advertisements

アルテミスII、発射カウントダウン中──53年ぶりの有人月ミッション、日本時間4月2日午前7時24分に打ち上げウィンドウ開幕

[更新]2026年4月2日

【8:05追記】発射成功——アルテミスIIが宇宙へ

日本時間2026年4月2日午前7時35分(EDT午後6時35分)、NASAのアルテミスIIが打ち上げウィンドウ開幕から11分後に発射に成功した。

打ち上げ直前、飛行終了システム(FTS)との通信ハードウェアに問題が発生し、一時「ノーゴー」判定となった。しかしエンジニアチームがスペースシャトル時代の機材を活用して迅速に解決。また打ち上げ脱出システム(LAS)バッテリーの温度異常も、計測機器の誤検知と判明し、発射に影響しなかった。

NASAの女性初の打ち上げディレクター、チャーリー・ブラックウェル=トンプソンは発射前にクルーへこう呼びかけた。「リード、ビクター、クリスティーナ、ジェレミー——この歴史的ミッションに、アルテミスチームの魂と、アメリカ国民そして世界のパートナーたちの勇気ある精神、そして新世代の希望と夢を乗せて送り出します。幸運を祈ります、アルテミスII、頑張れ!」。

SLSロケットは発射から約1分以内に超音速(時速約1,235km)に達し、クルーを搭載したOrion「Integrity」は地球低軌道に向けて上昇中だ。今後24時間は地球周回軌道でOrionの生命維持システムの検証を行い、全システム正常を確認後に月への軌道投入燃焼(TLI)が実施される。スプラッシュダウンは4月10日、太平洋上を予定している。

1972年のアポロ17号以来、53年ぶりに人類が深宇宙へ旅立った。


NASAは2026年3月26日、アルテミスIIミッションの打ち上げカウントダウン手順を公開した。ミッションにはリード・ワイズマン、ビクター・グローバー、クリスティーナ・コーク、およびCSAの宇宙飛行士ジェレミー・ハンセンの4名が搭乗する。フロリダ州ケネディ宇宙センターの打ち上げチームは、打ち上げ約49時間50分前にステーションへ到着し、カウントダウンを開始する。

カウントダウンはLマイナスとTマイナスの2種類の時間軸で管理され、複数の組み込みホールドが設けられている。T-0でブースターが点火し、リフトオフとなる。本ミッションはアルテミス計画初の有人飛行であり、月周回と将来の火星有人探査に向けたシステム検証を目的とする。

From: 文献リンクNASA Releases Artemis II Moon Mission Launch Countdown

NASA公式プレスリリースより引用

【編集部解説】

今回NASAが公開したのは、アルテミスIIミッションの打ち上げカウントダウン手順書です。一見すると技術的な作業リストに見えますが、その行間には「人類の宇宙への帰還」という壮大な物語が刻まれています。

まず、このドキュメントが持つ意味を確認しましょう。アルテミスIIは、1972年のアポロ17号以来、初めて人類が低軌道を超えて宇宙に向かう有人ミッションです。実に53年以上のブランクを経て、人類がふたたび深宇宙へと踏み出す瞬間を、このカウントダウン手順書は緻密に定義しています。

カウントダウンには「Lマイナス」と「Tマイナス」という2種類の時間軸が存在します。前者は実際の時刻の流れ、後者は手順のシーケンスを管理するものです。約50時間にわたって続くこのプロセスは、単なる「秒読み」ではありません。液体水素・液体酸素の充填から、電源系統の切り替え、自動シーケンサーへの引き渡しまで、数百にのぼる手順が厳密に積み重なった「精密な儀式」です。

技術的な観点で注目すべきは、ターミナルカウント(T-10分以降)の設計です。この時点から地上打ち上げシーケンサー(GLS)と呼ばれる自動システムがバルブ動作やタンク加圧、システム切り替えなど数百の指令を連続的に実行し、ロケットをリフトオフ直前の状態へ追い込みます。T-1分30秒でコアステージは内部電力へ切り替わり、この時刻以降にカウントダウンが止まった場合は、その日の打ち上げはスクラブ(中止)となります。人間の判断が実質的に及ぶのはこのT-1分30秒付近までであり、その先の秒単位の制御は自動シーケンスが担う――この設計は、宇宙開発における「人間と自動化システムの役割分担」の最前線と言えるでしょう。

ミッション自体の意義も押さえておく必要があります。ビクター・グローバーは有色人種として、クリスティーナ・コークは女性として、そしてジェレミー・ハンセンは米国人以外として、それぞれ初めて低軌道を超えて宇宙へ向かう宇宙飛行士となります。また、月から約7,600km先まで到達し、大気圏再突入速度は約40,000km/hに達する見込みで、有人飛行の距離・速度の両記録を更新します

このミッションは月面着陸ではなく、あくまで「テストフライト」です。生命維持、通信、深宇宙航法のシステムを検証するための証明飛行であり、その成否が2028年以降に予定されるアルテミスⅣの月面着陸ミッションの可否を大きく左右します。

リスク面でも見逃せない点があります。アルテミスIは2022年の無人テスト飛行時にOrionの熱シールドが損傷し、炭化した塊が抉り取られる事態が発生しました。アルテミスIIでは熱シールドの設計は変えず、大気圏降下時の角度を調整することでその熱暴露を軽減する対策が取られています。万が一の際の安全策として「フリーリターン軌道」が採用されており、主要システムが故障した場合でも地球の重力によって自然にOrionが帰還できるよう設計されています

innovaTopiaが今この記事を書く理由は明確です。打ち上げ目標は2026年4月1日で、天候も80%の確率で良好と報告されており、まさに歴史的瞬間の直前にいます。このカウントダウン手順書の公開は、NASAが世界に対して「私たちは本気だ」と示す公式の宣言です。アルテミスIIの成功は、月を「目的地」から「人類の活動拠点」へと変える長い旅の、最初の一歩になります。

