープカナベラル宇宙軍基地のSLC-37に2つの発射台を建設しており、最終的に5つの発射台を持つことになります。これにより、飛行頻度を大幅に増やすことが可能になります。
さらにBlock 3では、ペイロード容量の増加と、軌道上での燃料移送のための新しいドッキングアダプターが搭載されています。この燃料移送技術は、Starshipが月やそれ以遠へのミッションを遂行する上で不可欠な要素です。
このStarshipは、NASAのArtemis IIIミッションで月面着陸船として使用される予定です。Artemis IIIは1972年以来初めて人類を月面に着陸させるミッションで、現在2027年以降に予定されています。ただし、この計画には課題もあります。2025年10月、NASAのショーン・ダフィー長官代行は、SpaceXのStarshipの開発遅延を理由に、他社にも月面着陸船の開発競争を開放すると発表しました。
SpaceX自身のタイムラインによれば、Starship間での軌道上燃料補給実証は2026年6月、無人月面着陸は2027年6月を目標としています。Artemis IIIで必要となる月面着陸には、Starshipに最大12回の軌道上燃料補給が必要とされており、この技術の実証が重要な鍵となります。
2025年はStarshipにとって試練の年でもありました。5回の全段試験飛行のうち、宇宙船が着陸に成功したのは2回のみ。特に2025年11月にはBooster 18が地上試験中に破壊される事故が発生しました。
Starshipは打ち上げ時に1,700万ポンド(約7,500トン)の推力を生成し、主力ロケットFalcon 9の約10倍の推力を持つ、史上最強のロケットです。この圧倒的なパワーと再利用性により、SpaceXは将来的に火星への有人飛行も視野に入れています。
3月の12回目飛行は、SpaceXにとって重要な節目となります。Block 3の初飛行、Raptor 3エンジンの実証、新発射台の初使用という複数の「初めて」が組み合わさった、技術的に極めてチャレンジングなミッションです。成功すれば、Artemis IIIに向けた大きな前進となり、人類の月への帰還がまた一歩近づくことになります。
【用語解説】
Starship Block 3
SpaceXのStarship宇宙船の第3世代バージョン。Block 2から全高が1.1メートル増加し124.4メートルとなり、ペイロード容量の増加、新型Raptor 3エンジンの搭載、軌道上燃料移送用ドッキングアダプターの追加などの改良が施されている。
Raptor 3エンジン
SpaceXが開発したメタン/液体酸素を推進剤とするフルフロー二段燃焼サイクルエンジンの第3世代。推力280トン、比推力350秒、エンジン質量1,525kgという性能を持ち、前世代から大幅な軽量化と推力向上を実現している。
Super Heavy
Starshipの第1段ブースター。最大33基(Block 3では最大35基の搭載が可能)のRaptorエンジンを搭載し、打ち上げ時に約7,500トンの推力を生成する。
軌道上燃料移送
宇宙空間で2機の宇宙船間で推進剤を移送する技術。Starshipが月や火星へのミッションを遂行するために不可欠で、Artemis IIIでは最大12回の燃料補給が必要とされる。
near-rectilinear halo orbit (NRHO)
月の周回軌道の一種で、月の南極と北極の上空を通る楕円軌道。Artemisプログラムで使用される軌道で、Lunar Gatewayや月面着陸船との会合点として利用される。
フルフロー二段燃焼サイクル
酸化剤と燃料の両方を予燃焼させてタービンポンプを駆動するロケットエンジンのサイクル。推力と効率を最大化できる最も複雑なエンジンサイクルで、Raptorは飛行に成功した世界初のフルフローエンジンである。
【参考リンク】
SpaceX公式サイト(外部)
Space Exploration Technologies Corp.の公式ウェブサイト。Starship、Falcon 9、Dragon宇宙船などの開発状況や打ち上げスケジュールを提供。
NASA Artemis IIIミッション公式ページ(外部)
NASAの月探査プログラムArtemis IIIの公式情報。1972年以来初の有人月面着陸ミッションの詳細と科学目標を掲載。
NASASpaceFlight.com(外部)
宇宙開発の詳細な技術情報を提供する独立系メディア。Starshipの開発状況やテスト飛行の詳細なカバレッジを提供している。
【参考記事】
Flight 12 vehicles readying for 2026 opener(外部)
Booster 19とShip 39の組み立て状況を詳細に報告。Block 3の技術仕様やRaptor 3エンジンの開発状況について掲載。
SpaceX Starship V3 gets launch date update from Elon Musk(外部)
イーロン・マスクによる6週間後の打ち上げ発表を報道。Raptor V3エンジンの性能向上と製造コスト削減について詳述。
Raptor 3 Starship engine is lighter, less complicated yet more powerful and reusable(外部)
Raptor 3の設計簡素化、外部配管の内蔵化、3Dメタルプリント技術の活用について詳述した技術記事。
SpaceX Starship timeline delays astronaut moon landing for NASA’s Artemis 3 mission to 2028: Report(外部)
SpaceXの内部文書により、軌道上燃料補給実証、無人月面着陸、有人月面ミッションの実施時期について報道。
NASA Opens Competition for Artemis III Lunar Lander(外部)
NASAがStarshipの開発遅延を理由に、Blue Originなど他社にもArtemis IIIの月面着陸船開発競争を開放したことを報道。
【編集部後記】
人類が再び月を目指す歴史的な瞬間が、着実に近づいています。Starship Block 3という新世代の宇宙船は、単なる技術的アップグレードではなく、私たちが宇宙へアクセスする方法そのものを変革する可能性を秘めています。Raptor 3エンジンの推力向上と軽量化、そして完全再利用を前提とした設計思想は、宇宙旅行のコスト構造を根本から変えるかもしれません。3月の試験飛行は、技術的な挑戦の連続となるでしょう。しかし、その先には2027年のArtemis III、そしてさらにその先の火星探査という壮大なビジョンが広がっています。みなさんは、この宇宙開発の新時代において、どのような可能性に最も期待されますか。






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