2025年5月15日(現地:米東部夏時間、日本時間同日)、音楽共有プラットフォームSoundCloudは利用規約を再改訂し、ユーザーがアップロードした音源を生成AIモデルの学習に用いる際、必ず明示的な同意(オプトイン)を取得する場合に限り許可すると発表した。これは、2024年2月7日(現地時間)に追加された「ユーザーコンテンツをAIの学習・開発に利用できる」という曖昧な条項を見直したものである。Chief Product Officer(CPO)のEliah Setton氏は「過去に一度もユーザーコンテンツをAI学習に使っていない」と説明し、改訂後のTOSは「同意、透明性、アーティストの権限を最優先する」方針を打ち出している。新ルールは数週間以内に順次適用される予定である。
References:
SoundCloud changes policies to allow AI training on user content | TechCrunch
SoundCloud AI Training Copyright TOS | The Verge
SoundCloud clarifies its policies on music and AI training | Music Ally
SoundCloud, an audio file sharing service, quietly changes its terms of use to allow audio data to be used for AI learning | GIGAZINE
【編集部解説】
SoundCloudが利用規約を改訂した背景には、プラットフォーム運営側がユーザー生成コンテンツをAIトレーニングに活用しようとする動きに対し、クリエイター側から透明性の欠如を指摘されるケースが増えている点がある。2024年2月の改訂時点では、曖昧な表現が「いつでもコンテンツを学習に使える」という誤解を招き、AIと著作権の境界を巡る論争に発展した。
今回の再改訂では、オプトイン方式を導入し、明示的な同意なしには一切利用しない姿勢を明示したことがポイントだ。これにより、アーティストは自身の作品がAIに使用されるか否かを選択できるようになる。プラットフォーム側としては、ユーザー信頼の回復と同時に、AI技術を活用した推薦機能やフェイク音源の検出など、サービス向上に必要なデータ利用の道筋を確保した形だ。
ただし、オプトイン方式を採用しただけでは、一部アーティストが同意を避けた場合に学習データの偏りを招くリスクもある。長期的には、多様な音楽ジャンルや新興アーティストまで網羅したデータセットを公平に整備できる仕組みが求められるだろう。
さらに、欧州のGDPR改正、米国の著作権法見直しなど、各国で強化されつつあるデータ保護およびAI規制が、グローバルサービス運営の枠組みを左右する。SoundCloudが示した「同意・透明性・権限重視」の方針変更は、業界全体におけるベストプラクティスとなる可能性を秘めている。
【用語解説】
利用規約(Terms of Service):
サービス運営者と利用者の間で、サービス利用に関する権利・義務を定めた契約文書。
オプトイン方式:
利用者が明示的に同意した場合のみ特定機能を有効化する方式。
ジェネレーティブAIモデル:
大量の学習データをもとに新規のテキスト、画像、音声などを自動生成する機械学習モデル。
AIトレーニング:
機械学習アルゴリズムにデータを与え、パターン認識や予測能力を獲得させるプロセス。
【参考リンク】
SoundCloud(公式)(外部)
世界中のクリエイターが音楽やポッドキャストを投稿・共有できるプラットフォーム。
SoundCloud利用規約(外部)
SoundCloudの最新利用規約。AI利用に関する条項もここで確認できる。
SoundCloud changes policies to allow AI training on user content | TechCrunch(外部)
SoundCloudの利用規約改訂とAI学習方針を詳細に報じた記事。
SoundCloud AI Training Copyright TOS | The Verge(外部)
利用規約改訂の概要と背景を解説するニュースソース。
SoundCloud clarifies its policies on music and AI training | Music Ally(外部)
AI学習に関するSoundCloudの方針変更と業界の反応をまとめた記事。
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