advertisements

OWC Guardian国内販売開始、ソフト不要のハードウェア暗号化SSD――Inter BEE 2025で実機展示

OWC Guardian国内販売開始、ソフト不要のハードウェア暗号化SSD――Inter BEE 2025で実機展示 - innovaTopia - (イノベトピア)

株式会社アスクは、OWC社のハードウェア暗号化対応USB-CポータブルSSD「OWC Guardian」の国内取り扱いを開始した。

本製品は最大実測1,000MB/sの転送速度を実現し、256ビットAES OPALハードウェア暗号化によるセキュリティ機能を搭載する。容量は最大4.0TBまで対応し、カラータッチスクリーンによる直感的な操作が可能である。

データは書き込み時に自動暗号化され、認証後に自動復号される仕組みで、ソフトウェアのインストールは不要だ。Mac、iPad Pro、PCなど複数のプラットフォームに対応し、PINコードまたはパスフレーズによるパスワード保護機能を備える。

アスクは2025年11月19日から11月21日まで幕張メッセで開催される「Inter BEE 2025」のホール8 No.8404ブースに出展し、本製品も展示予定である。

From: 文献リンクハードウェア暗号化対応USB-CポータブルSSD「OWC Guardian」の国内取り扱いを開始

 - innovaTopia - (イノベトピア)

【編集部解説】

ハードウェア暗号化という言葉を聞いても、多くの方は「普通の暗号化と何が違うのか」と疑問に思うかもしれません。実は、この違いこそが本製品の最大の価値なのです。

一般的なソフトウェア暗号化では、パソコンのCPUが暗号化処理を担当します。そのため大容量ファイルを扱う際にはシステム全体のパフォーマンスが低下してしまいます。一方、OWC Guardianが採用する256ビットAES OPAL方式では、SSD内部の専用チップが暗号化を処理するため、CPUに負荷をかけることなく最大実測1,000MB/sの転送速度を維持できるのです。

さらに重要なのは、セキュリティレベルの違いです。ソフトウェア暗号化ではOSやアプリケーションの脆弱性を突かれると、暗号化キーが漏洩するリスクがあります。ハードウェア暗号化では暗号鍵がOS層から完全に隔離されているため、マルウェアやルートキット攻撃からも保護されます。

2025年のデータ侵害の平均コストは444万ドルに達しています。特にポータブルストレージの紛失や盗難は、企業にとって深刻なリスクとなっています。

本製品が採用するTCG OPAL規格は、単なる暗号化標準ではありません。電源オフ時には暗号化キーの平文が完全に消失し、ドライブが「ロック」状態になります。再度アクセスするには、タッチスクリーンでの認証が必須となるため、物理的に盗まれても中身を読み取られる心配がないのです。

GDPRやHIPAA、CCPAといった国際的なデータ保護規制では、暗号化が推奨または義務付けられています。特にGDPR第32条では、適切な技術的措置として暗号化の実装が明記されており、未暗号化データの漏洩には高額な罰金が科される可能性があります。

映像制作の現場では、4K/8K素材という機密性の高い大容量データを日常的に扱います。クライアントの未公開コンテンツが流出すれば、制作会社の信用は一瞬で失われるでしょう。本製品は「読み取り専用モード」を搭載しており、外部スタッフへの受け渡し時にデータ改ざんのリスクも防げます。

Inter BEE 2025での展示は、まさに絶妙なタイミングです。放送・映像業界では、リモート制作やクラウドワークフローの普及により、物理メディアでのデータ移動が見直されつつあります。セキュアな持ち運び可能ストレージへのニーズは、今後さらに高まっていくはずです。

【用語解説】

256ビットAES暗号化
Advanced Encryption Standard(高度暗号化標準)の256ビット鍵長バージョンである。米国国家安全保障局(NSA)がTOP SECRET情報の保護に採用する暗号化方式で、理論上2^256通りの組み合わせが存在し、現代のスーパーコンピュータでも解読は事実上不可能とされている。

TCG OPAL規格
Trusted Computing Group(信頼できるコンピューティンググループ)が策定したストレージデバイス向けのセキュリティ標準規格である。ハードウェアレベルでの自己暗号化機能を定義し、OS層から独立した暗号化処理を実現する。電源オフ時には暗号鍵が完全に消失し、デバイスがロック状態となる仕組みを持つ。