公開時追記
なお、本記事公開時点(日本時間4月2日)、クルー4名はすでにOrionに搭乗済みで、打ち上げウィンドウ開始まで約30分に迫っている。

【用語解説】

Lマイナス(L-)時間
打ち上げ当日の実際の時刻の進みを示す時間軸。ホールド(一時停止)中も止まらず、常に「打ち上げまでの実際の残り時間」を示し続ける。

Tマイナス(T-)時間
カウントダウン手順のシーケンスを管理する時間軸。ホールド中は停止する。L-時間とは独立して動作し、打ち上げ作業の進捗を管理するための基準となる。

ホールド(Hold)
カウントダウンを意図的に一時停止すること。精確な打ち上げウィンドウを狙うため、または作業に余裕を持たせるためにあらかじめスケジュールに組み込まれている。

低軌道(LEO:低地球軌道)
地上から高度約2,000km以下の地球周回軌道のこと。国際宇宙ステーション(ISS)もこの領域に存在する。アルテミスIIはこれを大きく超えた深宇宙へ向かう。

フリーリターン軌道
月の重力と地球の重力を利用し、エンジンをほぼ使わなくても自然に地球へ帰還できる軌道設計。1970年のアポロ13号でも採用され、主要システムが故障した場合の安全策として機能する。

ターミナルカウント
打ち上げ前のT-10分から始まる最終自動シーケンス。地上打ち上げシーケンサー(GLS)がバルブ操作、電源切り替え、エンジン点火など数百の指令を自動的に実行する段階。

熱シールド(ヒートシールド)
宇宙船が大気圏に再突入する際に発生する約2,800℃の高熱から機体と乗員を守るための断熱保護システム。アルテミスIの無人飛行では一部が損傷したことが確認されており、アルテミスIIでも重要な検証対象となっている。

アポロ17号
1972年12月に打ち上げられたNASAのアポロ計画最後のミッション。これ以降、人類は低軌道を超えた宇宙へ向かっていなかった。アルテミスIIはそのブランクを53年以上ぶりに埋めることになる。

アルテミス
アルテミスIIに続く有人月面着陸ミッション。2028年の実施が計画されており、1972年のアポロ17号以来初めて人類が月面に立つことになる予定。

アルテミス計画
NASAが主導する月・火星探査プログラム。月への恒久的な人類の滞在基盤を構築し、最終的には火星有人探査を目指す。アルテミスIIはその初の有人飛行にあたる。

【参考リンク】

NASA(米国航空宇宙局)公式サイト(外部)
アルテミス計画を主導するNASAの公式サイト。最新ミッション情報や宇宙開発ニュースを配信している。

NASA アルテミスII ミッション公式ページ(外部)
クルー情報、ミッション概要、マルチメディアリソースを一元提供するアルテミスII専用の公式ページ。

NASA アルテミスII 打ち上げカバレッジ公式ページ(外部)
打ち上げ前後の中継・ブリーフィングスケジュール。NASA+やYouTubeの生中継情報も確認できる。

CSA(カナダ宇宙庁)公式サイト(外部)
アルテミスIIにジェレミー・ハンセンを送り出すカナダの宇宙開発機関の公式情報ページ。

【参考記事】

WATCH: Artemis II is set to orbit the moon. Here’s what to know – PBS NewsHour(外部)
AP通信によるアルテミスII詳細解説。フリーリターン軌道・熱シールドのリスクと距離・速度などの数値データを詳しく解説している。

NASA’s Artemis II Launch Mission Countdown Begins – NASA公式ブログ(外部)
2026年3月30日のカウントダウン開始を報じるNASA公式ブログ。打ち上げ目標日時と天候状況(好条件80%)を確認できる。

NASA Teams Readying Artemis II Moon Rocket for Launch – NASA公式ブログ(外部)
GLSの仕組みや窒素充填による安全手順など、アルテミスIIカウントダウンの技術的詳細を解説するNASA公式最新ブログ記事。

Inside Artemis 2: NASA’s historic astronaut moon mission explained – Space.com(外部)
SLSロケット(高さ約98m)やOrion宇宙船の詳細を4部構成で解説するSpace.com編集長による動画・記事シリーズ。

The Artemis II countdown has begun. NASA says the weather is looking good. – BBC Sky at Night Magazine(外部)
英国の権威ある天文メディアによるアルテミスII解説。カウントダウン開始時刻と延期の背景、技術的意義を客観的に論じている。

【編集部後記】

この記事をお読みのあなたへ。

本記事の公開時点で、ミッションはまさに最終局面に入っています。打ち上げウィンドウは本日(4月1日)午後6時24分EDT、日本時間4月2日午前7時24分に開きます。ロケットへの燃料充填はすでに完了し、リード・ワイズマン、ビクター・グローバー、クリスティーナ・コーク、ジェレミー・ハンセンの4名はOrion宇宙船「Integrity」に搭乗済みです。

カウントダウン中、飛行終了システムと通信するハードウェアに一時的な問題が確認されましたが、エンジニアチームが解決済み。LASハッチの閉鎖も完了し、Orionは飛行形態への最終構成に入っています。天候の好条件確率は80%。あとは、点火を待つだけです。

53年間、人類は月の手前で立ち止まっていました。その沈黙が、今日破られようとしています。NASAのライブ中継はYouTube・NASA+・Amazon Primeで配信中です。皆さんはどこで、誰と、この瞬間を迎えていますか?

投稿者アバター
TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

読み込み中…