MeltwaterとWe. Communicationsは2026年1月14日、初の年次State of PR Reportを発表した。世界中の1,100人以上のPRおよびコミュニケーション専門家からの調査に基づくもので、90%以上のPRチームがプレスリリースの起草やコンテンツ最適化などのタスクで生成AIをワークフローに統合していることが明らかになった。ただし高度に統合されていると答えたのは13%にとどまる。
PR専門家の3分の1以上がビジネス目標への指標の整合を最優先事項とし、ほぼ40%が企業リーダーシップのPRチームへの理解が限定的だと報告した。プラットフォームではLinkedInが62%で最も価値があるとされ、FacebookとInstagramはそれぞれ10%だった。回答者の半数以上が2026年のPR投資にほとんど変化がないと予想している。

【編集部解説】
PR業界における生成AIの統合は、もはや実験段階を超え、業界標準となりつつあります。今回のMeltwaterの調査で90%以上という高い統合率が示されましたが、注目すべきは「高度に統合されている」と答えたのがわずか13%という点です。これは、多くの組織がAIを導入したものの、その真価を十分に引き出せていない現状を浮き彫りにしています。
興味深いことに、競合調査会社のCisionが約600人を対象に行った「Inside PR 2026」レポートでも、91%がAIを使用していると報告しており、数字の一貫性が確認できます。両調査が示すのは、PR業界全体でAIが「使われている」という事実と同時に、その活用方法にまだ大きな改善余地があるという現実です。
今回の調査で特に重要なのは、PR専門家が直面している構造的な課題が明らかになった点でしょう。40%近くが「企業リーダーシップのPRチームへの理解が限定的」と答え、同時に36%が「PR予算がCEOに依存している」と回答しています。この矛盾した状況こそが、PR部門がROI(投資対効果)の証明を迫られている理由です。
MeltwaterのCEOであるジョン・ボックス氏が指摘するように、AIツールは運用効率の向上とブランドパフォーマンスの測定という、まさにこの課題を解決する具体的な手段を提供します。しかし、ここで重要なのは、AIは単なる効率化ツールではなく、PRチームが経営陣に対して自らの価値を定量的に示すための戦略的武器になり得るという点です。
測定方法の進化も見逃せません。従来のリーチやメディアボリュームといった「活動指標」から、ビジネスKPIに紐づいた「成果指標」へのシフトが進んでいます。3分の1以上が「ビジネス目標への指標の整合」を最優先事項としている事実は、PR業界が単なる広報活動から、企業価値創造の戦略的パートナーへと変貌しつつあることを示しています。
LinkedInが62%で圧倒的な支持を得ている点も示唆的です。これは単にプラットフォームの人気を示すだけでなく、B2Bコミュニケーションやソートリーダーシップの構築において、どのチャネルが最も効果的かというPR専門家の経験知を反映しています。
一方で、予算が横ばいにもかかわらず期待が高まっているという状況は、PR部門にとって厳しい現実を突きつけています。限られたリソースでより大きな成果を求められる中、AIの戦略的活用は選択肢ではなく必須となりつつあるのです。
このレポートが投げかける最も本質的な問いは、「PR部門は生き残れるか」ではなく、「AIを活用してどのように進化し、組織内での地位を確立するか」という点にあります。2026年は、PR業界がこの問いに対する答えを実証する年になるでしょう。
【用語解説】
生成AI(Generative AI)
テキスト、画像、音声、動画などのコンテンツを自動生成する人工知能技術。ChatGPTやMidjourneyなどが代表例で、PR業界ではプレスリリースの作成、コンテンツの最適化、アイデア出しなどに活用されている。従来のAIが「分析」や「予測」を得意としていたのに対し、生成AIは新しいコンテンツを「創造」できる点が特徴だ。
KPI(Key Performance Indicator)
重要業績評価指標。企業や組織が目標達成度を測定するために設定する定量的な指標。PR業界では従来、メディア掲載数やリーチ数などが主なKPIだったが、現在はブランド認知度の向上率や売上への貢献度など、ビジネス成果に直結する指標への移行が進んでいる。
ROI(Return on Investment)
投資対効果。投資した金額に対してどれだけの利益や成果が得られたかを示す指標。PR部門が企業内で予算を確保し、戦略的パートナーとしての地位を確立するためには、PR活動がビジネス成果にどう貢献したかをROIで示すことが重要になっている。
【参考リンク】
Meltwater(外部)
メディア、ソーシャル、コンシューマーインテリジェンスの世界的リーダー。毎日約10億件のコンテンツを分析する。
We. Communications(外部)
テクノロジーと人間性の交差点で数十年の経験を持つグローバルコミュニケーションエージェンシー。
LinkedIn(外部)
ビジネス特化型SNS。PR専門家の62%が最も価値のあるプラットフォームと評価している。
Cision(外部)
コンシューマーおよびメディアインテリジェンスのグローバルリーダー。Fortune 500の84%が利用。
【参考記事】
Cision Unveils “Inside PR 2026”: The Definitive Report on PR Trends, AI Adoption, and the Future of Communications(外部)
シションが約600人のPR専門家を調査。91%が生成AIを使用し、ストーリーテリングが最も求められるスキルと判明。
2026 State of PR: 1,100+ Communicators Surveyed(外部)
メルトウォーター公式レポートページ。40%以上が依然として成果ではなく活動を測定していることを明示。
2026 PR trends, according to five industry experts(外部)
5人の業界専門家による予測。ブランド評判はAIの回答内容で形成される時代に突入すると分析。
AI Adoption Trends in the Enterprise 2026(外部)
企業での生成AI導入が急速に広がる一方、多くがまだ試験導入レベルにとどまり、ROIや本格的な業務変革には課題が残っていると指摘している。
【編集部後記】
PR業界の90%がAIを導入しながら、真に活用できているのは13%という数字は、みなさんの業界でも思い当たる節があるのではないでしょうか。ツールを導入することと、その真価を引き出すことの間には、想像以上に大きな隔たりがあるようです。
予算が限られる中で成果を求められる状況も、多くの職場で共通する課題かもしれません。みなさんの組織では、AIをどのように位置づけ、活用していますか。あるいは、その効果をどう測定し、経営層に示していますか。ぜひSNSで、現場の生の声を聞かせていただければ幸いです。



































