CW Canvas|日本のIPを権利証明で解除、Seedance 2.5に対応

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権利を持っている本人が、自分のキャラクターを生成できない。無断利用を防ぐために生成AIが立てた壁は、正規の権利者の前にも同じように立っています。AiHUBが8月14日に発表した「CW Canvas」は、その壁に扉をつける試みです。鍵になるのは生成の性能ではなく、権利の証明でした。


AiHUB株式会社は2026年8月14日、生成AI制作ツール「Creators’ Wonderland Canvas(CW Canvas)」がByteDanceの「Seedance 2.5」に対応すると発表した。あわせて、権利処理を済ませた専用アセットを用いる「ハイレベル」生成に対応する。同モデルには無作為に学習された権利物をフィルタする機能があり、権利者でも特定の権利物を出力できない。

CW Canvasは認証済みの法人などに限ってこれを解除し、キャラクターや人物を一貫させた生成を公式ライセンスのもとで提供する。BytePlusの上位グレードの利用権と権利者の授権が前提となる。同日クローズドβテストの事前申し込みを開始し、生成機能は2026年9月初旬、Canvas機能は10月に提供予定。

From: 文献リンクAiHUBの生成AIツール「CW Canvas」がByteDance「Seedance 2.5」に対応。IP権利証明でフィルター解除できる「日本初」ツールのクローズドβ版ウェイトリストを公開

【編集部解説】

このリリースで最初に立ち止まったのは、機能の説明ではなく、その手前に置かれた一文でした。権利者であっても、自分の権利物を出力できない。

該当する動画生成モデルには、無作為に学習された権利物を生成時にフィルタする仕組みがあります。無断生成を防ぐための壁です。そして通常の利用では、権利者本人であっても、特定の権利物を出力できない場合があります。リリースはこの状態を、解くべき課題として名指ししています。

権利物へのフィルターがなぜ強まってきたのか。それを考えるうえで、直近の象徴的な出来事が2つあります。

ひとつは2025年秋のSora 2です。9月30日の公開直後から人気キャラクターの無断生成が広がり、Motion Picture Association(MPA)は10月6日、加盟社の映画・番組・キャラクターを侵害する動画がサービス上やSNSに拡散しているとしてOpenAIに対応を求めました。これに先立つ10月3日、OpenAIのサム・アルトマン(Sam Altman)CEOは、権利者がキャラクター生成をより細かく制御できる仕組みへ変更し、肖像で採用しているopt-inモデルに近い制御を導入すると表明しています。同じ文章の中で、日本のコンテンツとユーザーの結びつきの深さに驚いたと書き添えていました。

もうひとつが2026年2月のSeedance 2.0です。MPAがByteDanceに侵害行為の停止を求め、正式な差し止め要求書を送付しました。Disneyも差し止めを要求し、ByteDanceは知的財産の無断利用を防ぐセーフガードを強化すると表明したと報じられています。

少なくともこの2つのサービスでは、権利物の無断生成を抑える方向でガードレールの強化が進みました。妥当な流れです。ただし、許諾の有無をシステムの側で確認できなければ、許諾済みの権利物まで生成の対象から外れてしまう。正規の権利者が正規に使う経路も、同じ壁の内側に置かれることになります。

ここで注意したいのは、CW Canvasが提供するのが制限の撤廃ではないという点です。リリース自身が、認証済みのユーザーに限って限定的に許可する仕組みだと書いています。壁が消えるのではなく、通ってよい人を確かめて通す。

前提は2つです。ひとつは、BytePlusの上位グレードの利用権であるAdvanced Creation Rights。これは法人認証と審査を経て取得します。もうひとつが、権利者からの許諾、すなわち授権です。

規約を読むと、この仕組みが立っている土台が見えてきます。BytePlusのアセットライブラリ利用規約は、アセットを3種類に分けています。プラットフォームが用意した参照用アセット、利用者がアップロードする独自アセット、そして許諾を得た実在人物の肖像や音声のアセットです。後者2つについて利用者は、権利を自ら保有しているか、権利者から完全かつ適法な授権を得ていることを表明保証します。

さらに規約は、権利関係が不明確な素材のアップロードをモデルの誘導・濫用にあたる行為と位置づけ、第三者から責任を問われた場合の求償権を留保しています。法人認証・審査と、この表明保証による利用者側の責任は、権利確認を利用条件の中に組み込むという点で一貫しています。フィルターを緩めた利用では、利用者自身による権利確認の重みが増す構造だと読めます。

