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Lego Smart Play、独自ワイヤレス充電技術を採用―組み立てたまま充電可能なパススルー技術を8年かけて開発

LegoがSmart Playシステム向けに独自開発したワイヤレス充電技術が注目されている。この充電システムはQi規格などの既存の民生用規格を採用せず、プロプライエタリな技術を使用している。

最大の特徴は、Smart Brickを組み立てモデルに埋め込んだまま充電できる「パススルー充電」機能だ。エネルギーが他のLegoブロックを通過することで、例えばSmart Brickを内蔵した車を充電器の上に駐車させるだけで充電が可能になる。開発は約8年前に開始され、当時の標準的なワイヤレス充電技術では中断のない遊び体験を実現できなかったため独自規格を選択した。現在予約可能なStar Wars 3セットには第一世代の充電器が同梱され、最大2つのSmart Brickをどの向きでも同時充電できる。通常の遊びで約40分のアクティブ使用が可能だ。

From: 文献リンクLego on why Smart Bricks needed custom wireless charging

【編集部解説】

今回のLegoのワイヤレス充電技術は、玩具業界における技術統合の新しいパラダイムを示しています。Qi規格が5Wから15Wへと進化し、AppleやSamsungが独自の高速充電プロトコルを開発してきた中で、Legoは全く異なる目的のために独自規格を選択しました。

技術的な観点から特筆すべきは、4.1mm ASICチップの小型化とパススルー充電の実現です。従来のワイヤレス充電では、充電器と受電デバイスの間に障害物があると効率が大幅に低下します。Legoはこの物理的制約を克服し、複数のプラスチックブロックを介してエネルギーを伝送できる技術を開発しました。これは銅コイルを利用した近距離磁気通信技術の応用と考えられますが、具体的な実装の詳細は公開されていません。

バッテリー管理の面でも工夫が見られます。完全充電には約2時間かかり、フル稼働で45分程度の使用が可能です。しかし、Smart Brickは使用していない時に自動的にスリープモードに入るため、実際の遊びのセッションではより長時間持続します。さらに、数年間の未使用期間を経ても性能を維持できる高品質バッテリーを採用しており、長期保管に対する耐久性を重視した設計となっています。

この独自規格採用の最大のリスクは、エコシステムのロックインです。Qi規格のような標準化された技術であれば、サードパーティ製の充電器や将来的な互換性が期待できますが、プロプライエタリな技術では、Lego純正の充電器に依存せざるを得ません。充電器の故障や紛失時の交換コスト、将来的な製品ラインの継続性が課題となる可能性があります。

一方で、この選択は玩具の体験設計における重要な哲学を示しています。子どもたちは組み立てた作品を壊してバッテリーを取り出す必要がなく、遊びの没入感を維持できます。これは電子玩具が直面してきた「技術が遊びを中断する」という根本的な問題への解答と言えるでしょう。8年という長期開発期間は、この体験設計を実現するための技術的困難さを物語っています。

【用語解説】

Smart Play
Legoが2026年1月のCESで発表した、電子機能を統合した新しいブロックシステム。光、音、動きのセンサーを搭載し、デジタル体験と物理的な組み立てを融合させる。

Smart Brick
Smart Playシステムの中核となる電子ブロック。4.1mm ASICチップ、スピーカー、LED、加速度センサー、ジャイロスコープ、近接センサーを内蔵し、Bluetooth接続とNFC機能を備える。

パススルー充電
他のLegoブロックを介してSmart Brickに電力を供給する技術。組み立てモデルに埋め込まれた状態でも、充電器の上に置くだけで充電が可能になる独自の充電方式。

Qi規格
Wireless Power Consortium(WPC)が策定した国際的なワイヤレス充電標準規格。スマートフォンや多くの民生機器で採用されているが、Legoは独自規格を選択した。

プロプライエタリ
企業が独自に開発・所有する技術や規格を指す。オープンスタンダードとは対照的に、特定の企業がライセンスや仕様を管理する。

Creative Play Lab
Lego社内の研究開発組織。Smart Playシステムの開発を主導し、物理的な遊びとデジタル技術の統合に関する実験的なプロジェクトを推進している。

ASIC
Application-Specific Integrated Circuitの略で、特定用途向け集積回路。Smart Brickでは4.1mmという極小サイズのカスタムASICチップが使用されている。

AirPower
Appleが2017年に発表したが、2019年にキャンセルされた複数デバイス同時充電マット。Legoの充電器は、この実現できなかったコンセプトと比較されている。

【参考リンク】

LEGO SMART Play公式サイト(外部)
Smart Playシステムの製品ラインナップ、技術仕様、予約情報を掲載。Star Wars 3セット(Millennium Falcon、AT-AT、X-wing)の詳細な機能説明と価格情報が確認できる。

LEGO CES 2026発表ページ(外部)
2026年1月のCESでのSmart Play発表に関する公式プレスリリース。開発背景、技術概要、今後の展開についてのLegoの公式見解が記載されている。

【参考記事】

Lego unveils a technology-packed Smart Brick at CES 2026(外部)
Engadgetによる詳細レポート。Smart Brickに搭載された4.1mm ASICチップの技術仕様、センサー類の詳細、バッテリー性能(フル稼働45分、充電時間2時間)について解説している。

Lego on its custom wireless charging for Smart Bricks and Smart Play(外部)
Yahoo Tech による Tom Donaldsonへのインタビュー記事。なぜ独自規格を選択したのか、8年間の開発プロセス、パススルー充電技術の哲学について詳しく語られている。

LEGO SMART Play: What We Know So Far About These Interactive Bricks(外部)
Lego専門ブログによる包括的な解説。充電時間、バッテリー寿命、複数のSmart Brickの同時使用、Star Warsセットでの具体的な動作例について詳細に分析している。

LEGO SMART Play: What can it do?(外部)
Bricksetによる機能分析記事。スリープモード機能、長期保管時のバッテリー性能維持、センサーとアプリの連携機能について技術的な観点から検証している。

レゴがNFC対応&各種センサー搭載&Bluetooth接続可能な「LEGO SMART Play」を発表(外部)
Gigazineによる日本語解説記事。CES 2026での発表内容の詳細、技術仕様の日本語まとめ、数年間の未使用期間を経ても性能を維持できる高品質バッテリーの採用について報じている。

【編集部後記】

8年かけて開発されたパススルー充電技術は、組み立てた作品を壊さずに充電できる点で画期的ですが、独自規格という選択には賛否両論ありそうです。充電器が故障したら純正品を買い直すしかないのか、将来的に他の製品ラインにも展開されるのか、気になるところです。40分という稼働時間は子どもの遊びには十分かもしれませんが、複雑な作品制作には短く感じる人もいるでしょう。Qi規格の採用を見送った判断が正しかったのか、数年後の市場の反応が楽しみです。Star Wars以外のテーマでどんな展開を見せるのかも注目点ではないでしょうか。

投稿者アバター
乗杉 海
SF小説やゲームカルチャーをきっかけに、エンターテインメントとテクノロジーが交わる領域を探究しているライターです。 SF作品が描く未来社会や、ビデオゲームが生み出すメタフィクション的な世界観に刺激を受けてきました。現在は、AI生成コンテンツやVR/AR、インタラクティブメディアの進化といったテーマを幅広く取り上げています。 デジタルエンターテインメントの未来が、人の認知や感情にどのように働きかけるのかを分析しながら、テクノロジーが切り開く新しい可能性を追いかけています。

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