ドローンが操縦者の目の届かない場所を自由に飛び交う未来が、また一歩近づきました。Terra Drone子会社Uniflyが米連邦航空局主導のプロジェクトで、ドローンの安全な衝突回避システムの検証を完了し、目視外飛行の実現に向けた重要な技術的基盤を確立しました。
Terra Drone株式会社は、子会社でベルギーに拠点を置くUTMプロバイダーのUnifly NVが、米連邦航空局(FAA)が支援するドローンの安全研究コンソーシアム「ASSURE」の研究プロジェクト「A68」において、ドローンの検知・回避システムにおける適切な離隔距離要件の検証を完了したと発表した。
ユニフライはドローンのシミュレーションおよび実機飛行テストに自社のUTMシステムを提供し、目視外飛行や高密度な運用環境における検知・回避性能要件の改善に向けた技術的基盤の構築に貢献した。テラドローンは2023年にユニフライの51%の株式を取得して子会社化している。
From:
テラドローン子会社Unifly、米連邦航空局(FAA)主導のドローンと航空機の衝突回避安全基準に関するプロジェクトを完了
【編集部解説】
今回のプロジェクト完了は、ドローンの商業利用拡大に向けた重要な一歩となります。このニュースの背景にある技術的な意味と、業界への影響について解説します。
ドローンが安全に空を飛ぶためには、従来の航空機と同様に「他の航空機とぶつからない」仕組みが必要です。これが検知・回避(DAA:Detect and Avoid)システムと呼ばれる技術です。有人航空機であれば、パイロットが目視で周囲の状況を確認できますが、ドローンの場合、特に遠隔操縦や自律飛行では、センサーやシステムによる自動的な衝突回避が不可欠となります。
今回検証された「適切な離隔距離要件(Well Clear Requirement)」とは、航空機同士が「十分に安全な距離を保っている」と判断できる基準のことです。一般的には、水平方向で約610メートル、垂直方向で約76メートルの距離が目安とされています。この基準は、有人機では長年の経験と研究に基づいて確立されてきましたが、ドローンに適用する場合、機体の大きさや飛行特性の違いから、改めて科学的な検証が求められていました。
UniфlyのようなUTM(運航管理システム)プロバイダーが果たす役割も重要です。UTMは、空域内で飛行するすべてのドローンの位置情報を一元的に管理し、衝突の危険がある場合に警告を発したり、飛行経路を調整したりする「空の交通管制システム」のような存在です。今回のプロジェクトでは、UTMがDAAシステムを効果的にサポートできることが実証されました。
この検証が特に重要な理由は、目視外飛行(BVLOS:Beyond Visual Line of Sight)の実現に直結するからです。現在、多くの国でドローンの商業利用は操縦者の目視範囲内に制限されていますが、物流や農業、インフラ点検といった用途では、より広範囲での自律飛行が求められています。しかし、規制当局は安全性が十分に検証されない限り、BVLOSを広く認めることができません。今回のような実機を使った検証データの蓄積が、規制緩和への道を開くことになります。
また、将来的にドローンの台数が増加し、空域が混雑してくる「高密度運用環境」でも、このDAAシステムが有効に機能することが示されました。これは、都市部でのドローン配送や、複数のドローンが同時に飛行する場面での安全性担保につながります。
ポジティブな側面としては、規制が整備されることで、ドローン産業の市場規模が大きく拡大する可能性があります。一方で、技術的な課題も残されています。例えば、位置情報を発信しない航空機(非協調型航空機)の検知精度や、通信が途絶えた際のバックアップシステムの確立など、実用化に向けてはさらなる技術開発と検証が必要です。
今回のプロジェクト成果は、FAAをはじめとする航空当局が今後の規制を策定する際の重要な技術的根拠となります。これにより、ドローンの目視外飛行に関する規制が段階的に緩和され、より自由度の高い商業運用が可能になることが期待されます。
【用語解説】
DAA(Detect and Avoid / 検知・回避システム)
ドローンが飛行中に他の航空機や障害物を自動的に検知し、衝突を回避するためのシステム。レーダー、光学センサー、協調型トランスポンダーなどを使用して周囲の状況を把握し、必要に応じて飛行経路を自動修正する。有人航空機のパイロットの目視確認に相当する機能をシステムで代替するもので、BVLOS運用には不可欠な技術である。
Well Clear Requirement(適切な離隔距離要件)
航空機同士が安全な距離を保っているとみなされる基準。一般的には水平方向で約610メートル(2000フィート)、垂直方向で約76メートル(250フィート)の距離が目安とされる。有人機では長年の運用経験から確立されてきた概念だが、ドローンに適用する際は機体特性の違いから科学的な再検証が必要とされている。
UTM(運航管理システム / UAS Traffic Management)
空域内で飛行する複数のドローンの位置情報を一元管理し、衝突の危険がある場合に警告や飛行経路の調整を行うシステム。ドローンの「空の交通管制システム」とも呼ばれ、将来的なドローンの大量運用を安全に実現するための基盤技術である。
BVLOS(Beyond Visual Line of Sight / 目視外飛行)
操縦者の目視範囲を超えた場所でドローンを飛行させること。物流、農業、インフラ点検など、広範囲での自律飛行が求められる商業用途では不可欠だが、安全性の観点から多くの国で規制されている。DAAシステムの確立がBVLOS実現の鍵となる。
非協調型航空機
位置情報を電波で発信していない航空機。ADS-Bなどのトランスポンダーを搭載せず、自機の位置を他の航空機に通知しない機体を指す。小型のプライベート機や古い機体に多く、DAAシステムにとってはレーダーや光学センサーによる直接検知が必要となるため、技術的に難易度が高い。
【参考リンク】
Terra Drone株式会社(外部)
日本を拠点とするドローンおよび空飛ぶクルマの技術企業。2024年世界ランキング1位を獲得。
Unifly(外部)
ベルギーに本社を置くUTMプロバイダーのリーディングカンパニー。欧米8カ国で導入実績。
FAA(米連邦航空局)(外部)
アメリカ合衆国の航空交通を管理する政府機関。ドローン規制の策定や研究支援を行う。
ASSURE(外部)
FAAが支援するドローン安全研究コンソーシアム。29研究機関と100以上のパートナーで構成。
【参考記事】
Unifly Concludes Contribution to FAA ASSURE A68 Project on Detect-and-Avoid Well-Clear Requirements(外部)
UniфlyがFAA主導のASSURE A68プロジェクトを完了。BVLOS運用の技術的基盤を提供。
Unifly Completes FAA-Led Detect-and-Avoid Standards Project(外部)
Uniфlyがシミュレーションと飛行試験でUTMプラットフォームを展開し性能要件を検証。
Detect-and-Avoid (DAA): How Airborne Collision Avoidance Works(外部)
DAAシステムの技術的仕組みを解説。Well Clearの具体的な距離基準を説明。
【編集部後記】
ドローンが空を自由に飛び交う未来は、もうすぐそこまで来ています。今回のような地道な技術検証の積み重ねが、私たちの生活を変える第一歩になるのだと思います。
皆さんは、ドローンにどんな可能性を感じていますか。物流や災害対応といった実用面はもちろん、空域管理という新しい社会インフラのあり方にも、技術と人類の未来を考えるヒントが隠されているように感じます。この分野の動向を、ぜひ一緒に見守っていきましょう。



































