日本電気株式会社は株式会社ローソンと共同で、映像認識AIと大規模言語モデルを活用した店舗従業員の作業行動分析・可視化の実証実験を行う。これは2025年10月27日から11月2日まで埼玉県の1店舗で実施される。
本実証実験では、店舗に設置したカメラで作業中の従業員を撮影し、映像認識AIが映像内の従業員の業務を作業項目に分類する。さらにLLMが分類された各作業工程や所要時間を文字化し、店舗作業内容を定量的に把握できるレポートを自動作成する。このレポートと従来の手段で計測された作業時間を比較し、今後の店舗施策検証への有用性を評価する。
NECは本実証実験により店舗作業を定量化することで、ローソンが掲げる店舗作業30%削減に貢献することを目指す。

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NEC、ローソンと共に映像認識AI×LLMを活用して店舗従業員の作業行動を分析・可視化する実証実験を実施
【編集部解説】
コンビニエンスストア業界が直面する人手不足は、もはや単なる経営課題を超えて、社会インフラの維持に関わる問題となっています。ローソンが掲げる「2030年度に店舗オペレーション30%削減」という目標は、業界全体の生き残りをかけた挑戦と言えるでしょう。
今回の実証実験の核心は、作業分析という地味ながら極めて重要なプロセスを自動化できる点にあります。従来、店舗作業は100以上の項目に及び、それぞれの所要時間を計測するには担当者が現場に立ち会う必要がありました。これは改善施策を検討するたびに発生するコストであり、継続的な効率化の障壁となっていたのです。
NECが2023年12月に発表した映像認識AI×LLM技術は、1時間以上の映像からわずか数秒で説明文を生成できる能力を持っています。100以上の映像認識AIエンジンが人物、物体、環境を個別に認識し、LLMがその文脈を理解して専門性の高いレポートを作成します。
この技術が小売業に応用される意義は大きいと考えます。AIによる作業分析が常態化すれば、施策のPDCAサイクルを高速で回せるようになります。例えば新しい商品陳列方法を試した際、従来なら数週間かかっていた効果測定が、映像データから自動的に定量評価できるようになるのです。
一方で、店舗での映像撮影には慎重な配慮が必要です。今回の実証実験では、従業員や顧客の個人特定を行わず、実験終了後に映像を削除すると明記されています。しかし、継続的な運用段階では、プライバシー保護と業務改善のバランスをどう取るかが課題となるでしょう。
セブン‐イレブン・ジャパンも同様の省人化を目指しており、KDDIとローソンによるAIグラス活用など、コンビニ各社は多角的にDX化を進めています。今回の実証実験は、こうした自動化の流れの中で「見えない部分」である業務分析基盤を整備する取り組みとして位置づけられます。
2030年という目標年まで残り5年となった今、データに基づいた継続的改善の仕組みを確立できるかどうかが、人手不足時代のコンビニ経営を左右することになるでしょう。
【用語解説】
映像認識AI
映像から人物、物体、環境などを自動的に認識・分類する人工知能技術である。複数のエンジンが異なる対象を個別に認識することで、複雑なシーンの理解が可能になる。
PDCAサイクル
計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Act)を継続的に繰り返すマネジメント手法である。業務改善の効率化に用いられる。
【参考リンク】
日本電気株式会社(NEC)公式サイト(外部)
映像認識AI技術とLLM技術を開発・提供する大手情報通信企業。
株式会社ローソン公式サイト(外部)
日本国内で約14,000店舗を運営するコンビニエンスストア。
【参考記事】
ローソンが「未来のコンビニ」始動 2030年に店舗作業30%削減へ(外部)
ローソンが発表したDX戦略全体の概要を記載。
KDDIとローソン、AI×ロボットで店舗DXの実証を開始(外部)
2025年10月27日発表の並行プロジェクト。AI×ロボット活用。
NEC、LLMと映像認識AIで動画から説明文章を自動生成する技術を開発(外部)
2023年12月5日発表の基礎技術開発。世界初の技術。
人手不足にAI新技術 「かけるマニュアル」で変わるコンビニ業務(外部)
コンビニ業界全体の人手不足状況と複数企業の取り組み。
【編集部後記】
私たちの日常を支えるコンビニが、目に見えない人手不足で苦しんでいるという現実。
でも、その解決策が映像とAI、そして自動生成される報告書にあるなんて、ちょっと興味深くありませんか?あなたの街のコンビニ店員さんの作業が、もしかして今、カメラの前で分析されているかもしれません。テクノロジーが職場をどう変えるのか、その変化の先にある働き方の未来について、一緒に考えてみませんか?




		



















