Metaが2026年後半に発表予定の次世代MRヘッドセットは、従来のコントローラーを廃止し、ハンドトラッキングと視線追跡のみで操作する革命的な設計となる見込みだ。最大の特徴は、コンピュートとバッテリーを含む外部パックを採用することで、Quest 3の515グラムから大幅な軽量化を実現し、終日装着可能な快適性を追求する点である。
価格は800ドルと予想されており、3,500ドルのApple Vision Proや1,800ドルのGalaxy XRを大幅に下回りながら、視線追跡や表情追跡などの高度な機能を搭載する。さらにMetaはQuestブランドからの完全な決別を検討しており、ゲームアクセサリーではなく生産性プラットフォームとしての新カテゴリー確立を目指している。この戦略転換のため、当初計画されていた「Pismo Low」「Pismo High」の2つのプロトタイプはキャンセルされ、「Puffin」というコードネームの軽量モデルが優先開発されている。
From: 
Meta Quest 4 May Ditch Controllers for $800 in 2026
【編集部解説】
このニュースが示す最大の技術的転換点は、VRヘッドセットが「セッション型デバイス」から「終日装着可能なコンピューティングデバイス」へと進化しようとしている点です。現在のQuest 3が515グラムであるのに対し、外部パックによる軽量化でBigscreen Beyond 2の107グラムに近い重量を実現しながら、スタンドアロン機能を維持できる可能性があります。これは単なる快適性向上ではなく、VRの利用時間を根本的に変える設計思想の転換といえます。
コントローラーレスの操作については、慎重な評価が必要です。Meta Quest 2のハンドトラッキング精度を検証した研究では、平均1.1cmの位置誤差と45ミリ秒の遅延が報告されており、視野周辺部では精度がさらに低下することが確認されています。特に130ミリ秒を超える遅延では照準精度に有意な差が生じるという研究結果もあり、精密な操作が求められるタスクでは課題が残ります。Metaがこの問題をどう解決するかが、コントローラーレス設計の成否を分けるでしょう。
市場ポジショニングの観点では、Metaが2025年第1四半期に50.8%、2024年通年で74.6%という圧倒的なシェアを持つ中での戦略転換である点が重要です。800ドルという価格設定は、3,500ドルのApple Vision Proと300ドルのQuest 3Sの中間に位置し、「プレミアム快適性」という新しい市場セグメントの創出を狙っています。これはWalmartが100万人以上の従業員にVR研修を展開し、Siemensが工場最適化にVRを活用するなど、企業の生産性利用が拡大している市場動向と合致します。
長期的には、このデバイスがMRを「ラップトップやタブレットの代替」として確立できるかが焦点となります。IDCは2026年に87%の出荷台数回復を予測し、2030年までXR市場が年率33.16%で成長すると見込んでいます。しかし、Meta Quest Proが商業的に失敗した事例や、Reality Labs部門の支出を約20%削減している現状を考えると、Metaは失敗の許されない重要な賭けに出ているといえます。
【用語解説】
ハンドトラッキング
カメラやセンサーを使用して手の位置と動きをリアルタイムで認識する技術。コントローラーを使わずに仮想空間でのオブジェクト操作やジェスチャー入力を可能にする。
視線追跡（アイトラッキング）
ユーザーの視線方向や注視点を検出する技術。視線による直感的な操作に加え、注視している部分の解像度を上げて処理負荷を軽減するフォービエイテッドレンダリングにも活用される。
Android XR
GoogleとSamsungが共同開発する拡張現実・仮想現実向けのオペレーティングシステム。Androidエコシステムを活用し、複数メーカーのXRデバイスで動作するオープンプラットフォーム。
Meta Connect
Metaが毎年開催する開発者向けカンファレンス。VR・AR・AIなどの最新技術や製品ロードマップが発表され、業界の重要なトレンド指標となるイベント
【参考リンク】
Meta Quest 公式サイト（外部）
Metaの公式VRヘッドセット製品ページ。Quest 3、Quest 3S、Quest Proなどの製品情報、仕様、価格を提供。
Reality Labs – Meta（外部）
MetaのVR・AR研究開発部門の公式情報ページ。次世代デバイスの研究内容や技術革新について公開。
Meta for Developers – VR（外部）
開発者向けの公式リソース。Quest向けアプリ開発のドキュメント、SDK、ハンドトラッキングAPIを提供。
【参考動画】
【参考記事】
Meta Quest 4 May Ditch Controllers for $800 in 2026（外部）
Metaの次世代ヘッドセットがコントローラーを廃止し、外部パックを採用。800ドルで2026年後半発売予定。
Why Meta Is Delaying Quest 4 — And Betting Big on Project Puffin（外部）
Metaが従来型Quest 4を延期し、軽量革命的なProject Puffinを優先する理由を分析。
Meta Prioritizing Ultra-Light Headset With Puck Over Traditional Quest 4（外部）
外部パック搭載の超軽量ヘッドセットを2026年に優先投入し、従来型Quest 4を2027年に延期。
Meta’s Next Headset is Reportedly Thin, Powerful & Uses a Puck（外部）
外部パックによる処理とバッテリー分離設計の技術的詳細を解説。終日装着可能な快適性を実現。
VR Headsets 2025: Meta Quest 3 Dominates 74.6% Market（外部）
2024年のVR市場でMeta Quest 3が74.6%のシェアを獲得。2030年までXR市場は年率33.16%成長と予測。
A Methodological Framework to Assess the Accuracy of Virtual Reality Hand-Tracking Systems（外部）
Meta Quest 2のハンドトラッキング精度を科学的に検証。平均1.1cmの位置誤差と45ミリ秒の遅延を測定。
Meta Quest Sales 2025 Trend: Key Insights & Outlook（外部）
2025年第1四半期のMeta Quest市場シェアが50.8%に達し、企業の生産性利用が拡大していると報告。
【編集部後記】
コントローラーなしでの精密操作は本当に実用レベルに達するのでしょうか。研究データでは45ミリ秒の遅延と1cm以上の誤差が報告されていますが、2026年までにMetaがこれをどう克服するかが気になります。また外部パックをポケットに入れた状態で、Quest 3レベルの処理性能を熱問題なく維持できるのかも疑問です。800ドルという価格設定で生産性重視のユーザーがどれだけ飛びつくか。Questブランドを捨てることで既存ユーザーベースを混乱させるリスクはないのでしょうか。