ハードウェア暗号化
専用の暗号化プロセッサを搭載し、CPUに依存せずデータの暗号化・復号化を行う方式である。ソフトウェア暗号化と比較してシステムパフォーマンスへの影響が少なく、OS層から隔離されているためマルウェア攻撃にも強い特性を持つ。

バスパワー駆動
USB接続ケーブルを通じて供給される電力のみで動作する方式である。外部電源アダプタが不要なため、モバイル環境での利便性が高い。

セキュアイレース(安全消去)
データを物理的に完全削除する機能である。通常の削除やフォーマットでは復元可能なデータを、専用のアルゴリズムで上書きして完全に消去する。

【参考リンク】

OWC Guardian 製品公式ページ(外部)
OWC社が提供するハードウェア暗号化対応ポータブルSSDの公式製品ページ。256ビットAES OPAL暗号化、カラータッチスクリーン搭載、最大1,000MB/sの転送速度といった技術仕様や機能詳細が掲載されている。

OWC Asia 日本公式サイト(外部)
1988年にシカゴで創業したストレージソリューション企業OWCのアジア地域公式サイト。外付けストレージ、ドッキングステーション、拡張製品などの情報が掲載されている。

株式会社アスク 企業情報(外部)
東京都千代田区に本社を置く、海外製IT製品・映像機器の総合商社。AMD、ASUS、NVIDIA、Synology、Vizrtなど150社以上の海外メーカーの日本国内正規代理店を務める。

Inter BEE 2025 公式サイト(外部)
一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)主催の国際放送機器展。2025年11月19日から21日まで幕張メッセで開催される。放送、通信、映像、音響、照明などの最新技術が展示される。

Trusted Computing Group(外部)
OPAL規格を策定した業界標準化団体。コンピューティングデバイスの信頼性とセキュリティを向上させる技術仕様の開発を専門とする国際的な非営利組織である。

【参考記事】

Hardware vs. Software encryption(外部)
ハードウェア暗号化とソフトウェア暗号化の技術的な違いを詳細に解説した記事。ハードウェア暗号化はOS層から独立しているため、マルウェア攻撃から保護される点などの優位性が説明されている。

Software-Based vs. Hardware-Based Device Encryption(外部)
ソフトウェアベースとハードウェアベースの暗号化を比較した2025年7月の記事。ハードウェア暗号化では暗号鍵がOS層から完全に隔離される技術的メカニズムが詳述されている。

Cybersecurity statistics 2025: trends, costs & insights(外部)
2025年のサイバーセキュリティに関する包括的な統計データ。データ侵害のコスト増加傾向、暗号化技術の重要性、企業が直面するセキュリティリスクなどが数値とともに解説されている。

Data Protection Compliance With Encrypted Hard Drives(外部)
GDPRやHIPAA、CCPAなどの国際的なデータ保護規制における暗号化の位置づけを解説した記事。GDPR第32条では適切な技術的措置として暗号化が明記されている。

【編集部後記】

みなさんは、普段持ち歩くストレージの中身について、どれほど意識されているでしょうか。クライアントの未公開映像、取引先の機密情報、個人のプライベートな写真や動画――それらが一瞬で流出するリスクは、意外なほど身近に潜んでいます。

パスワードだけでは守り切れない時代に、ハードウェアレベルの暗号化という選択肢があることを、ぜひ知っていただきたいのです。セキュリティは面倒なものではなく、むしろ自由に働くための基盤だと、私は考えています。

投稿者アバター
TaTsu
『デジタルの窓口』代表。名前の通り、テクノロジーに関するあらゆる相談の”最初の窓口”になることが私の役割です。未来技術がもたらす「期待」と、情報セキュリティという「不安」の両方に寄り添い、誰もが安心して新しい一歩を踏み出せるような道しるべを発信します。 ブロックチェーンやスペーステクノロジーといったワクワクする未来の話から、サイバー攻撃から身を守る実践的な知識まで、幅広くカバー。ハイブリッド異業種交流会『クロストーク』のファウンダーとしての顔も持つ。未来を語り合う場を創っていきたいです。

読み込み中…

innovaTopia の記事は、紹介・引用・情報収集の一環として自由に活用していただくことを想定しています。

継続的にキャッチアップしたい場合は、以下のいずれかの方法でフォロー・購読をお願いします。