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LINEで日本円ステーブルコイン「JPYC」利用へ──LINE NEXTと協業検討開始

LINEで日本円ステーブルコイン「JPYC」利用へ──LINE NEXTと協業検討開始 - innovaTopia - (イノベトピア)

毎日使うLINEアプリで、いつか「円のまま使えるステーブルコイン」が当たり前になるかもしれない。JPYC株式会社とLINE NEXT Inc.が、日本円建ステーブルコインJPYCのLINEアプリ上での活用に向けた協業検討を開始した。Web3が「実験の場」から「日常の選択肢」へと変わる、その最前線を追う。


JPYC株式会社は、LINEヤフーのグループ会社であるLINE NEXT Inc.と日本円建ステーブルコイン「JPYC」の活用に向けた協業検討を開始する基本合意書を締結した。本取組ではLINEアプリ上で誰もが手軽にJPYCを利用できる環境の構築を目指す。

協業内容は、LINE NEXTが提供予定のLINEアプリ上の新規ステーブルコインウォレットにおけるJPYC利用シナリオの共同検討、JPYCが提供するAPIとLINE NEXTのウォレット技術基盤の連携可能性、共同マーケティングや実証プロジェクトの実施などである。JPYCは日本円と1対1で交換可能な日本円建ステーブルコインであり、裏付け資産は日本円の預貯金および国債によって保全される。

現在Avalanche、Ethereum、Polygonの3つのチェーンで発行されている。

From: 文献リンクLINE NEXTとLINEを活用した新規ステーブルコインウォレットでのJPYC活用に関する協業検討開始のお知らせ

 - innovaTopia - (イノベトピア)
JPYC株式会社PRTIMESより引用

【編集部解説】

今回の協業発表は、日本のWeb3普及における重要な転換点といえます。国内で最も利用されているメッセージングアプリの一つであるLINEという「すでに生活インフラ化したアプリ」で、ステーブルコインが使えるようになる可能性が出てきたからです。

ステーブルコインとは、法定通貨と価値が連動する暗号資産のことです。ビットコインのように価格が大きく変動することがなく、1JPYC=1円という安定した価値を維持します。JPYCの場合、裏付け資産として日本円の預貯金と国債を保有しており、いつでも同額の日本円に償還できる仕組みになっています。

日本では2023年6月に改正資金決済法が施行され、ステーブルコインは暗号資産とは区別されて「電子決済手段」として法的に位置づけられました。JPYCは2025年8月18日、この法律に基づく資金移動業者として国内で初めて登録を完了し、正式に日本円建ステーブルコインの発行が可能になりました。

今回の協業で注目すべきは、LINEアプリ上で提供予定の「新規ステーブルコインウォレット」です。これまでWeb3サービスを利用するには、専用のウォレットアプリをインストールし、秘密鍵を管理し、ガス代(手数料)の概念を理解する必要がありました。しかしLINEという使い慣れたアプリ内で完結するなら、技術的なハードルは大幅に下がります。

プレスリリースでは「リワード活用」と「日常決済」という2つの利用シーンが強調されています。例えば、企業がキャンペーンでポイントの代わりにJPYCを配布したり、オンラインショップの決済手段として使えるようになる可能性があります。ブロックチェーン上で動作するため、送金手数料が安く、24時間365日即座に送金できるという利点もあります。

ただし、現時点ではあくまで「協業検討」の段階です。基本合意書(MOU)が締結されただけで、具体的なサービス開始時期や詳細な仕様は明らかになっていません。また、プレスリリースにも「特定のブロックチェーン上におけるJPYC発行を前提とするものではない」との注意書きがあり、今後の協議と法令対応が必要とされています。

なお、本件はあくまで基本合意書(MOU)に基づく協業検討段階の発表であり、LINEアプリ上でのJPYC提供が確定したものではなく、開始時期や具体的仕様は今後の協議および法令対応を踏まえて決定される。

規制面では、金融庁が2025年12月にステーブルコインや暗号資産の「サービス仲介業」を新たに規制対象とする政令案を公表しました。ウォレットサービスやメディアも影響圏内に入る可能性があり、利用者保護を強化する動きが進んでいます。今回の協業でも「利用者保護、法令遵守、安全性を担保した実装方法の協議」が明記されており、慎重な姿勢がうかがえます。

