株式会社PeopleXは2026年1月27日、対話型AIサービス「PeopleX AIロープレ」のモバイル対応を完了したと発表した。
このサービスはAIとの対話によるロールプレイングを行うもので、これまでPC環境が必要だったが、今回の対応によりスマートフォンやタブレットでも利用できるようになった。営業シーンや部下との対話、接客・販売の場面を想定したトレーニングが可能で、24時間365日利用できる。複数の登場人物を想定する「マルチペルソナ」やシナリオ編集機能も備える。AIが評価を行い、受講者の習得状況を可視化する。
同社の本社は東京都新宿区で、代表取締役CEOは橘大地氏である。現在、サービスの紹介・導入支援を行うパートナー企業を募集している。
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対話型AIサービス「PeopleX AIロープレ」、モバイル対応を完了

【編集部解説】
PeopleXの「AIロープレ」モバイル対応は、一見すると小さなアップデートに思えるかもしれません。しかし、この動きは日本の労働市場が直面する構造的課題への重要な一手として捉えるべきです。
世界の労働人口の約80%、およそ27億人がデスクレスワーカーと呼ばれる現場従事者です。日本でも労働人口の60%以上がこのカテゴリに属します。小売、飲食、医療、建設、製造といった業界で働く彼らは、経済を支える中核的存在でありながら、デジタル技術の恩恵を最も受けにくい立場に置かれてきました。
特に深刻なのが人材育成の課題です。スタメンの「ノンデスクワーカーの働き方実態調査2024」によると、デスクレスワーカーの5割以上が新人教育に課題を感じており、その主な要因は「教育内容の不統一性」「マニュアルの未整備」「教育プロセスの曖昧さ」です。属人的な指導に依存せざるを得ない現場では、教える人によって内容が異なり、品質の標準化が困難という構造的問題を抱えています。
AIロールプレイング自体は、グローバル市場において先行事例が増え、実践活用が進みつつある分野です。Hyperbound、Yoodli、Quantifiedではスマホやタブレットを使って利用できるケースも増えており、24時間365日利用可能な練習環境を提供しています。PeopleXの今回の対応は、いわば業界標準への追従とも言えます。
しかし、注目すべきはタイミングです。BCGの調査によると、日本のデスクレスワーカーの退職リスクは調査対象7カ国中最も高く42%に達しています。人材確保と育成が喫緊の課題となる中で、PC環境を前提としないトレーニングツールの需要は急速に高まっています。
このサービスが実現するのは、単なる「どこでも学習」以上のものです。営業ロープレ、接客トレーニング、1on1の練習といった実践的シーンを、時間や場所、指導者の都合に縛られず繰り返し練習できる環境を提供します。AIによる公平な評価は、指導者のスキルや主観に左右されない標準化された育成を可能にします。
同社はすでにグループ全体で3,000社以上の支援実績を持ち、2025年12月の製品発表時にはすでに導入を決定している企業も存在していました。モバイル対応完了により、接客・販売といった店舗運営企業での活用が本格化すると予想されます。
ただし、課題も存在します。AIロープレは「システム半分、人が半分」と言われるように、デジタル化を推進する現場人材の育成が不可欠です。カミナシのCxOが指摘するように、各現場に最低1〜2人のデジタル推進人材がいなければ、優れたツールも機能しません。
また、AIによる評価の精度や、現場特有の暗黙知をどこまで学習・再現できるかという技術的限界も存在します。対人スキルの習得において、実際の人間との対話がもたらす微妙なニュアンスや感情的なフィードバックを、AIがどこまで代替できるかは継続的な検証が必要でしょう。
それでも、労働人口減少と人材育成の標準化という2つの課題に同時に対処できる選択肢として、AIロープレの価値は明確です。デスクレスワーカー領域へのテクノロジー投資は、他の労働カテゴリと比べてまだ限定的です。その状況が変わりつつある今、現場で働く人々の可能性を解放する一歩として、このモバイル対応は評価に値すると言えます。
【用語解説】
デスクレスワーカー
オフィスのデスクから離れ、現場で活動する労働者のこと。ノンデスクワーカーとも呼ばれる。小売、飲食、医療、建設、製造、物流などの業界で働く人々を指し、世界の労働人口の約80%(約27億人)、日本でも労働人口の60%以上を占める。PC環境へのアクセスが限定的であり、デジタル技術の恩恵を受けにくい課題を抱えている。
AIロープレ
AIを活用したロールプレイング(役割演技)トレーニングのこと。営業、接客、マネジメントなどの実務シーンを想定し、AIが顧客や部下などの相手役を演じることで、実践的な対話スキルを練習できる。24時間365日利用可能で、人間の指導者を必要とせず、公平な評価とフィードバックを提供する点が特徴。
【参考リンク】
PeopleX AIロープレ(外部)
営業、接客、マネジメントなど様々なシーンに対応し、24時間365日利用可能なAIロープレサービス
株式会社PeopleX(外部)
対話型AI面接をはじめ人事領域のAIソリューションを提供。採用から活躍支援までをカバー
ボストン コンサルティング グループ(BCG)(外部)
日本のデスクレスワーカーの退職リスクが7カ国中最高の42%に達することを調査で明らかに
株式会社スタメン(外部)
デスクレスワーカーの5割以上が新人教育に課題を感じている実態を調査で報告
Hyperbound(外部)
200万時間以上のB2B営業データで訓練されたAI。25以上の言語対応で50%のランプタイム短縮を実現
Yoodli(外部)
AIを活用したコミュニケーションスキル向上プラットフォーム。リアルタイムフィードバックを提供
Emergence Capital(外部)
デスクレスワーカー向けテクノロジーに注目する米国VC。世界の労働人口の80%がデスクレスワーカーと報告
【参考記事】
The State of Deskless Workforce Training | TalentCards(外部)
4カ国600人調査。わずか6%しかモバイル訓練を受けておらず、潜在需要は26%超の可能性
Why Deskless Workers Are Leaving—and How to Win Them Back | BCG(外部)
7カ国7,000人以上の調査。日本の退職リスク42%が最高。アップスキル投資の重要性を指摘
The State of Technology for Deskless Workers | Emergence Capital(外部)
1,532人調査。83%がPCを支給されるが、14%は何も支給されず56%が自己調達している実態
全労働人口の8割を占める、デスクレスワーカーのDX改革 | NTT東日本(外部)
世界の27億人がデスクレスワーカー。3/4以上が職場選択時にテクノロジー利用可能性を考慮
デスクレスワーカーにはDXが必要 | TUNAG(外部)
スタメン調査を引用。6割以上が情報共有に抜け漏れ、5割以上が新人教育に課題を感じている
5 Most effective AI tools for roleplays | EducateMe(外部)
AIロープレの主要な利点を解説。5つの主要プラットフォームを比較分析している
【編集部後記】
みなさんの職場では、新人教育や現場トレーニングにどのような課題を感じていらっしゃるでしょうか。指導者によって教え方が違う、練習の機会が限られている、そんな声をよく耳にします。
AIロープレのようなツールが、その解決策の一つになるかもしれません。ただ、デジタルツールはあくまで手段であり、現場で使いこなす人材の育成が鍵を握ります。みなさんの業界や職場では、こうした技術をどう活用できそうでしょうか。ぜひコメントやSNSで教えていただけると嬉しいです。






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