LINEヤフーが莫大な投資で開発したコーポレートフォント「LINE Seed JP」を、誰でも無料で使えるGoogle Fontsで公開しました。企業が自社のデザイン資産を「閉じる」のではなく「開く」ことで価値を増幅させる─この大胆な戦略転換は、日本のテクノロジー企業に何をもたらすのでしょうか。
LINEヤフー株式会社は2026年1月23日、コーポレートフォント「LINE Seed」の日本語書体である「LINE Seed JP」を、Googleが提供するフォントサービス「Google Fonts」にて提供開始したと発表した。
LINE Seedは日本語、英語(Latin)、韓国語(Hangul)、繁体字中国語(台湾)、タイ語の5言語に対応したマルチスクリプトフォントファミリーである。提供開始日は2026年1月22日(日本時間)。日本語書体「LINE Seed JP」は2023年度グッドデザイン賞を受賞している。
ライセンスはSIL Open Font License 1.1(OFL)で、商用・非商用を問わず無料で利用できる。これまではLINEヤフーのWebサイトのみで公開されていたが、Google Fontsでの提供により、より多くのユーザーやクリエイターが利用可能になる。
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LINEヤフー、コーポレートフォント「LINE Seed JP」をGoogle Fontsで提供開始
【編集部解説】
今回のLINE Seed JPのGoogle Fonts公開は、日本企業のコーポレートフォント戦略において極めて画期的な動きです。通常、企業が莫大な費用をかけて開発したコーポレートフォントは、ブランド資産として厳重に管理され、社外利用が制限されるのが一般的でした。
しかしLINEヤフーは、フォントを「閉じた資産」ではなく「共創のプラットフォーム」として位置付けています。この判断の背景には、使われ、語られることでブランド価値が育っていくという、従来とは異なるブランド戦略があります。
技術的な側面では、Google Fontsでの提供は日本語フォント特有の課題を解決する重要な意味を持ちます。日本語フォントは数千のグリフを含むため、LINE Seed JPのフルセットは10MBを超えるサイズになります。これをWebで実用的に使うには、必要な文字だけを抽出する「サブセッティング」が不可欠でした。
Google Fontsに登録されることで、約100個以上の小さなスライスに分割され、ブラウザが必要な文字が含まれる部分だけを自動ダウンロードする「Dynamic Subsetting」が適用されます。これにより、開発者は複雑なファイル管理から解放され、世界中のCDNを通じて最速でフォントを表示できるようになります。
さらに注目すべきは、Google Workspaceでも追加インストールなしに直接利用可能になった点です。これは日々の資料作成やプレゼンテーションにおいて、誰もがLINEのデザイン言語に触れる機会が生まれることを意味します。
SIL Open Font License 1.1(OFL)での提供という選択も重要です。商用・非商用を問わず無料利用を可能にすることで、スタートアップから大企業まで、あらゆる規模のクリエイターがこのフォントを活用できます。
ただし、オープンソース化には潜在的なリスクも存在します。ブランドアイデンティティの希薄化や、意図しない文脈での使用といった懸念です。しかしLINEヤフーは、むしろそうした多様な使われ方の中でブランドが育つと考えているようです。
この動きは、日本のテクノロジー企業がデザイン資産をどう扱うべきかという問いに、一つの明確な答えを示しています。閉じることで価値を守るのではなく、開くことで価値を増幅させる。2026年以降、こうしたアプローチを取る企業が増えていく可能性は高いでしょう。
【用語解説】
SIL Open Font License 1.1(OFL)
フォントの自由な利用と改変を認めるオープンソースライセンスの一種。商用・非商用を問わず無料で利用でき、フォント自体の販売を除き、あらゆる用途での使用が可能である。フォント開発において世界標準のライセンス形式として広く採用されている。
マルチスクリプトフォント
複数の言語や文字体系に対応したフォントファミリー。異なる言語を混在させても統一感のあるデザインを保つため、字面の大きさや線の太さなどを調整して設計される。グローバルサービスのUIデザインにおいて重要な役割を果たす。
サブセッティング
フォントファイルから必要な文字(グリフ)だけを抽出する技術。日本語フォントは数千文字を含むため、全てのデータをダウンロードすると通信量が膨大になる。使用する文字だけを含む軽量版を作ることで、Webページの表示速度を大幅に改善できる。
Dynamic Subsetting
Google Fontsが採用する技術で、フォントを100個以上の小さなスライスに分割し、ブラウザが必要な文字が含まれる部分だけを自動的にダウンロードする仕組み。開発者がサブセットを手動で作成する必要がなく、最適化された状態でフォントを配信できる。
CDN(Content Delivery Network)
世界中に分散配置されたサーバーネットワークを利用して、ユーザーに最も近い場所からコンテンツを配信する技術。Google Fontsでは世界中のCDNを通じてフォントを提供することで、地域を問わず高速な読み込みを実現している。
ジオメトリックサンセリフ
円や直線といった幾何学的な形状を基にデザインされたゴシック体(サンセリフ)フォント。規則的で整った印象を与えつつ、角を丸めるなどの工夫により親しみやすさも表現できる。モダンなUIデザインで頻繁に採用される書体スタイルである。
【参考リンク】
LINE Seed 公式サイト(外部)
LINE Seedフォントファミリーの公式サイト。日本語、英語、韓国語などの書体の特徴やダウンロード方法、デザインコンセプトを掲載。
Google Fonts – LINE Seed JP(外部)
Google Fontsで公開されているLINE Seed JPのページ。フォントのプレビュー確認やWebサイトへの実装コードの取得が可能。
LINEヤフー株式会社(外部)
LINEとヤフーが統合して誕生したテクノロジー企業の公式サイト。コミュニケーション、検索、EC、広告など多様なサービスを展開。
グッドデザイン賞(外部)
公益財団法人日本デザイン振興会が主催する日本唯一の総合的デザイン評価・推奨制度。1957年創設の歴史あるデザイン賞。
【参考記事】
「LINE Seed JP」をGoogle Fontsで公開した理由(外部)
LINEヤフーDESIGN公式noteの記事。フォントを共創のプラットフォームとして位置付け、使われることでブランド価値が育つという戦略を解説。
Google Fontsで使うLINE Seed JP(最速表示のためのベストプラクティス)(外部)
LINEヤフーTech Blogの技術記事。10MBを超えるフォントをDynamic Subsettingで最適配信する技術的仕組みを詳説。
コーポレートフォント「LINE Seed JP」をGoogle Fontsで提供(外部)
Impress Watchによる報道記事。5言語対応のマルチスクリプトフォントとしての特徴や2023年度グッドデザイン賞受賞を報じる。
【編集部後記】
今回のLINE Seed JPの公開は、企業が持つデザイン資産をどう扱うべきかという問いを投げかけています。皆さんの会社や関わるプロジェクトでは、独自に開発したフォントやデザインシステムをどのように管理していますか?もし今後、自社のデザイン資産を外部に開放する機会があったとしたら、どんな基準で判断されるでしょうか。閉じることで守る価値と、開くことで生まれる新しい価値。このバランスについて、ぜひ考えてみていただければと思います。また、実際にLINE Seed JPを使ってみて、その使い心地を体験してみるのも面白いかもしれません。






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