だとすれば、この領域で価値を持つのは生成の速さや画質だけではありません。権利関係を確認し、必要な授権手続きを行い、利用権の条件を満たす。この工程を制作の現場が現実に回せるかどうかが、そのまま使えるかどうかになります。CW Canvasは、こうして権利処理を済ませたアセットを生成に使える環境として提供されます。地味な部分ですが、この工程は、権利物を生成AIで活用しようとするときの実際の障壁になり得ます。

同じ週に、逆向きの発表が2つ並んだ

2日前の8月12日、電通がIPグロースプラットフォーム「CHARAMO」の提供を始めました。7つの機能を備え、SNSコンテンツでは全投稿が公開前にクリエイティブの承認を経る。キャラクターチャットも「監修済みの文脈」で提供すると説明されています。出力を絞る方向に重心を置いた発表だと読みました。対してCW Canvasは、権利を証明した者に対して出力を開く方向です。

向きは正反対ですが、構造はよく似ています。どちらも、人が線を引く場所を製品の内側に持っている。CHARAMOは少なくともSNS投稿について生成の後ろに承認工程を置き、CW Canvasは生成の前に権利証明と審査を置いた。線を引く位置が違うだけで、機械に全部を委ねないという設計思想は共通しています。生成AIとIPの組み合わせは、ようやくこの水準で語られはじめました。

AiHUBが立っている場所

同社は2025年10月6日、執行役員CMOを務めるタレントのくりえみ氏が、OpenAIの「Sora」で自身の肖像をパブリック利用可能にしたと発表しています。日本の有名タレントとして初の試みだと同社は説明していました。2025年9月30日のSora 2公開時点では、本人確認を経た肖像について、本人が誰に利用を許すかを設定する仕組みが採用されていました。くりえみ氏は、その設定を自ら公開の側へ倒したことになります。

そのSoraは、もう存在しません。OpenAIは2026年3月24日に終了を発表し、ウェブ版とアプリ版は4月26日に提供を終えました。APIも2026年9月24日に停止する予定です。本人が「使ってよい」と手を挙げても、手を挙げた場のほうが先になくなることがある。権利処理の経路をどこに置くかは、それ自体が事業上の設計になりつつあります。場が消えても、本人が意思を示したという事実のほうは残ります。

今回のハイレベル生成のデモには、同氏の許諾済みアセットが使われています。公開された動画のなかには、表現領域のフィルターを外して生成したものも含まれます。これは権利物に関するフィルター制限とは目的の異なる仕組みで、両者は分けて捉える必要があります。いずれにせよ、肖像アセットの利用そのものには本人の許諾が前提に置かれています。

代表取締役CEOの薮崎宏晃氏は、一般社団法人ライセンシングインターナショナルジャパンの副代表理事を務めています。AI企業でありながら、ライセンス業界側にも片足を置いている。権利証明という派手さのない部分を製品の中心に据えた背景は、この立ち位置から素直に読めます。

どこから現実的な選択肢になるかは、これから見えてくる部分です。クローズドβは抽選制で、生成機能の提供は2026年9月初旬、Canvas機能は10月が予定されています。価格はこれから示される段階です。法人認証と審査を前提とする設計のため、まずは事業者からということになります。「日本初」は同社の自社調べによるもので、比較対象はBytePlus社の承認を受け、IP権利証明によるフィルター解除機能を標準搭載または対応する生成AIツールとされています。

それでも、権利を持っているのに使えなかった側にとっては、相談できる窓口がひとつ増えたことになります。

眠っているのはキャラクターだけではありません。契約書の中で使われないまま置かれた肖像や、版元が持て余している旧作のビジュアル。「使ってはいけない」を判定するガードレールは、主要な生成AIサービスで相次いで強化されてきました。次に必要なのは、「使ってよい」を証明する回路のほうです。CW Canvasが差し出しているのは、その回路の入口にあたります。

【関連記事】

電通「CHARAMO」|AIキャラの承認工程を製品に組み込んだIP基盤
出力を絞る側の設計を扱った記事。今回の発表と読み比べると、線の引き方の違いが見えてくる。

Seedance 2.5とは|火山引擎が披露した30秒AI動画生成モデルの実力と狙い
CW Canvasが対応したモデルそのものの解説。発表時点での機能と位置づけを押さえられる。

Seedance 2.0著作権騒動―Disney・MPAが差し止め通告、ByteDanceはセーフガード強化を表明
2026年2月時点の経緯をまとめた記事。フィルターが強まっていった背景を当時の報道の形で確認できる。

【編集部後記】

BytePlusのドキュメントには、上位グレードの利用権について購入ガイドが用意されています。何をどこまで生成してよいかという範囲が、契約のグレードとして買えるものになっているわけです。値づけの中身までは公開されていませんが、棚に並んでいることは確かです。