技術的な背景として、LINEとKakaoが支援するKaiaブロックチェーン(KlaytnとFinschiaの統合)が存在します。JPYCは現在Avalanche、Ethereum、Polygonの3チェーンで発行されていますが、将来的にKaiaチェーンでの発行も選択肢になる可能性があります。

この協業が実現すれば、Web3は「投資や実験のためのもの」から「日常で使う価値」へと変わるかもしれません。一方で、ステーブルコインには発行体の信用リスク、秘密鍵の管理リスク、規制変更のリスクなども存在します。メガアプリでの展開だからこそ、セキュリティと利便性のバランスが問われることになるでしょう。

【用語解説】

ステーブルコイン
法定通貨と価値が連動するように設計された暗号資産。ビットコインなどと異なり価格変動が極めて小さく、決済手段として利用しやすい。日本では2023年の改正資金決済法により「電子決済手段」として法的に位置づけられている。

Web3
ブロックチェーン技術を基盤とした次世代のインターネット概念。中央管理者を介さず、ユーザー同士が直接価値をやり取りできる分散型の仕組みを特徴とする。

基本合意書(MOU)
Memorandum of Understandingの略。企業間で協業や提携の基本的な方針について合意したことを示す文書。法的拘束力は限定的で、具体的な契約に先立つ意向確認の段階。

ウォレット
暗号資産を保管・管理するためのデジタル財布。秘密鍵と呼ばれる暗号情報を用いて、ブロックチェーン上の資産にアクセスする。

資金移動業
銀行以外の事業者が少額の送金サービスを提供する際に必要な登録制度。日本では資金決済法に基づき金融庁が監督している。JPYCは2025年8月に国内初のステーブルコイン発行事業者として登録された。

ガス代
ブロックチェーン上で取引を実行する際に必要な手数料。ネットワークの混雑状況によって変動する。

API
Application Programming Interfaceの略。異なるソフトウェア同士が情報をやり取りするための仕組み。

Ethereum / Polygon / Avalanche
代表的なブロックチェーンプラットフォーム。それぞれ異なる特性を持ち、JPYCは現在この3つのチェーン上で発行されている。

【参考リンク】

JPYC株式会社 公式サイト(外部)
日本円建ステーブルコインJPYC発行企業。2025年8月に国内初の資金移動業登録取得

LINE NEXT Inc. 公式サイト(外部)
LINEヤフーのグループ会社で、Web3プラットフォーム事業を担当する米国法人

Kaia ブロックチェーン(外部)
LINEとKakao支援のアジア最大級ブロックチェーン。日常アプリとWeb3の橋渡し

【参考記事】

【速報】金融庁、JPYCを資金移動業者として登録──国内初の円建てステーブルコイン発行へ(外部)
2025年8月18日のJPYC資金移動業登録を報じる記事。国内初の円建てステーブルコイン正式発行

米国で進むステーブルコインの規制整備(10):日本では初の円建てステーブルコイン発行事業者が登場(外部)
野村総研による日本のステーブルコイン規制解説。改正資金決済法の背景を詳述

金融庁、ステーブルコイン・暗号資産の「仲介業」規制案を公表 パブリックコメント募集(外部)
2025年12月の金融庁による新規制案。ウォレットサービスも規制対象となる可能性

Kaiaブロックチェーンとは:LINEが支援するアジアで最も有望なレイヤー1(外部)
KlaytnとFinschia統合で誕生したKaiaの技術的特徴とLINE連携戦略を解説

金融庁、JPYCを資金移動業に登録 円建てのステーブルコイン発行へ(外部)
日本経済新聞による2025年8月のJPYC登録報道。国内初の円建てステーブルコイン誕生

【編集部後記】

普段何気なく使っているLINEで、いつかステーブルコインが使えるようになるかもしれません。「暗号資産」と聞くと難しそうに感じますが、円と同じ価値で使えるなら、むしろ銀行送金より便利な場面も出てくるのではないでしょうか。

例えば、友人への割り勘、オンラインでのちょっとした支払い、企業からのキャッシュバック受け取りなど。もしこれらがLINE上で瞬時に、手数料もほとんどかからずできたら、みなさんの生活はどう変わるでしょう?Web3という言葉の向こう側に、実はこんな日常的な便利さが隠れているのかもしれません。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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