Ford RacingとRed Bull Racingは、2026年シーズンに向けたF1パワーユニットの共同開発を進めている。Ford Racing Powertrainのチーフエンジニアであるクリスチャン・ヘルトリッヒによると、3Dプリント技術の活用により、プロトタイプ部品の製造期間を16日から5日に短縮した。開発は米国ミシガン州と英国ミルトンキーンズの施設で行われている。
Ford Racingのシミュレーションエンジニアであるケビン・ルイバルは、Red Bullと協力してリアルタイムの1,000倍速で動作する制御モデルを開発した。また、動的プログラミングを使用したバッテリーエネルギー管理ツールも開発され、電気動力と燃焼動力の最適な展開を実現している。
ヘルトリッヒは、2026年3月に向けて準備を進めていると述べた。
【編集部解説】
2026年シーズンからF1のパワーユニット規則が大きく変わります。最大の変更点は、内燃機関(ICE)と電気動力の出力配分が50対50になることです。ICEの出力は約550kWから400kWへ減少する一方、電気出力は120kWから350kWへとほぼ3倍に増加します。
この規則変更の中で、FordとRed Bullのパートナーシップは当初の計画以上に深化しています。Ford Performance責任者のマーク・ラッシュブルックによれば、当初は電動化部分に焦点を当てていましたが、現在では先進的な製造施設と3Dプリント技術を活用し、米国ミシガン州ディアボーンで製造した部品を毎日英国ミルトンキーンズの研究施設へ送っているとのことです。
3Dプリント技術が開発速度に与える影響は極めて大きいと言えます。従来の製造手法では不可能だった複雑な形状を短期間で実現できるだけでなく、軽量化のメリットも大きい。Fordはすでに1,000以上の部品を3Dプリントし、航空宇宙分野から借用した検査手法でテストを実施しています。バッテリー用コールドプレートや冷却プレートといった複雑な金属・ポリマー部品が対象です。
リアルタイムの1,000倍速で動作するシミュレーションモデルは、物理的なハードウェアを構築する前にドライバーがエンジンの挙動を体験できる環境を提供します。これにより、パワーとドライバビリティ(運転のしやすさ)の両立を追求できるようになりました。
バッテリーエネルギー管理の最適化技術は、F1というハイレベルな実証の場で磨かれた後、将来的に市販の電動トラックへ応用される予定です。トラックの牽引距離延長や充電速度向上といった実用的な恩恵につながることが期待されています。
ただし、Red Bull側のローラン・メキエスが認めているように、現在は「ピークのストレスの瞬間」にあり、まずは動作する1台のエンジンをトラックに持ち込むことが最優先課題となっています。2026年3月の実戦投入まで残り1ヶ月強となった今、開発は最終段階に入っています。
【用語解説】
3Dプリント技術(アディティブ・マニュファクチャリング)
材料を層状に積み重ねて立体物を造形する製造手法である。従来の切削加工では実現困難な複雑な形状や内部構造を作成できるため、軽量化と高機能化を両立できる。試作から量産まで幅広く活用されている。
動的プログラミング
複雑な問題を小さな部分問題に分割し、その結果を記録しながら最適解を求める計算手法である。F1のエネルギー管理では、コース上のどの地点でバッテリーを使用または回生すべきかを最適化するために用いられる。
ドライバビリティ
車両の操縦性や扱いやすさを示す概念である。加速時のパワー供給の滑らかさ、ブレーキング時の安定性、コーナリング時の予測可能性などが含まれる。高性能な車両ほどドライバビリティとの両立が難しくなる。
内燃機関(ICE: Internal Combustion Engine)
燃料を燃焼室内で燃やして動力を得るエンジンである。F1では2026年規則からICE出力が約550kWから400kWへ減少し、代わりに電気動力の比率が大幅に増加する。
【参考リンク】
Ford Performance公式サイト(外部)
Fordの高性能車両開発部門の公式サイト。モータースポーツ活動やレース技術の市販車への応用について情報を提供している。
Red Bull Racing公式サイト(外部)
Red Bull RacingのF1チーム公式サイト。チーム情報、レース結果、技術開発の最新情報を発信している。
FIA Formula 1公式サイト(外部)
F1世界選手権の公式サイト。レース日程、規則変更、技術規定などの公式情報を提供している。
【参考記事】
Exclusive: Ford gives update on 2026 Red Bull F1 engine(外部)
Fordのマーク・ラッシュブルックが2026年パワーユニット開発の進捗を語った独占インタビュー記事。
How Ford is increasing input in 2026 Red Bull F1 power unit(外部)
Fordがディアボーンの先進製造施設と3Dプリント技術を活用し、毎日部品をミルトンキーンズへ送っている実態を報じている。
F1 2026 Regulations: Lighter Cars, Active Aero & The End(外部)
2026年F1規則変更の全容を解説。内燃機関出力が550kWから400kWへ減少し、電気出力が120kWから350kWへ増加する具体的な数値を示している。
Ford is 3D-printing parts for the 2026 Red Bull F1 car(外部)
Fordが1,000以上の部品を3Dプリントし、航空宇宙分野の検査手法を用いてテストしている実態を報じた記事。
Ford: Red Bull’s F1 engine programme ‘on target’ ahead of(外部)
2025年12月時点でのFordとRed Bullのパワーユニット開発状況を伝えた記事。パワーとドライバビリティの両立を目指している。
Red Bull delivers update on ‘crazy’ 2026 F1 engine project(外部)
Red Bull側のローラン・メキエスが開発の厳しい状況を語った記事。2026年3月の実戦投入を前に「ピークのストレスの瞬間」にあることを明かしている。
【編集部後記】
F1という究極の競争の場で磨かれた技術が、やがて私たちの日常に届くという流れに、ワクワクしませんか。16日かかっていた部品製造がわずか5日になる。この開発スピードの革命が、将来的には電動トラックの航続距離や充電速度の向上につながっていきます。
モータースポーツは単なるエンターテインメントではなく、技術進化の最前線なのだと改めて感じます。みなさんは、F1で培われた技術のうち、どんな要素が次に私たちの生活を変えると思いますか。一緒に未来を見つめていきたいと思います。






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