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Appleは2025年9月9日、iPhone史上最薄5.6mmのボディにProのパフォーマンスを搭載した「iPhone Air」を発表した。6.5インチSuper Retina XDRディスプレイ、最大120HzのProMotionを採用し、グレード5チタニウムフレームとCeramic Shield 2によるより強力な耐擦傷性能を実現している。
新開発のA19 Pro、N1、C1Xチップを搭載し、iPhone史上最も電力効率に優れる。48MP Fusionメインカメラは4種類のレンズ相当の機能を提供し、革新的な18MPセンターフレームフロントカメラはiPhone初の正方形センサーを採用。縦向きで持ったまま横向きの撮影が可能だ。
iOS 26を搭載し、Apple Intelligenceのライブ翻訳やビジュアルインテリジェンス機能を提供。eSIM専用設計で内部スペースを最大化している。価格は159,800円から。9月12日予約開始、9月19日発売予定。スペースブラック、クラウドホワイト、ライトゴールド、スカイブルーの4色展開である。
From: 画期的なデザインを備えたパワフルな新しいiPhone、iPhone Airが登場
【編集部解説】
iPhone Airの登場は、スマートフォン業界における技術革新の新たな段階を示しています。Appleが5.6mmという厚さを実現するために投入した技術は、単なる薄型化以上の意味を持ちます。
極限の薄型化が生む技術的トレードオフ
iPhone Airの最大の技術的な課題はバッテリー容量の制約です。物理的な制約上、薄型化するとバッテリーの体積も減少し、結果としてバッテリー寿命にも影響が現れます。他メディアのレビューでは、実際に搭載容量が小さくなっているため、一般的な使い方で1日使えるのか懸念する声も見受けられます。一方、公式発表の「最大27時間のビデオ再生」という性能は、超薄型スマートフォンとしては優れた数値だと言えるでしょう。
また、バッテリー問題の解決策として、AppleはMagSafeバッテリー(15,800円)を同時発売し、最大40時間のビデオ再生を実現可能にしています。これは薄型化の制約を外部アクセサリで補完する新たなアプローチと言えるでしょう。
eSIM専用化による業界パラダイムシフト
iPhone AirのeSIM専用設計は、世界規模での実装として注目すべき変化です。これまで米国でのみ採用されていたeSIM専用が全世界展開されることで、スマートフォン業界全体の方向性を決定づける可能性があります。eSIMは物理的な取り外しが不可能なため、盗難時のセキュリティ向上や、複数キャリアの同時管理などメリットが多数存在します。
一方で、デバイス間の乗り換えの複雑化や、一部地域での通信事業者対応の遅れなど、実用面での課題も残存しています。特に発展途上国や地方地域では、eSIMインフラの整備状況によって使用に支障が生じる可能性があります。
チタニウム戦略の逆転と材料工学の進歩
iPhone Airにはグレード5チタニウムフレームを採用しています。 チタニウムはアルミニウムよりも衝撃や曲げへの耐久性に優れ、傷もつきにくい特性を持ち、5.6mmという超薄型設計において必要な構造強度を確保しています。
また、Ceramic Shield 2により高い耐擦傷性能を持つ点も注目です。
AI統合とローカル処理能力の向上
A19 Proチップに組み込まれたNeural Accelerator(ニューラル アクセラレータ)は、各GPUコアレベルでのAI処理を可能にし、前世代比3倍のGPU演算性能を実現しています。これにより大規模言語モデル(LLM)のデバイス内実行が可能となり、プライバシー保護とレスポンス速度の両立を達成しています。
Apple Intelligenceのライブ翻訳機能やビジュアルインテリジェンス機能は、クラウド依存を減らしたAI体験の方向性を示しており、今後のスマートフォンAI機能の標準となる可能性があります。
長期的な市場インパクトと競合への影響
iPhone Airの159,800円という価格設定は、薄型化に対する市場の受容性を試す実験的側面があります。Samsung Galaxy S25 Edge(5.8mm)との競争において、0.2mmの差が消費者行動にどの程度影響するかが注目されます。
製造面では、3Dプリント技術によるUSB-Cポート製造で原材料を33%削減するなど、持続可能性と技術革新の融合も実現しています。再生チタニウム80%使用も含め、環境配慮と先端技術の両立が今後の業界標準となる可能性が高いでしょう。