権利は守るものだと教わってきましたが、これからは調達して整えるものにもなりそうです。手元で眠っているキャラクターや肖像には、どのグレードが必要になるでしょうか。


【用語解説】

ハイレベル生成
権利処理を済ませた専用アセットを指定して行う生成を指す、本リリースでの呼称。業界共通語ではなく、BytePlusの公式ドキュメントではAdvanced Creation Rightsなど別の名称が使われている。

Advanced Creation Rights(上位グレードの利用権)
BytePlusが用意する企業向けの権利グレード。独自素材のアップロードと利用が解放される。取得には法人認証と審査を経る必要がある。

アセットライブラリ
キャラクター、人物、小道具などを登録しておき、生成時に呼び出せるBytePlusの機能。登録した素材を指定することで、カットや作品をまたいだ一貫性を保てる。

授権
権利者が、自分の権利物を第三者に使わせることを正式に許可する手続き。ハイレベル生成では、法人認証と並んで前提条件に置かれている。

表明保証
契約の当事者が、一定の事実が真実であると相手方に対して表明し、その内容を保証すること。BytePlusの規約では、利用者が権利を保有しているか適法な授権を得ていることが対象になる。

求償
第三者への賠償などで損害を被った側が、本来責任を負うべき相手にその負担を請求すること。BytePlusは、権利関係が不明確な素材による損害についてこれを留保している。

opt-in(オプトイン)
権利者が明示的に許可した場合にかぎり利用を認める方式。事前に拒否を申し出た場合のみ除外するopt-outと対になる考え方である。

Seedance 2.5
ByteDanceが開発し、BytePlus経由で提供される動画生成モデル。2026年6月に発表され、7月末に一般提供が始まった。

NSFWフィルター
職場での閲覧に適さない表現の出力を抑える仕組み。権利物の出力を抑えるフィルターとは目的が異なり、同一のものかどうかは今回の発表からは確認できない。

【参考リンク】

AiHUB株式会社(外部)
生成AIによるエンターテインメント領域の研究開発を手がける企業。CW Canvasの提供元で、問い合わせ窓口もここから確認できる。

Creators’ Wonderland(外部)
AiHUBが運営するAIクリエイター向けプラットフォーム。CW Canvasはこの一部で、コンテスト機能が先行公開されている。

BytePlus ModelArk(外部)
ByteDance系のBytePlusが提供する企業向け生成AI基盤。Seedance 2.5もここから利用し、アセット管理機能が並ぶ。

Byteplus Terms of Use for Asset Library(外部)
アセットライブラリの利用規約。3種類のアセット区分と、独自アセットを使う利用者が負う表明保証や求償の内容がここで読める。

ライセンシングインターナショナルジャパン 役員および顧問(外部)
ライセンスビジネスに携わる企業が集まる業界団体。役員一覧に、AiHUB代表取締役CEOの薮崎宏晃氏が副代表理事として載る。

CW Canvas クローズドβ応募フォーム(外部)
クローズドβテストのウェイトリスト登録フォーム。クリエイター、制作会社、事業者が対象で、抽選によって参加者が決まる仕組みだ。

【参考記事】

Sora update #1(外部)
2025年10月3日の投稿。キャラクター生成に肖像のopt-inモデルに近い制御を導入すると表明した一次情報にあたる。

Motion Picture Association Blasts OpenAI Over Sora 2 Video Copyright Opt-Outs(外部)
2025年10月6日のMPA声明を報じた記事。9月30日の公開後に侵害動画が拡散した経緯と要求内容が読める。

Sora の提供終了について知っておくべきこと(外部)
OpenAI公式の案内。ウェブ版とアプリ版が2026年4月26日に終了し、APIが9月24日に終了予定と記載されている。

Byteplus Terms of Use for Asset Library(外部)
2026年6月16日最終更新。参照用・独自・許諾済みの3区分と、利用者側の表明保証や求償の規定が置かれている。

電通、AIを活用したIPグロースプラットフォーム「CHARAMO(キャラモ)」を提供開始(外部)
2026年8月12日発表。7つの機能構成と、SNSコンテンツにおける公開前の承認について記載されている。

日本初!AiHUB執行役員CMO 兼 タレント・起業家「くりえみ」、OpenAI社 動画SNS「Sora」で肖像をパブリック利用へ解禁(外部)
2025年10月6日発表。本人の意思による肖像利用解禁の前例にあたり、今回の発表につながっている。

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山本 達也 代表社員
合同会社デジタルの窓口 代表。ウェブ解析士。生成AI・サイバーセキュリティ・ 宇宙開発領域を中心に執筆。

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