Canva「Design Trends Report」2026発表、「Imperfect by Design」とDesign DNAで“人間味”回帰を可視化

[更新]2025年12月13日

Canva「Design Trends Report」2026発表、「Imperfect by Design」とDesign DNAで“人間味”回帰を可視化 - innovaTopia - (イノベトピア)

AIで“それっぽい”が量産できる時代に、次の差別化は「不完全さ」なのかもしれません。
Canvaが2026年のデザイントレンドを「Imperfect by Design」と呼び、DIYやlo-fiの急伸から“人間味”回帰を読み解きました。


CanvaはSYDNEYで、3回目の年次「Design Trends Report」を発表し、2026年の創造性、ソーシャルメディア、ブランドコンテンツに関する予測と、「Design DNA」機能を公開した。

米国とブラジルのクリエイター1,000人調査では80%が「2026年は創造の主導権を取り戻す年」と回答し、77%がAIを「不可欠なパートナー」と述べた。検索動向ではDIY・コラージュ90%、Zine・Substack85%、clean layout・serif・simple branding54%、lo-fi aesthetic527%、liminal・uncanny220%の増加が示された。

From: 文献リンクCanva Unveils 2026 Design Trends: The Year of ‘Imperfect by Design’

【編集部解説】

Canvaが2026年の「Design Trends Report」で掲げたキーワードは「Imperfect by Design(不完全さをデザインする)」です。生成AIの活用が広がるほど、均質で整いすぎたアウトプットが増えやすくなり、逆に人の手触りや癖が差別化要因になっていく、という問題意識が背景にあります。

このレポートは、Canva上の検索・デザイン行動の分析に加えて、米国とブラジルのクリエイター1,000人調査、Designer Advisory Boardの知見を根拠として、2026年の10のデザイントレンドを整理しています。ここで重要なのは、AIを否定するのではなく、AIを使いながら人間らしさを取り戻すというフレーミングになっている点です。

たとえばDIY/コラージュ、lo-fi、liminal/uncannyといった方向性は、単に流行のスタイルというより、デジタル疲れやアルゴリズムによる同質化への反動として理解できます。見た目の完成度を極限まで上げるよりも、編集の気配、素材感、わずかなズレや余白が、受け手の感情を動かす要素として再評価されているわけです。

同時に発表された「Design DNA」は、2025年の制作傾向をAIで解析し、ユーザーの創作スタイルをカードの形で示す機能です。年末の振り返りに見えますが、長期的には個人の美意識や作風をどう扱うかというテーマを、プロダクト体験に組み込む試みにも見えます。

一方で、こうした個性の可視化は、便利さと引き換えに注意点も生みます。制作履歴や嗜好がどのように解釈されるのか、どこまでが共有されるのかといった透明性は利用者にとって重要ですし、タイプ分けが創作の幅を狭める可能性もゼロではありません。

実務の観点では、クリーンに削ぎ落とす方向性と、不完全さを残す方向性は矛盾しません。骨格はシンプルにしつつ、写真の粒度、紙っぽいテクスチャ、編集的な余白、あえての不揃いなど、人が最後に決めた痕跡をどこに置くかが、2026年のデザイン設計の問いになっていきそうです。

【用語解説】

Imperfect by Design
AIを取り入れつつ、粗さ・個人的な痕跡・不完全さを価値としてデザインに組み込むという考え方を指す概念だ。

lo-fi aesthetic
低解像度感、ノイズ、懐かしさなど、洗練より感情の手触りを優先する見た目の方向性を指す呼び方だ。

liminal
境界・移行・中間の状態を想起させる雰囲気を指す語で、現実と非現実の境目が曖昧な表現を説明する際に使われる。

uncanny
既視感があるのにどこか不気味に感じる状態を指す語で、「現実っぽいのに現実ではない」表現の文脈で使われる。

Zine
個人や小さなコミュニティが制作する自主出版物のことで、編集的なレイアウトや個人視点のストーリー表現を指す文脈で登場する。

Substack
ニュースレター配信などに使われるプラットフォーム名で、記事では編集的ストーリーテリングを想起させるレイアウト参照元として言及されている。

【参考リンク】

Canva(外部)
デザイン作成と共同作業のためのプラットフォーム。Design DNAの生成導線もここから提供される。

Canva(Newsroom)The visual design trends set to define 2026(外部)
2026年のImperfect by Designと10トレンド、調査や検索動向の説明を掲載する公式記事だ。

Canva Design Trends(外部)
CanvaのDesign Trends公式ページ。年次トレンド情報への入口として参照されている。

Canva(Newsroom)Introducing our Designer Advisory Board(外部)
Designer Advisory Boardの役割や位置づけをCanvaが説明しているページだ。

【参考動画】

【参考記事】

Yahoo Finance|Canva Unveils 2026 Design Trends: The Year of ‘Imperfect by Design’(外部)
Business Wire配信を基に、発表概要や米国・ブラジル1,000人調査、検索動向の数値を再掲する。

Canva Newsroom|The visual design trends set to define 2026(外部)
Canva公式としてImperfect by Designと10トレンドを説明し、背景の考え方も確認できる。

Canva Newsroom|Introducing our Designer Advisory Board(外部)
Designer Advisory Boardの目的や位置づけを一次情報として把握できるページである。

【編集部後記】

生成AIで“それっぽい”デザインが作りやすくなった今、差になるのは完成度だけでなく「その人らしさ」かもしれません。

DIYやlo-fi、Zine的レイアウトのような少し崩した表現に、どんな瞬間に惹かれますか。自分やチームの制作物で人間味を残したいポイントを洗い出すと、2026年トレンドの読み解きにもつながります。

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TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

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