このように、iPhone Airは単なる薄型iPhoneではなく、バッテリー技術、材料工学、通信インフラ、AI処理などAppleが持つ複数分野での技術革新の集大成として位置づけられます。
【用語解説】
Ceramic Shield 2:Appleが開発したディスプレイ保護材料の第2世代版。従来より強力な耐擦傷性能と反射防止機能の向上を実現したガラスセラミック素材。
センターフレームフロントカメラ:iPhoneで初めて搭載された正方形フロントカメラセンサー。縦向きのまま横向きの写真・動画撮影が可能で、最大18MPの写真撮影に対応。
A19 Pro:iPhone Air専用の6コアCPU搭載チップセット。5コアGPUに各コアレベルのNeural Accelerator(ニューラル アクセラレータ)を組み込んだApple製プロセッサ。
クアッドピクセル:4つの隣接するピクセルを1つのユニットとして扱うセンサー技術。低照度環境での撮影性能向上と高解像度画像の両立を可能にする。
ProMotion:Appleの可変リフレッシュレート技術。最大120Hzから最低1Hzまで自動調整し、滑らかな表示とバッテリー効率の最適化を実現する。
eSIM:Embedded SIM(エンベデッドSIM)の略称。従来の物理SIMカードを内蔵型にデジタル化した技術で、複数キャリアの同時管理と高いセキュリティ性能を提供。
【参考リンク】
iPhone Air – Apple(日本)(外部)
iPhone Airの公式製品ページ。技術仕様、カメラシステム、A19 Proチップの詳細、価格情報、アクセサリ情報を提供。
Newsroom – Apple(日本)(外部)
Appleの公式ニュースルーム。iPhone Air発表のプレスリリースをはじめ、Apple製品の最新情報を配信。
iPhone サポート – Apple Support(外部)
iPhone全般の公式サポートページ。設定方法、使用方法、トラブルシューティング、修理サービスに関する情報を提供。
【参考動画】
【参考記事】
I Held Apple’s Wildly Thin iPhone Air, and I’m Already Obsessed – CNET(外部)
CNETの実機ハンズオンレビュー。5.6mmの薄さがもたらす使用感の変化と、バッテリー寿命への懸念について詳細に分析。
The iPhone Air has landed: a new design, price, cameras – TechRadar(外部)
TechRadarによるiPhone Air総合分析。価格設定、カメラ性能、競合機種との比較、市場での位置づけについて包括的評価。
The new iPhone Air is super thin. What does that mean for battery life? – Mashable(外部)
Mashableによるバッテリー寿命に特化した分析記事。薄型化がバッテリー容量に与える影響と、Appleの技術的対策を解説。
iPhone Air Battery: What You’re Trading for the Thinnest iPhone Ever – MacRumors(外部)
MacRumorsによるバッテリー性能の詳細分析。内部テスト結果と他モデルとの比較データを基に実用性への影響を評価。
Apple’s move to eSIM-only strengthens global trend – Tech Xplore(外部)
Tech XploreによるeSIM専用化の業界分析。世界的なeSIM普及への影響と、通信事業者や消費者への長期的インパクトを考察。
【編集部後記】
iPhone Airの5.6mmという薄さは確かに驚異的ですが、薄型化の代償として本当に一日中持つバッテリーを実現できているのでしょうか。159,800円という価格でeSIM専用、しかもシングルカメラという制約がある中で、多くのユーザーにとって魅力的な選択肢となり得るのか疑問が残ります。特に興味深いのは、Appleが3つのカスタムチップを同時投入した点です。この垂直統合戦略が他社に対してどれほどの技術格差を生むのか、そしてこの超薄型アプローチが将来の折りたたみスマホへの布石なのかも気になるところです。皆さんはこの薄さにどの程度の価値を感じますか?
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