NTTドコモとダッソー、IOWN APNで3DCAD遠隔共同作業を実証―従来比500%の速度向上を達成

NTTドコモとダッソー、IOWN APNで3DCAD遠隔共同作業を実証―従来比500%の速度向上を達成 - innovaTopia - (イノベトピア)

NTTドコモビジネスとダッソー・システムズは、IOWN APNを活用し、世界で初めて3DCADを用いた遠隔共同作業の実証に成功した。

本実証では、武蔵野市の東京第11データセンターと大手町プレイスのOPEN HUB ParkをIOWN APNで接続し、ダッソー・システムズの3DEXPERIENCEプラットフォームを用いて遠隔共同編集を行った。

数千から数万個におよぶ大容量の3DCADデータやPLMデータをサーバーからダウンロードし、共同編集を検証した結果、同一ビル内での接続と比較してほぼ同等のパフォーマンスを確認した。

3DCADの編集可能環境が同期される速度は、従来のインターネット経由と比べ最大約500%向上した。今後は製造業界を起点に、IOWN構想の多様なユースケースへの展開を視野に入れ、産業全体のイノベーションを促進する。

ダッソー・システムズはIOWN Global Forumへ正式加入し、4Dデジタル基盤の多分野展開に向けた協業体制を強化する。

From: 文献リンクNTTドコモビジネスとダッソー・システムズ、IOWN®を活用し世界で初めて3DCADを用いた遠隔共同作業の実証に成功

 - innovaTopia - (イノベトピア)
NTTドコモビジネス株式会社公式プレスリリースより引用

【編集部解説】

今回の実証が画期的なのは、製造業が長年抱えてきた「大容量データの壁」を光技術で突破した点です。3DCADで扱うデータは数GBから数十GBに達し、しかも圧縮が困難という特性があります。従来のネットワークでは、このような重いデータをリアルタイムで共有することは事実上不可能でした。

IOWN APNは光信号を電気信号に変換せずそのまま伝送することで、超低遅延を実現します。電気信号への変換が発生するたびに遅延が生じるため、光のまま伝送し続けることが重要なのです。今回の実証では従来比500%の速度向上を達成しましたが、これは単なる高速化ではありません。設計者が3Dモデルを回転させたり拡大したりする動作が、遠隔地でも同一ビル内と同じ感覚で行えるということです。

この技術がもたらす変化は、単なる移動コスト削減にとどまりません。グローバルに分散した設計チームが時差を超えてリアルタイムに協働できれば、製品開発のスピードは劇的に向上します。自動車業界では数万点の部品を扱いますが、それらすべてを遠隔地のエンジニアと同時に検証できる未来が見えてきました。

一方で、このような高度なネットワークインフラは初期投資が大きく、中小企業にとってはハードルとなる可能性があります。また、大容量データの非圧縮伝送は、セキュリティ面での新たな対策も必要とするでしょう。ダッソー・システムズがIOWN Global Forumに正式加入した意義は、こうした課題を業界全体で解決していく姿勢の表れと言えます。

【用語解説】

IOWN APN(アイオン・エーピーエヌ)
Innovative Optical and Wireless NetworkのAll-Photonics Networkの略。NTTが提唱する次世代ネットワーク技術で、従来の電気信号ではなく光信号をそのまま伝送することで、超低遅延と高速通信を実現する。光電変換のプロセスを最小化することが特徴だ。

3DCAD
三次元コンピュータ支援設計ツール。立体的な製品モデルをコンピュータ上で作成・編集するソフトウェアで、自動車、航空機、家電などあらゆる製造業の設計現場で使われている。データサイズが数GB~数十GBと大容量になることが多い。

PLM(Product Lifecycle Management)
製品ライフサイクル管理。製品の企画、設計、製造、保守、廃棄までの全工程における情報を一元管理するシステムや手法。部品表、設計図面、仕様書などを統合管理し、効率的な製品開発を支援する。

4Dデジタル基盤
NTTが提唱する技術概念で、3次元空間情報に時間軸を加えた4次元データを統合管理するプラットフォーム。人やモノの位置情報と時間データをリアルタイムに処理し、都市インフラや交通システムの最適化、未来予測を可能にする。

デジタルツイン
現実世界の物理的な対象物やシステムを、デジタル空間上に精密に再現した仮想モデル。センサーデータをリアルタイムで反映させることで、シミュレーションや予測分析が可能になる。製造業、都市計画、医療などで活用が進んでいる。

【参考リンク】

ダッソー・システムズ 3DEXPERIENCE プラットフォーム(外部)
3D設計、シミュレーション、PLM機能を統合し、製造業のデジタル変革を支援するソリューション。

IOWN Global Forum(外部)
NTT、インテル、ソニーが共同設立した国際業界団体。IOWN構想実現に向けた技術開発や標準化活動。

NTT OPEN HUB(外部)
先端テクノロジー体験環境を備えた共創ワークプレイス。企業間の事業共創を支援する招待制施設。

【参考記事】

3D CADの遠隔共同作業を実証、APN接続で同期速度を5倍に(外部)
実証実験の技術的詳細と、製造業における遠隔協働の課題解決に焦点を当てた解説記事。

Remote factory control at 300km: Japan’s IOWN network test(外部)
IOWNネットワークの300km遠隔工場制御実験に関する報道。光通信技術の産業応用を分析。

【編集部後記】 

遠隔地にいながら、まるで隣に座っているかのように共同作業ができる未来が、もう目の前まで来ています。今回の実証が示したのは、ネットワークの進化が単なる「速さ」だけでなく、働き方そのものを変える可能性です。

みなさんの業界では、どんな場面でこの技術が活きると思いますか?製造業だけでなく、建築、医療、エンターテインメントなど、大容量データを扱うあらゆる分野に応用できるはずです。光技術がもたらす「距離の消失」は、私たちの創造性をどう解放してくれるでしょうか。ぜひ、SNSで教えてください。

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Ami
テクノロジーは、もっと私たちの感性に寄り添えるはず。デザイナーとしての経験を活かし、テクノロジーが「美」と「暮らし」をどう豊かにデザインしていくのか、未来のシナリオを描きます。 2児の母として、家族の時間を豊かにするスマートホーム技術に注目する傍ら、実家の美容室のDXを考えるのが密かな楽しみ。読者の皆さんの毎日が、お気に入りのガジェットやサービスで、もっと心ときめくものになるような情報を届けたいです。もちろんMac派!

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