生成AIクリエイティブの「PoC止まり」。多くの企業が抱えるこの課題に、一つの解が示されつつあります。キヤノン、パナソニック、三菱UFJキャピタルなど大手企業が戦略投資家として名を連ねるAI model株式会社の資金調達は、AIが「実験」から「実装」へ移行する転換点を象徴しています。
AI model株式会社は2026年1月23日、第三者割当増資による資金調達を実施したと発表した。プレシリーズBラウンドとなる本ラウンドでは、事業会社・金融機関・CVCからの戦略的な資本参画を中心とした調達を行った。
SBIインベストメント株式会社、キヤノンマーケティングジャパン株式会社とグローバル・ブレイン株式会社が共同設立したCVCファンド「Canon Marketing Japan MIRAI Fund」、三菱UFJキャピタル株式会社、パナソニック株式会社とSBIインベストメント株式会社が共同設立したCVCファンド「PC-SBI投資事業有限責任組合(パナソニックくらしビジョナリーファンド)」、株式会社三洋物産、宮銀ベンチャーキャピタル株式会社などを引受先とする。
同社は生成AI技術を用いたモデル・タレント・広告クリエイティブ生成ソリューションを提供し、クラウド基盤「A/CLOUD」を中心にTVCM・広告・ブランディング領域での事業展開を進めている。
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AI model、戦略投資家と資本提携 生成AIクリエイティブの事業実装を加速

【編集部解説】
今回のAI model株式会社による資金調達は、生成AIクリエイティブ市場における重要な転換点を示すものです。注目すべきは、調達先の顔ぶれです。
キヤノンマーケティングジャパン、パナソニック、三菱UFJキャピタル、三洋物産といった多様な業界のリーディングカンパニーが名を連ねています。これは単なる技術への投資ではなく、各社が自社事業における生成AIクリエイティブの実装を見据えた戦略的な動きと捉えるべきでしょう。
生成AI市場全体は驚異的な成長を続けています。JEITAの予測では、世界市場は2023年の106億ドルから2030年には2,110億ドルへと約20倍に拡大するとされます。日本市場も2030年には1兆7,774億円規模に達する見込みです。
しかし、市場の拡大と実際の企業活用の間には大きなギャップが存在していました。多くの企業が生成AIの「PoC(概念実証)止まり」に悩んでいるのです。「品質が担保できない」「ブランド表現が揺れる」「権利・倫理面の不安が残る」といった課題が、実運用への移行を妨げてきました。
AI model株式会社が提供するのは、まさにこの「PoC止まり」を打破する仕組みです。企業専用のAIモデル生成から、クラウド基盤「A/CLOUD」を通じた運用管理まで、一気通貫で支援します。特に重要なのは、同社が「一般社団法人AIモデル普及推進協会」を設立し、ガイドライン策定や透明性確保に取り組んでいる点です。
AIモデルやAIタレントの活用には、肖像権・パブリシティ権の侵害リスク、人間のクリエイターやモデルの仕事機会への影響、AIが生成する表現の倫理性など、多くの課題が指摘されています。技術的には可能でも、社会的・倫理的な側面で慎重な対応が求められる領域なのです。
今回の資金調達で特筆すべきは、投資家コメントに見られる「共創」という視点です。キヤノンは幕張スタジオでの撮影事業との連携、パナソニックはグローバルプロモーションへの展開、三洋物産はエンタメ分野での活用など、各社が自社のアセットと組み合わせた具体的な展開を描いています。
これは生成AIが「ツール」から「事業インフラ」へと進化していることを意味します。単に画像や動画を生成するだけでなく、企業の業務プロセス全体に組み込まれ、継続的に成果を生み出す基盤となりつつあるのです。
もちろん、課題も残されています。人間のクリエイターとの共存をどう実現するか、AIによる表現の多様性をどう担保するか、技術の進化に法整備が追いつくか。こうした問いに対する答えは、まだ模索の段階です。
しかし、今回の資金調達は、生成AIクリエイティブが「実験段階」から「実装段階」へと移行しつつあることを示す明確なシグナルと言えるでしょう。
【用語解説】
プレシリーズBラウンド
スタートアップ企業の資金調達段階の一つ。シリーズAとシリーズBの間に位置し、シリーズAで一定の成果を上げた企業が、シリーズBに向けてさらなる事業拡大のために行う追加調達を指す。
第三者割当増資
企業が特定の第三者(既存株主以外の投資家や取引先など)に対して新株を発行し、資金を調達する方法。今回のような戦略的投資家からの資金調達によく用いられる。
CVCファンド
Corporate Venture Capital(コーポレートベンチャーキャピタル)の略。事業会社が自社の戦略的目的のために設立する投資ファンドで、単なる財務的リターンだけでなく、事業シナジーの創出も目的とする。
PoC(概念実証)
Proof of Conceptの略。新しい技術やアイデアが実現可能かどうかを検証するための小規模な実証実験。多くの企業がPoCで終わり、本格導入に至らないという課題を抱えている。
パブリシティ権
著名人の名前や肖像が持つ経済的価値を、他者に無断で利用されない権利。AIタレントが実在の著名人に似ている場合、この権利を侵害する可能性がある。
【参考リンク】
AI model株式会社(外部)
生成AI技術を用いた企業専用AIモデル・AIタレントの生成およびクリエイティブソリューションを提供するスタートアップ。
SBIインベストメント株式会社(外部)
SBIグループのベンチャーキャピタル。今回のラウンドでリード投資家として参画している。
キヤノンマーケティングジャパン株式会社(外部)
キヤノン製品の国内マーケティングを担う企業。グローバル・ブレインと共同でCVCファンドを運営。
三菱UFJキャピタル株式会社(外部)
三菱UFJフィナンシャル・グループのベンチャーキャピタル。国内外のスタートアップ企業への投資を実施。
パナソニック株式会社(外部)
総合電機メーカー。SBIインベストメントと共同で「パナソニックくらしビジョナリーファンド」を設立。
株式会社三洋物産(外部)
パチンコ・パチスロ機の製造販売を行う企業。AIミスマリンオーディションなどエンタメ分野でAI活用を推進。
宮銀ベンチャーキャピタル株式会社(宮崎銀行)(外部)
宮崎銀行のベンチャーキャピタル子会社。2024年11月にAI modelの技術を用いたAIタレントを起用。
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)(外部)
日本の電子機器・情報技術産業の業界団体。生成AI市場の需要額見通しなども発表している。
一般社団法人AIモデル普及推進協会(外部)
AI model株式会社が設立した業界団体。AIモデルビジネスの健全な普及と発展を目的としている。
【参考記事】
生成AI市場規模の未来予測と拡大要因|マーケティングBLOG | カスタメディア(外部)
JEITAによる生成AI市場の世界需要額見通しを紹介。2030年には約20倍に拡大すると予測。
【2025年予測】生成AI日本市場規模と成長分野|技術・業界動向を徹底解説 | HP Tech&Device TV(外部)
IDC Japanによる日本の生成AI市場予測を詳述。2028年には8,028億円に達する見通し。
世界と日本の「生成AI市場」を徹底図解、急成長市場をけん引する「ある業界」とは | ビジネス+IT(外部)
MarketsandMarkets社の調査をもとに、世界と日本の生成AI市場の成長を解説。
AIタレントとは?作成費用・著作権・活用事例・作り方まで徹底解説 | Beyond AI(外部)
AIタレントの特徴、メリット、倫理的課題を包括的に解説。権利侵害リスクなどを詳述。
伊藤園や野村HD、広告にAIタレント 効果と注意点は – 日本経済新聞(外部)
伊藤園のテレビCMや野村ホールディングスの広告でのAIタレント起用事例を紹介。
日本における生成AI市場の将来展望(今後10年間)| MATES-PROMO(外部)
日本の生成AI市場の成長要因を分析。2030年前後までに兆円単位の新産業へと成長する可能性。
【編集部後記】
生成AIクリエイティブが「実験」から「実装」のフェーズへ移りつつある今、みなさんの職場ではどのような状況でしょうか。「試してみたけれど現場に定着しない」「品質やブランドイメージの担保が難しい」といった声をよく耳にします。
今回のAI model社の事例は、そうした課題を乗り越えるヒントを示しているのかもしれません。一方で、AIと人間のクリエイターがどう共存していくべきか、という問いには、まだ明確な答えがありません。みなさんは、この技術の進化をどう捉えていますか。ぜひご意見をお聞かせください。






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